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魔物素材がいくらになるのか楽しみにしていたアユカは、街に行ったら早々にスキップをしていた。
街に到着し、まずは冒険者ギルドに行って、買い取ってもらえるものは全部売ったのだ。
結果、1500万ベイなった。
「キャラウェイ、何食べよっか? 何でも奢るで。グレコマたちも」
「俺らもいいのか?」
「当たり前やん。グレコマたちが魔物を倒してくれるから、うちお金持ちになったんやし」
「お金持ちって。アユカの感覚は庶民っすね」
「どこが?」
グレコマたちは苦笑いをしていて、この話はお開きにしたいように見えた。
今日はデートではないので、グレコマたちは隠れていない。
キャラウェイもいるので、第1騎士隊からも2名護衛についてくれている。
ニゲラは、どんな時もキャラウェイの斜め後ろを陣取っている。
「姉上。僕、食べ歩きをしてみたい」
「めっちゃいいやん。西の大通りが市場らしいから、そこ行って食べ歩きしよ」
「うん!」
アユカとキャラウェイは、手を繋ぎながら西側にある大通りに向かった。
冒険者ギルドは中央の大通りの南側の端にあり、そこから歩いて20分ほどの距離になる。
街並みを楽しみながら西の大通りに到着したアユカとキャラウェイは、顔を輝かせた。
なにぶんアユカも初めて来た通りだ。
建物のお店が連なっている中央や東と違って、お祭りのように屋台が並び、賑わっている西の市場が楽しそうに見える。
「人多いなぁ」
「この市場は、王都の台所って言われてるからな。毎日のように来る人たちばかりだと思うぞ」
アユカたちがいる手前からは、野菜を取り扱っている屋台が並んでいる。
「半分ほど前の世界と似てる野菜やわ」と歩いていると、香ばしい匂いが漂ってきた。
「めっちゃいい匂い! お肉の串焼きやって。あれ、食べよ」
「うん、食べたい!」
1人1本計算で7本買い、全員に行き渡ったのを確認して、アユカは大口でかぶりついた。
どう食べたらいいのかと戸惑っていたキャラウェイとニゲラが、アユカを見てから顔を合わせ、同時にかぶりついている。
そっか、そっか。初めてなんやね。
こういう食べ方があるって知るんは、いいことやと思うよ。
少し歩くと、今度はキノコと肉の串焼きを見つけ、それも購入した。
2回目にもなると、キャラウェイたちも戸惑わずに食べている。
「あ! ハンバーガーあるやん! でも、ポテトはないんかぁ。油ギトギトの細いポテト食べたいわ」
「油ギトギトなのに食べたいの?」
「体に悪そうなものって美味しいやん」
首を傾げるキャラウェイの斜め後ろで、ニゲラが苦笑いを浮かべている。
アユカは、グレコマに「変なこと教えるな」と背中を叩かれた。
「変なことちゃうのになぁ。って、そういえば、揚げ物少ないよな。ポテトもやけど、カツやコロッケも見たことないわ。コロッケくらいなら屋台ありそうやんな」
あるだろうと期待の眼差しをグレコマたちに向けたが、全員から「何言ってんだ、こいつ」という顔をされていた。
普段食べていたものがないという事実が衝撃で、ムンクの叫びの真似をすると、白けた顔をされて目を逸らされた。
キャラウェイとニゲラだけが笑ってくれている。
「天使!」と言って笑ってくれる2人に抱きつくと、キャラウェイは照れながら抱きしめ返してくれ、ニゲラは真っ赤になって当惑していた。
「あかん……ないと分かったから食べたなってきた……」
天ぷらも、海の浄化の時に食べた以来食べてへんしな。
「作り方は知ってるっすか?」
「それぐらいなら、うろ覚えで知ってる」
「料理長に言えば作ってくれると思うぞ」
「分かった。油だけ大量に買って帰るわ」
「で? ハンバーガーは食べるのか?」
「食べる!」
肩を落としていたはずなのに途端に元気になるアユカに、グレコマたちは短い息を吐き出した。
ハンバーガーを2個食べた後は、肉まんを食べ、デザートにフルーツ飴を食べて、心ゆくまま市場を楽しんだのだった。
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