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「あら? アニス様、お似合いですわ」


アユカの様子を見に来てくれたクテナンテの第一声だ。

驚いたように口元に手を当て、アユカの瞳と髪型、そして、アユカの肩に留まっている鳥を順番に見ている。


「やろ」


「ええ、誠にお似合いです」


歯を見せて笑うアユカに、クテナンテも微笑んでいる。


お茶をしている応接室には、アユカとクテナンテ、クテナンテに抱かれているペペロミアがいるだけだ。


「そちらの鳥は、どこかで捕まえられたのですか?」


「ううん。パキラがくれたねん」


「パキラ様の鳥でしたか。麗しいはずですわ」


「なんでか懐いてくれてさ。な、ミーちゃん」


アユカが鳥の頭を撫でると、鳥は自分から頭を擦り付けるような仕草をしている。


ミーちゃんこと、パキラの魔力を宿している鳥は、アユカが魔塔に訪れた際にアユカから離れようとしなかった。

アユカが帰る時になっても籠には戻ってくれず、捕まえようとしたパキラとアスプレニウムを嘴で攻撃したのだ。

鳥が怒って魔力を暴走させたら困るという理由から、アユカに譲渡されていた。


「ミーちゃん?」


「この子の名前やよ。うちの神様のミナーテ様の印は鳥やからさ。さすがに同じ名前はあかんと思って、ミナーテ様から取ってミーちゃんにしたねん」


「アニス様は、誠にミナーテ様がお好きなのですね」


「うん! 会えるなら、もう1回会いたいくらい大好き!」


アユカの元気な声に呼応するように、ペペロミアが「アーウン」と何かを訴えてきた。


すると、ミーちゃんがアユカの肩から飛び立ち、ペペロミアのお腹辺りに留まり直した。

賢い鳥だろうから大丈夫だと思うが、普通の鳥ではないため心配もある。


アユカとクテナンテが下手に動けずにいると、ミーちゃんは器用にペペロミアに頬擦りをした。

ペペロミアからは、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。


「ミーちゃんも、ペペロミア様を気に入ったんやね」


「そのようですわ。ペペロミアには驚かされてばかりです」


微笑ましい姿を眺めていると、クテナンテが巾着から1冊の古びた本を取り出した。

そして、アユカに差し出してくる。


「こちらが、聖女様のことが記載されている古書になります。陛下からお預かりしてまいりました」


「ありがと。読んでみたかったねん」


お礼を言いながら乗り出すように受け取り、表紙を開いてみた。

月明かりの下で聖女が祈っている姿が、絵で描かれている。


「これって借りられるん?」


「申し訳ございません。本来は王宮から出してはいけない本のため、持ち帰らなければいけないのです」


「そうなんか。んじゃ、今読むわ」


「はい、ごゆっくりしてください」


話が出来ないことを了承してもらい、アユカは古書に目を通しはじめた。


ふーん、聖女様観察日記みたいなもんなんやね。


ってか、これ書いた人、めちゃくちゃ聖女様に心酔してたんやろな。表現が全部大袈裟やもんなぁ。

それか、ホンマに一瞬で村人全員に治癒魔法かけたんやろか?


で、これが瘴気を浄化する歌ね。

ホノカの歌声で「何語なんやろ」って思ってたけど、もしかせんでも英語なんか?

著者さんは歌詞見たわけちゃうくって、聞いた言葉をそのまま書いてるやろうからな。


ホノカたちと日本語で意思疎通してる気やったけど、そもそもそう聞こえるだけで、シャンたちとのコミュニケーションも日本語で聞こえるもんな。


文字は見たことない文字やけど、読めるし書けるもんな。


きたきた! シャンが言ってた魔法の項目。


ホンマに1人生き返らせたんか。

ここだけ文字震えてるもんな。

感動したんか、凄すぎて怖なったか……両方かもな。


「ん? 続きが破れてる?」


「はい。どの国にもある古書は、同じように破れているそうです」


「そうなんか。めっちゃ意図的やね」


知られたら困ることを書かれてるんは確かってことやんな。


ん? あれ? そもそも何冊もあるっておかしない?

歴史書みたいなもんやから、何冊もあっていいんか?


ううん、それよりも……どの国にもある古書って……


「この国にしかない古書があるん?」


クテナンテが、手で口を隠しながら小さく笑っている。


「分かりやすく言いすぎましたね」




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