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アユカは、パキラに手を触られた刹那、浮遊感は襲われた。

世界が真っ白になった後、現れたのは真顔のキアノティスとグンネラだった。


「戻ってきたん?」


「うん。派手に戦いすぎちゃったんだと思う。軍隊が近づいてきてたんだ」


「はぁ!? 戦った? 軍隊? いや、なんで、突然……これが、クテナンテが言ってた瞬間移動か……」


固まっていたキアノティスの時間が動き出したようで、大声で叫びながら立ち上がったと思ったら、困惑しながら倒れるように椅子に腰を落としている。


キアノティスの声にグンネラは動き出し、キアノティスの机に置かれている盗聴防止の魔道具を発動させた。


「パキラ様、素晴らしい力ですね。さすがでございます」


「うん、まぁね。それよりキアノティス、驚かせてごめんね。咄嗟にこっちが思い浮かんじゃってさ」


「それは構わないが……」


キアノティスは大きく息を吐き出し、「座ってくれ」とソファを勧めてきた。

アユカとパキラが並んで座り、アスプレニウムは1人席に着いた。


「来たこと自体隠したいから、お茶は出せない。悪いな」


「いいよ、いいよ。報告が終わったら、アスプレニウムにもてなしてもらうよ」


パキラの言葉にキアノティスが頷き、アユカの腕に視線を向けた。


「傷は大丈夫か?」


「擦り傷やからね、大丈夫。アスプレニウム様の屋敷に戻ったら、手当てしてもらうわ」


しっかりと頷くアスプレニウムに、キアノティスは「頼む」と声をかけている。


「気になる言葉ばかりだったが、何があったのか教えてくれ」


パキラが話すのかと思っていたのに、アスプレニウムが報告していて、パキラは合いの手を入れるばかりだった。

アユカは客観的に考えられるように、アスプレニウムの話を静かに聞いている。


「なるほどな。不死身の騎士はよほど頭がいいらしい。4ヶ国と全面戦争をして、王になりたいのかと推測してしまいそうだ。邪魔な聖女は東洋に送れば、排除したも同然だからな」


「推理としては悪くないかもね。全くいつから謀略を練っていたのか聞きたいよ」


んー、ずっとさ、国を衰弱させたいとか、混乱させたいとか、王になりたいとか言うてるけどさ。

ホンマにそうなんかな?


死にたいんやで。

それやのに、王様になりたいかな?

それか、どうせ死なれへんのやったら君臨しようって思ったんかな?


まぁ、湖の件を考えると、人間兵器作ってるんと一緒やもんな。

パキラとアスプレニウム様やったから、怪我なく全滅させられたんやし。

でもさ、パキラやアスプレニウム様ちゃうくっても、シャンやキアノティス様でも傷なく倒せたと思うんよね。


んー、混乱は起こせるから、強い人間兵器ちゃうくってもよかったんかなぁ。


「アニス、何の魔法陣か聞いていいか?」


「あ、うん、大丈夫やで。3つあって、物質変化と業火と呪縛やったわ」


「その3つと死体で、かの者たちを作れるのか……」


「傀儡人形を作り出せるんは、あの湖やからちゃうかなぁ。聖水らしいから、何かしらの作用があると思うねんな」


「聖水なの? あの水が?」


「うん、聖水自体の効能は邪気払いみたいやから、魔法陣との関係性なんか、死体が関係あるんか、それとも血が必要なんかは謎やけどな」


「いくら聖水だとしても、もう使えない水だということだよな?」


「そうやね。使わん方がいいと思うよ。なんなら、聖女の墓を壊した上で埋めた方がいいかもな」


「えー、勿体ない」


物凄く研究したかったのか、パキラがだらけるようにソファに体を預けて項垂れている。


「埋める前に少しだけ汲んでおけばいい。が、俺は知らないことにしといてくれ」


「もちろんだよ、キアノティス! 僕の道楽みたいなものだからね。世にも出さないから心配しないで」


いいんかな、それ。

と思わんわけではないけど、うちは今の会話を聞かへんかったことにしとこう。

なんか言って、地雷踏んだら大変やからな。

命は大切にせーなあかん。


「なぁ、キアノティス様。チャービルを救いたいんやけど、いい方法ない?」


「シャンツァイと相談してみるが、期待しないでくれ。アルメリアと深く関わっているなら、いなくなると警戒されるからな」


「そうかぁ」


「アニス、動いていいのはフォーンシヴィの中だけだからな」


「分かってるよ」


「本当だな? シャンツァイから、定期的に注意してほしいと言われたぞ」


まだ動こうとは思ってへんのに、シャンは心配性やわ。

動くんは、瞬間移動使えるようになってからやよ。うんうん。


「大丈夫やって」


「今の間はおかしいだろ。本当に危ないことはしないでくれよ」


「うん、危ないことはせーへんよ」


キアノティスは天を仰ぎながら、「口を酸っぱくするシャンツァイの気持ちが分かる気がする」と呟いていた。




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