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ええ!?
薄紫色の2人、同じレベルやのに魔力量違うやん!
魔法にも得意不得意があるのって不器用度合いなんかと思ってたら、普通に魔力量の問題やったんかも。
でも、そうか。
よく考えたら、魔力担の大きさによって変わってくるんやろうしな。
そうちゃうと、魔力欠乏症の説明にならんもんな。
目から鱗の事実やわー。
それに、さっき言ったことに当てはまるやん。
レベル低くても魔力量多い人探して、調剤師になってもらえるやん。
可能なら、孤児院とか貧民街の人たちから探してあげたいよなぁ。
「これって、もらえるんやでな?」
「はい! 予備はありますので、ぜひお持ち帰りください」
「嬉しい。ありがとう」
やった! 今度、孤児院行くときに使おう。
うちの『アプザル』と合わせて、将来有望な子を発掘しよう。
「所長、後2個ほどいただけますか?」
「に、にこですか!?」
「私が望む2個に関しては、きちんと報酬をお渡ししますので」
「ああああありがとうございます!」
「俺も見てみたいっす」というエルダーに、メガネを貸しているアユカは、聞こえてきた会話に首を傾げた。
「報酬?」
「彼らの研究成果への賞与みたいなものですよ。差し出せなど、横暴だと陛下に怒られてしまいます」
「そっかー、そうやんな。うちもお金払うわ」
「い、いいいいいえ! 聖女様が使い道を仰ってくださったから、ガラクタにならずに済んだのです。感謝しています」
「そう? んじゃ、今度魔物肉かお菓子を差し入れするな」
「ありがとうございます。職員一同喜びます」
「中をご案内しますね」と言う所長たちの後に続いて、建物の中に入っていく。
正面に受付があり、受付嬢の代わりと思われる通信石が何個も並んでいる。
部署によって繋がる通信石を変えているそうだ。
部署といっても、研究チームが分かれているだけらしい。
道すがら時々聞こえる爆発音は、新しい魔法の研究中だと説明をされた。
案内された部屋には、焦茶色の髪とオレンジ色の髪の男性が2名待機していた。
恭しく頭を下げられ挨拶をされたが、待ってくれていた男性2人も魔力値測定メガネをかけていて、アユカを見て衝撃を受けたように飛び跳ねている。
「うちになんかあるん?」
「そういえば、言ってなかったすね」
「俺も見て驚いたけど、アユカ様の魔力量は測定不可能だったんだよ。聖女だからか、それとも測定値を越えた魔力量なんかは分からないけどな」
それなら、きっと測定値を越えてるんやろね。
なんたってハムちゃんが、残ったポイントを全部魔力に変えてくれたからな。
「どっちにしろ、うちは素晴らしいってことやね」
グレコマやエルダーと一緒に、モナルダまで白い目で見るなんて。
負けへん! うちは負けへんからな!
「はい! 聖女様はやはり特別なんです!」」
やんな。
ありがとう。心を強く持てるわ。
所長と堅い握手を交わしていると、呆れるような息が3個ほど聞こえたが聞こえないふりをした。
誰が吐いたかなんて丸わかりだからだ。
「早く話を進めましょう。時間には限りがありますからね」
「そうでした。ですが、今回結成した瘴気の研究チームには、実はもう1人おりまして……もうそろそろ来るとは思うんですが」
所長が言い終わるくらいにドアが開いて、肩で息をしている女の子が現れた。
ウサギに似ている女の子で、ライトブルーの髪はショートカットだ。
うちよりも髪の毛短い女の子、初めて見たかも。
やから、見覚えないと思うんやけどなぁ。
なんで見たことあるって思ったんやろか?
「遅くなり、はぁはぁ、すみません」
「急いだんだろうけど、少しだけ遅かったね」
「はい、聖女様とモナルダ様、そしてグレコマ様にエルダー様。お待たせして申し訳ございませんでした」
あれ? やっぱり知り合い
名前見たら思い出すかな。
アユカは心の中で『アプザル』をして、ハンカチで汗を拭いているショートカットの女の子を見た。
アンゼリカかぁ。
うーん……おらん。うちの知り合いにはおらん。
だって1度でも会ってたら『アプザル』してると思うねん。
やから、チャービルと同じカッコ付き髑髏なら、絶対覚えてると思うもん。
ホンマになんやねん。カッコ付き髑髏って。
この女の子も悪い子には見えへんねんなぁ。
それに、ウサギに似てて、めちゃくちゃ可愛いやん。
背は小さいけど胸大きいから、庇護欲くすぐられる男性多そうやわ。
「アンゼリカ嬢が魔術機関に属しておられたとは驚きです」
「父には秘密にしてください。内緒なんです」
「それ、いいんすか?」
「父は私を名家に嫁がせたいようで、社交の場以外の外出を嫌うんです。私としては結婚などせずに魔法研究に没頭したいのですが……1度父に相談した際に1ヶ月軟禁させられまして……そこからは母の力を借りて、秘密で外出しているんです」
「そうっすか。でも、よくないと思うっすよ」
エルダーの言葉に、アンゼリカの顔が俯いていく。
「まぁまぁ、いいやん。人様の家庭に首を突っ込むもんちゃうし、別にうちらは言いふらす予定もないんやしさ」
「俺が言いたいのは、泥沼化する前に堂々と言い合った方がいいってことっす」
「そうやったとしても、人の事情はそれぞれやって言ってんねん」
「エルダー。お前も色々あったからこその意見だろうが、俺はアユカ様に賛成だ。必要以上に口を出すもんじゃない」
「……分かったっす」
グレコマが、エルダーの背中を軽く叩いている。
エルダーは「言いすぎたっす。ごめんっす」と、アンゼリカに謝っていた。
アンゼリカは、首を横に大きく振って、心配してくれたことへのお礼を伝えていた。
うーん、やっぱり悪い子には見えへんねんけどなぁ。
闇堕ちするマークなんか?
悪役令嬢になりそうにも見えへんけどなぁ。
それでいくと、チャービルが悪役令息になるっていうんも想像でけへんしな。
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