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ルベウス城に到着するまでの間に簡単に説明されたことは、ポリティモ国との境にあるマトーネダルの街が魔物の襲撃にあい、救援要請が入ったとのことだった。


元々魔物が多く生息する地域なので警備にあたっている騎士が多く、魔物を尻退けることができたそうだ。

それでも、死傷者の数が把握できないほどの被害の大きさとのこと。


アユカの頭に流れるのは、戦争映画や大地震のニュースの場面だ。

アユカが想像できる中で、最大の恐怖を感じる映像だ。


顔が強張ってしまったのか、シャンツァイに優しく手を繋がれた。


あかん! 想像して、鬱になってる場合ちゃう!

シャンが無理せんように、うちがシャンを支えるんやから!

シャンの負担を少しでも減らせるように頑張ろう!


ルベウス城の執務の間ではなく、モナルダが常駐している部屋、文官たちも仕事をしている従務の間に到着した。


文官たちが慌ただしく各所に連絡している中、モナルダは事件内容が纏めて記載されているホワイトボードの前に立って、難しい顔で何か考え事をしている。


1人の文官がシャンツァイに気づくと頭を下げ、それが波のように広がっていく。

モナルダも腰を折っている。


「手を止めるな」


「「はい」」


ホワイトボードの前に着くと、シャンツァイも記載されている内容に目を通している。

アユカも読み、言葉が出てこない。まさしく絶句という状態だ。


「……半壊か」


「そのように連絡が入りましたが、もう少し被害は大きいかもしれません。教会や宿を解放するよう指示しております。それでも足りないでしょうから、テントや食事、薬等の手配を今行なっております。ある程度集まりましたら、第1弾の騎士たちを送りたいと思います」


「そうだな。2週間毎に運搬と騎士たちの交代をさせよう。移動に時間がかかってしまうのがやるせないな」


「はい。それと、おかしな点がありまして」


「なんだ?」


「魔物の襲撃が夜中ではないんです。それに、徒党を組むように集団で砂埃をあげ襲ってきたそうです」


「人が魔物を飼い慣らせるとは思えねぇが……魔物に知性がある奴が現れたのか……」


「もう1つ不可解な点が。ポリティモ国の国境沿いの街も、同じように被害にあったようです。急ぎ近くの町に物資の調達に向かった者が、ほぼ全壊している街を確認しております」


「……全壊か。ポリティモから魔物が流れてきたのか」


「可能性としてはありますが、2つ同時に攻撃をしたのかもしれません」


「応援の騎士の中に、周辺を調べる騎士を追加しろ。不審な点を必ず見つけさせろ」


「かしこまりました」


苦い顔で話し合っていた2人の前に、アユカは胸を張って躍り出た。

怪訝そうに見てくるシャンツァイたちに向かって、自分で自分を指す。


「どうした?」


「うち、行くで」


「は?」


「やから、うちが騎士たちと一緒にマトーネダルに行く」


「ダメだ。アユは足りない薬を作ってくれたらいい」


「薬は作ってから行こう思ってるけど、うちが行ったほうが街の人ら安心すると思うねん。うち、聖女やしね。こういう時ほど動くべきやろ」


「まだ全貌が分かっていない所に、聖女を送れるわけないだろう」


「大丈夫やよ。防御できるようになったし、戦える聖女やしね。シャンが動かれへん時は、うちが動くべきやろ」


「ダ一一


「うちは未来の王妃やで。国を助けようとするんも、国民を元気づけようとするんも、大切な仕事やと思うねん。王妃って、そういうもんちゃうの?」


瞳を閉じて息を吐き出すシャンツァイを、アユカは真っ直ぐ見つめている。

目を開けたシャンツァイの瞳に揺らぎはなく、何もかも従わせてしまいそうな力強さがあった。




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