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薬の調合の研修が行われる日がやってきた。

初日となる今日は、アユカも顔を出す予定になっている。

朝食の席で、先ほどシャンツァイから「頑張りすぎるなよ」と労われたばかりだ。


「なぁ、シャン」


「どうした?」


「聞きたいことあるんやけど」


「……なんだ?」


アユカが向けた笑ってますという顔に、シャンツァイの片眉が僅かに上がった。


急に警戒することないやん。

ちょっと興味本位で聞きたいだけやのに。


「シャンの元恋人って、リコティカスのお姫様なん?」


「……誰に聞いた?」


シャンツァイが鋭くグレコマとエルダーを見るが、2人は高速で顔を横に振っている。


「リコティカスから来た人たちが、婚約破棄したから仲が悪いって言うてたんよ。考えられるに、婚約やら破棄やらってシャンしかおらんやん。やから、確かめたかっただけやよ」


無意識に出されているだろうため息が、煩わしいって言っているように聞こえた。


「リコティカスとは婚約破棄する前から仲が悪い。親同士が決めたことだが、アンゲロニアの妹が俺に惚れたらしく、リコティカスから提案してきたんだ。仲を修復しようってな。思い出したくもない過去だ」


「何がそんなに嫌やったん?」


「何もかもだ」


「そうなんか」


「詳しく聞きたいか?」


「もういいよ。眉間に皺寄せさせたかったわけちゃうし」


「悪いな。本当に胸糞悪い過去だから、思い出したくもねぇんだ」


「ううん。うちこそ興味本位で聞いてごめんやで」


「いや、気になることは聞いてくれ。他から偽の話聞かされたら困るからな」


「嘘とかあるん?」


「表向きは、親が死んで国が不安定になるから仕方なく別れたってなってるからな。あんな女を好きだと思われたら俺にキズがつく」


よっぽど嫌いなんやね。

クテナンテ様からの助言に、わざと嫉妬するってあってんけど、嘘や本当関係なく嫉妬するとこがないんよね。

気になったんは本当やから聞いただけなんやけど、そこから嫉妬に結びつけるんは難しかったわ。


うちがシャンを好きって、言葉以外で伝えられる方法やってんけどな。

これができたら、恋愛上級者になれる気がするんよね。

それなのに、その1歩が遠いわー。


「ん? じゃあ、1番仲が悪いんがリコティカスなん?」


「そうだな。キアノティスが皇帝になるまでは4ヵ国とも小競り合いが絶えなくてな。キアノティスが和平条約を他の国と組んで、戦争を仕掛けた国をフォーンシヴィも攻撃すると宣言したから小競り合いもなくなった」


「キアノティス様、すごいな」


「俺以外を褒めるな。殺してしまうだろ」


過激な言葉やのに、ときめいてもたやーん。


あかん、あかんで、アユカ。

うちがシャンをトキメかせるんやろ。

自分をしっかり持って、戦術を練らなあかん。


シャンツァイの笑いで微かに揺れている肩が、アユカの思考などお見通しだと暗に示している。


「まぁ、どの国も特に先代のいがみ合いが凄かったんだよ。俺は手を借りなかったが、他の2国はキアノティスが手を貸して代交代している。それで、どうにか今の状態だ」


ほーん、マジでキアノティス様ってすごいんやな。

口に出したら、シャンがまた過激なこと言うやろうからな。

お口にチャック。


「リコティカスと1番仲が悪いっていうんは、なんでなん?」


「俺の親、先代の王はポリティモの女性を好んだから、ポリティモの上層部と結託して金と女を交換してたんだよ。その名残りがサフラワーの妻だ。あれは金で買った妻だからな。その繋がりがあったからか、ポリティモとは大きな争いは起きなかったんだろう。ほとんどの人が噂で話している内容であり、事実だ。

これが、ウルティーリが野蛮だと見下されている原因の根源だろうな」


なるほどなぁ。

前に聞いた理由と結びつけると、発情期の時に金で買ったポリティモの美女たちを好き放題してたってことか。


「でもそれって、ポリティモも悪いってことやろ? なんでウルティーリだけが悪く言われんの? それにさ、売られたはずのベレバリアの態度は強くて、サフラワーなんて尻に敷かれてたやん」


「ポリティモの方が情報操作が上手いってことだ。それに、あの女もはじめから強気なわけじゃなかったぞ。先王の娼婦まがいなことをしてた時は、口ごたえ1つできない女だったからな。サフラワーが惚れて結婚してから豹変したんだ。たぶん復讐できると思ったんだろうよ」


アユカが「色々ありすぎやねぇ」と思った時、シャンツァイの耳が動いた気がした。

グレコマやエルダーの視線が、ドアに向いている。


「失礼いたします!」


騎士の1人が、焦った様子で部屋の中に入ってきた。


「救援要請の連絡が入りました。今、モナルダ様が通信石で対応をされております。至急、陛下とアユカ様にご足労いただきたいとのことです」


「すぐに行こう。アユもいいか?」


「うん、一緒に行くよ」


数口残っていたコーヒーを一息に飲み干し、シャンツァイと共にルベウス城に向かって歩き出した。




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