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お腹の満たされ具合に満足している一同だが、今日の目的はシャンツァイへの誕生日プレゼントの購入だ。
本来の目的を思い出し、少し焦りながら、ようやく本格的に探しはじめることにした。
「シャンには高いもんがいいかと思ったけど、逆に絶対持ってなさそうな市場の品とかがいいんかも」
「羽ペンあるかな?」
「羽ペン?」
「うん。モナルダに聞いたんだ。兄上はよく羽ペンを折るんだって。だから、たくさんあっても困らないって言ってたんだ」
プレゼントに消耗品は最適やと思う。
でもそれって、家族に対してやなくて組員に対してやったんよなぁ。
やから、キャラウェイは形として残るもんをあげたほうがいいと思うんよね。
「羽ペンやったら仕事で使うもんな。モナルダに聞くなんてさすがやわ」
「へへ」
はにかむように頬を緩ませるキャラウェイに、アユカは目を細める。
「んでな、うち思ってんけど、めっちゃ綺麗な羽ペンなら使わへん時は飾っとけるやん。使えるし飾っとけるしで、お得やと思わん?」
「思う! 僕、兄上と姉上がくれたアクセサリー、毎日つけてるんだよ」
腕突き出して、見せてくれんでも知ってるで。
喜んでもらえてることに幸せ感じてるから。
「姉上たちがフォーンシヴィに行っていた時も、アクセサリーを見て頑張ってたんだ。だから、兄上にもそんな羽ペンを贈りたい」
「そねや。綺麗な羽ペン探しに行こか」
「うん!」
雑貨を取り扱っている屋台を数店舗回ったが、アクセサリーや髪飾り、置物の屋台ばかりで文具用品は見当たらない。
掘り出し物がありそうな置物の屋台では、「卑怯な手を使ってごめんやで」と、アユカは『アプザル』をして商品を見回していた。
そして、1000ベイの月の雫という水滴のような形をした石を発見した。
透明に近いが濁りがあり、表面は白い粉が吹き付けられたような石だ。
大きさは縦に5センチほどで、手のひらにすっぽり収まるサイズになる。
「なぁなぁ。この石ってもう無いん?」
「後、2個あるよ」
「全部、もらっていい?」
「いいけど、こんな石どうするの?」
「おじさんが売ってるのに、こんな石?」
笑いながら言うと、店主は目を逸らしながら気まずそうに頬を掻いている。
「正直、おじさんはこれが売れると思ってなかったんだよ。でも、こっちの置物を仕入れる時に、この石も買うと安くしてくれるって言うから仕入れたんだよ」
中央に飾っている、1つの紐に淡いピンク色の宝石が5個付き、暖簾のように横に7個ぶら下がっている置物を指されながら言われた。
「そうなんや」
「こっちの置物はいらないかい?」
「うん、月の雫だけでいい」
「そうかい。ありがとよ」
グレコマたちは「なんでそんな物を買うんだろう?」と思っていても、決して口に出してこない。
アユカのことを無鉄砲なはちゃめちゃな女の子と思っているが、無駄を嫌っていることを知っている。
無駄を嫌うアユカが、理由なく胡散くさい石を買うはずがないのだ。
「アユカ様、それをプレゼントにするのか?」
屋台から離れた所で、グレコマが尋ねてきた。
店主に聞こえない位置になったのだろう。
「うん、そうやで。うちの予想があってるなら、ものすっごい石やからね」
「あってなかったら?」
「ただの石。やから、予備のプレゼントも用意しとくよ」
ウィンクという技をフォーンシヴィで覚えたアユカだが、グレコマたちにしても普通に無視される。
反応されても困るが、何事もなかったかのように視線を逸らされるのだ。
くぅ! いいねん、いいねん。
シャンみたいに「可愛い」って言ってもらいたいわけちゃうもん。
ただちょーっとばかし微笑んで、応えてほしいだけやもん。
それにしても、さっきの石、パワーストーンやねんなぁ。
前の世界で腕につけてる組員はチラホラおったけど、ホンマに効果あるんやろか? 気の持ちようちゃうんかなぁって思ってたんよね。
でも、買った石は「肉体と精神のバランスを保つ効果あり。ただし1度のみ」って表示されたんよね。
「1度のみ」っていうんが気になったわけよ。
ホンマに効果ありそうやん。
まぁ、大大大神様であるハムちゃんがくれた鑑定やからなぁ。
疑うことはしたら、あかんよな。
ハムちゃんに会うまで神様さえ信じてなかったんは、うちの反省すべき点やしな。




