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頭の中も心も、いつも通りに落ち着いてきた。

やっと考えることが出来、答えを導き出せる。


「キアノティス、俺はアユカを探すふりを続けて、クソ女の出方を見ればいいんだな」


「冷静になったようだな。そうだ、リコティカスを潰すことはいつでもできるからな。これを機にアルメリアに協力してる奴らを炙り出したいんだ」


「確かに脳みそがないクソが立てられる作戦じゃねぇよな」


「シャンツァイ。アンゲロニアをおかしいと思わなかったか?」


「礼を尽くすためとはいえ、俺に頭を下げたことか?」


「違う。アンゲロニアが賄賂として俺に渡した物だよ」


シャンツァイから深い息が吐き出される。


「俺は聞いただけで見てねぇよ」


「ん? そうだったか?」


「そうだ」


「それは悪かったな」


「で、茶葉だったか。それに問題があったのか?」


「さぁな。飲む前に捨てたからな」


「理由は?」


「あの茶葉は、本当に珍しいものなんだよ。俺が贔屓にしている商人でさえ手に入れられないほどの代物だ。もう分かるよな?」


「フォーンシヴィでさえ手に入れられない物を、武具を高価で売り捌くしか脳がないリコティカスが手に入れるなんておかしいってことか」


「そうだ。しかも、もう1つ疑うべきことがある。クテナンテが買った水差しを持ってきた商人は行方不明になっているが、トックリランの屋敷を数回訪れていたらしい。しかし、トックリランが言おうとした東洋の商人は、屋敷に出入りをしていた痕跡がない。

だからこそ視点を変えてみた。今、どこが1番東洋と関わりがないのかと」


「なるほどな。トックリランと同じように関わっていることを消していると踏んだのか」


「ああ。で、浮かび上がったのがリコティカスだ。それなのに、アンゲロニアは東洋の茶葉を持っていた」


「おかしくないか? 繋がりを消しているんだろ。バレるようなことをするほど、アンゲロニアの頭は悪くない」


「助けてほしいというメッセージじゃないかと、俺は思っている。口に出すとトックリランのように死ぬかもしれないだろ」


「おかしいって、そっちのおかしいか。キアノティス、トックリランの死に方だが、今回マトーネダルの街にいた裏切り者の騎士が同じ死に方をした。そして、アユカが召喚された時の帰路で襲ってきた黒装束の奴らも、同様の死を迎えていたそうだ」


「やはり全ては一本の糸で繋がっているんだな」


キアノティスが、思い出したように話し出した。


「ああ、シャンツァイ、もう1つ面白い話がある」


「なんだ?」


「トックリランの娘とアルメリアが、連絡を取り合った痕跡があった。トックリランは、陰で私兵の設立に力を入れようとしてたからな。隠れ蓑として脳なし同士がやり取りをしてたと思ったが」


「アユの誘拐でクソ女中心に起こったことが分かったということか」


「そうだ。俺のモノに手を出したんだ。徹底的に潰してやる」


「アユはお前のモノじゃなく、俺のモノだからな」


キアノティスの「細かいこと気にするな」と笑っている声に、シャンツァイはため息を吐いた。


「キアノティス。東洋の国について、どこまで知っている?」


「どこまでとは?」


「東洋の国は、神興しの国だそうだ。昔から神の声を聞ける者が統治者らしい」


「ああ、そのことなら知っている。聖女を喚び寄せる魔法陣は、東洋の国から買ったからな」


「その魔法陣は、元々東洋のものじゃねぇんだよ」


「どういうことだ?」


「魔法陣を扱えた一族は、遊牧民のブルティーリ人だ。迫害された彼らは、命辛々東洋に逃げた。その時に迎え入れてくれたのが東洋の国だそうだ」


「本当に全てが繋がったな。ブルティーリを迫害したのは、大陸が4つに分かれる前の話。昔からの怨恨で今更4ヶ国を陥れようとしてるとはな」


「いや、そうじゃない。これは調べたことと俺の予想を混ぜた話だが……東洋の国はもう1度神の声を聞ける人間を求めて、長年召喚の魔法陣を研究していたそうだ。だが、完成しても作動させるほどの魔力を持ち合わせている者がいなかった。原住民と遊牧民が交わり続けた結果だな。神の声を聞くことも魔力を多く保有することもなくなったんだよ」


「今回の召喚の際、魔力が足りなくて魔石で補うほどだったからな。なるほど。俺らに聖女を喚び寄せさせて、掻っ攫おうとしてたってことか」


「そういうことだ。だが、聖女の警備は厳重だ。真っ向勝負しても魔力差で負けてしまう。だから、国を衰弱させて鈍ったところをだと、俺は思っている」


「シャンツァイ、そこまで分かっていたのなら、どうしてアユカが誘拐された? お前なら防げただろう?」


「防げたらよかったんだけどな。よく人相を見たところで、どこの国か分からないだろ。東洋の特徴の黒目黒髪は見かけねぇし、瞳が赤だからといって純粋なウルティーリ人とは限らねぇしな。誰が奴らの味方をしているのかはさっぱりだ。しかも大きな組織なんだろう。切り捨てばかりが行われて、本体に辿り着けない。とまぁ、情けない言い訳だな」


キアノティスが「俺と張り合える唯一の男が、本当に情けないな。今度会ったら気合を入れるために殴ってやるよ」と明るく笑っている。

きっといつもの太陽のような笑顔をしているんだろうと、見えないが分かった。


「東洋の国に文句を言うためにも、証拠は必要になるな」


「自由気ままに殺しすぎだからな。国としても責任を取ってもらわねぇとな。命を軽く見ている者たちが、神の声を聞きたいなんて反吐が出る」


「胸糞悪い話だよな。でも、全部繋がった。後は誘き出して捕まえるだけだ」


「まずはクソ女を叩いて、一網打尽にしてやる」


この後もキアノティスとシャンツァイの話し合いは続き、それぞれの横ではモナルダとグンネラが「これからするリスト」を纏めていた。




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