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ミーちゃんが鳴き声を上げたと思ったら、真っ黒な手を阻むように薄紫色の膜が現れた。

膜は結界だったようで、真っ黒な手は結界にぶつかった拍子に泥団子が崩れたように潰れている。


そして、毒か酸があるのだろう。

結界と衝突した所から煙を上げている。


結界で防ぎきれなかった、ぶつかった拍子に飛び散った泥団子の破片が、アユカの腕を掠っていた。

切れた服からも怪我した腕からも、煙が上がっている。


数秒にも満たない出来事をアユカが認識する前に、剣を振るったアスプレニウムと湖は遠くなっていた。

腰に腕が回されていて、安心したような息が耳元で吐かれている。


「さすがは僕の鳥だね。魔法が使えるようになっていたなんてね」


どうやらパキラが、アユカを抱えて後ろに跳んでくれたらしい。


「パキラ、ありがとうな」


「どういたしまして。それにしても、ここまで愉快なことになるとは思ってなかったよ」


瞳も口も弧を描いているパキラは、アユカから腕を離した。


うわー、めっちゃ楽しそうに笑うやん。

さっきまで殺せばいいって言うてたもんな。

んで、今まさしく敵の勢力を削れる場面やもんな。


アユカは、宙に浮くように湖から出てくる影人間たちを見つめた。


全身黒タイツというより、影のように全てが真っ黒なのだ。

ただ、目だけはあり、眼球の黒い部分も白い部分もピンク色をしている。

目というよりも、ピンク色の球が埋め込まれているような感覚に近い。


先ほどアユカを襲おうとした影人間は、アスプレニウムによって切られていた。

そして、切られた部分から、煤が天に昇るように消え失せている。


アスプレニウムがその1体を倒した頃には、次々に影人間が湖から浮き上がってきていた。

今はもう、湖の水面を占領している。


「アニスは、ここから動かないで」


「うちも戦いたいけど、我慢するわ」


2人の足を引っ張るんは、目に見えてるしな。

影人間に巻き込まれて、余波で怪我するんも嫌やしな。

ファンタジー映画やと思って、大人しく観劇しとこ。


湖に向かっていくパキラが、アスプレニウムの背中に声を投げかける。


「アスプレニウム、半分こだからね」


「足手まといにならないようにいたします」


いやいや、ここら辺一帯吹き飛ばせる人が、何を言うんだが。

ほら、一振りで何人消えたんよ。


パキラは、何の魔法が効くか、実験しながら倒してるんやろうな。

何個も同時に魔法使って高笑いしてる姿は、パキラの方が悪役に見えるわ。


CG合成なしの大迫力映画は凄まじいわ。

コーラ飲みたいなぁ。


パキラとアスプレニウムが倒しても倒しても、影人間が湖から生まれ出てくる。

だからといって、2人の敵ではない。

いとも簡単に、影人間は消し炭にされている。


『アプザル』をした状態で観劇していたアユカは、のほほんと鑑定結果を読んでいた。


傀儡人形かぁ。怨念の塊って書いてるわ。


ってことは、沈められた人たちが動き出したってことではないんやろな。

瘴気と一緒で、怨念が固まって人の形を作ってるってことかな。

そうちゃうと、跡形もなく消えるんはおかしいもんな。


いや、違うわ。まだ遺棄された人たちの可能性も残ってるわ。

うちは見てへんけど、ペペロミア様が生まれてきた時、手足は黒くて木の根みたいって言ってたやん。

悪意のせいでそうなってたんやから、あの傀儡人形も怨念が籠りすぎて、ああなってるんかもやわ。

だって、人形って表示されるくらいやもんな。原型があるってことやもんな。


やるせないわー。

ホンマに何がしたくて、関係ない人らを巻き込むねん。

しかも、怨念を生み出すために、痛めつけて殺してるってことやろ。


あー、ない。ありえへん。人として終わってる。


て、考えてるうちに、最後の1体をパキラが風魔法で粉々にしたわ。

もう出てこーへんみたいし、近づいてもいいよな。




3話更新しますので、12時の後、13時にも1話投稿されます。

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