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部屋に案内してもらっている道すがら、アユカはパキラを『アプザル』した。


はぁ? 嘘や、絶対に嘘や!

レベル173って、どういうこと?

属性が火、水、風って、なんなん?

年齢231歳って、時空が歪んだんか?


いや、ハムちゃんがくれた鑑定を疑うなんて、罰当たりなことしたらあかん。


それに目の前を歩いてるんは、天才魔法使い様なんやから、姿を変えるんはたやすいんやろ。

すごいわ! すごいわー!


「ん? アニスは何を拍手してるの?」


「あ、ごめん。塔の中が楽しくて無意識にしてたわ」


パキラの鑑定に驚いてたっていうのを除いても、これぞ魔法使いの塔って感じで心が躍るわ。

ホンマに踊ることもできそうなほどワクワクしてる。


喋る絵はないけど、階段が動いてるんやで。

みんなローブ着てるしさ。

杖も持っててほしかったなぁ。


塔を褒められたと上機嫌になったパキラに案内された部屋には、オウムほどの大きさで孔雀のように美しい鳥が特大の鳥籠の中にいた。

イエローダイヤモンドのように煌めく瞳で、アユカを見ている。


「めっちゃ綺麗な鳥! 可愛い!」


「でしょでしょ。あれは、僕の魔力だからね。強くもあるんだよ」


「魔力?」


パキラが鳥に向かって歩き出したので、間近で見たいアユカはパキラについていく。


「僕の魔力が膨大すぎてね。ある程度外に出さないと、体が破裂しそうになるんだ」


「で、外に出した結果がこの綺麗な鳥なん?」


「そうだよ。年に数回、僕の魔力を受け入れてくれる鳥なんだ」


「なぁ、それってさ」


アユカがパキラに思ったことを尋ねようとした時、鳥が小さく鳴いた。

アユカに近づこうとしているのか、鳥籠に頭を擦り付けている。


「珍しいね。普段なら僕以外は無視するのに」


パキラが鳥籠を開けると、鳥は飛び立ち、部屋を1周してからアユカの肩に留まった。

大きめの鳥なので、耳や側頭部に温かいものが触れる。


「アニスを気に入ったようだ」


「嬉しいわ」


鳥の頭を人差し指で撫でると、嬉しそうな鳴き声が聞こえる。


パキラに「立ち話もなんだし」とソファに座るよう促され、アスプレニウムと並んで座ると、鳥はアユカの肩から太ももに飛び移った。

身を縮め頭を下げる様子は、完全に眠ろうとしている。


笑いながら向かい側に座ったパキラが、魔法でお茶を淹れてくれた。

踊るように宙を舞う茶器たちに、アユカは顔を輝かせながら拍手をした。


「アニスは魔法が好きなの?」


「うん! めっちゃ素敵やん。うちがおった世界には無かったものやから、空想上のものが実在して楽しいねん」


「そういえばそうだったね。機械の世界だっけ?」


「そうやね。暮らしを良くするための技術やね」


「なるほど、なるほど」というパキラの声が聞こえてきたが、呟きだったので聞こえないフリをした。


「気になることあるんやけど」


「僕も聞きたいことがあるんだけど、先にいいよ」


「ありがとう。さっき、この子がパキラの魔力って言ったやん。それって魔力だけでできてんの? それとも、鳥に魔力を入れただけなん?」


「魔物と同じじゃないかってことを知りたいんだね」


楽しそうに目を細めお茶を飲むパキラに、アユカはしっかりと頷いた。


「魔物は魔力の塊というには語弊があると、僕は思うんだよね。その子は純粋な魔力の塊ではなく、雛の時から魔力を受け入れてくれている鳥なだけなんだよ。見た目が綺麗になったのは、僕の魔力のせいだろうけどね」


「ってことは、空中を漂う魔力の残滓が動物に吸収されて魔物になってるってことやんな? で、吸収されんかった分が固まって瘴気になり、魔物が瘴気で死ぬんも魔力を吸収し過ぎて体がもてへんからってこと?」


「うん、僕と同じ結論だよ。まぁ、そこに加えるなら、魔物が凶暴なのは多種多様の魔力が1つの生き物に吸収されて反発し合ってるからだろうね」


「パキラ、めちゃくちゃ頭いいやん! 天才やん!」


「でしょでしょ」


人間が瘴気で死ぬんも、同じ理由なんやろな。

魔力が少なすぎても多すぎても生きられへんて大変やな。


「僕からも質問していい?」


「いいよ」


「最近ウルティーリの魔術機関が、瘴気の周りをダサい眼鏡をかけて彷徨いているのは、アニスが発端?」


「あのダサい眼鏡は優れものなんやで」


「あれが?」


「うん。あれ、魔力測定器やねん」


「なるほど。考えたね」


パキラは、顎に手をあてて小さく頷いている。


「それで、何をしようとしているの? 瘴気の魔力量なんて調べてどうするの?」


「教えてもいいけど作らんとってな。ウルティーリを潤したいんやから」


「楽しそうなのに……でも、いいよ。作らないと約束するよ」




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