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昼食後は、また馬車に乗り、窓の外を眺める。


キャラウェイに話しかけられ、今度は料理の話になった。

話が盛り上がり、キャラウェイがマツリカに話題を振ると、マツリカは嬉しそうに返事をしている。


うちを嫌ってるだけで、悪い子じゃないんやろうな。

キャラウェイ様のことが好きで、キャラウェイ様がうちを構うからヤキモチとか?


獣馬を休憩させるために立ち寄った草原で、キアノティスにもらったスイーツをみんなで食べようと提案したが、「それはアユカ様がもらったものだから」とキャラウェイさえも一緒に食べてくれなかった。


夜は川辺で夕食を食べ、テントを張って眠った。

川の近くで眠った理由は、次の日の朝教えてもらった。

朝に川の水で体を拭くためだそうだ。


「うち、魔法でみんなを綺麗にしよか?」


「アユカ様……魔法で綺麗とは?」


「やから、うちの便利魔法の1つに、シャワーを浴びるような魔法があるねん」


生活魔法という魔法自体がないのか、みんな目を泳がせている。


1人1属性の魔法しか使えない世界。

アユカは聖女なのだから、治癒以外使えないはずになる。

だから、アユカが治癒以外の魔法を使えると発言した意味が理解できないのだろう。


アユカは自身の魔法について、まだ何も説明していないのだから。


「百聞は一見に如かず! エルダーにかけてみるな」


「お、おれっすか?」


「そうだな。エルダーがいいだろう」


「グレコマ副隊長、ひどいっす!」


「アユカ様を信じろ」


「だったら、副隊長がかけてもらってくださいっすよー」


「分かった。2人にかけるな」


両手を2人に翳すと、2人の顔は青くなった。

周りは、息を潜めて見守っている。


「『クレネス』」


右の手の甲とエルダーとグレコマが、一瞬だけ光った。


うん? 魔法をかける場合、相手も光るんか。


エルダーとグレコマは、大きく口を開けてお互いを指した後、声を上げている。


「「なんだこれー!」」


「やばいっす!」


「やばいな!」


「なんすか! この爽快感!」


「爽やかな匂いもするな! ミントか?」


「ミントっす!」


ミントなん?

うち、フローラルやってんけど、人によって違うんかな?


「そんなに凄いの?」


期待いっぱいの声の主は、キャラウェイだった。

自分にもかけてほしそうに握り拳になっている両手が、僅かに揺れている。


「殿下、これすごいっすよ!」


「かけてもらってください!」


キャラウェイは落ち着きのない様子で、フラックスを見た。

フラックスが頷くと、弾けんばかりの笑顔をアユカに向けてくる。


「アユカ様、僕にもお願い!」


「分かった。全員一気にかけるな」


「ちょ!」


マツリカが何かを言おうとしていたが、無視して全員に『クレネス』をかけた。

さっきよりも手の甲の光が強くて、使う魔力量で光り方が変わることがはっきりと分かった。


光り終わったキャラウェイたちが、それぞれ賞嘆している。


「すごいね! 旅の途中なのに、さっぱりできるなんて思ってなかったよ」


「ええ、素晴らしいですね。汗臭い匂いが取れて嬉しいです」


残り2名の騎士も「本当にミントの匂いがする」と喜んでいる。

マツリカは、手のひらや腕を見たり、髪を触ったりしている。


「日中は日差しが強いから水も気持ちいいと思うけど、魔法の方がさっぱりするやろ。みんながよければ毎日するよ」


「いいの?」


「これくらいお安い御用やって。世話になってるんはうちなんやから、何かさせて」


「世話になっているとか思わないで。アユカ様は聖女様で、僕たちの大切な人なんだよ」


「うん、ありがとうな。そうやったとしても、うちも何かしたいんや」


そんな申し訳なさそうにせんでいいのに。

頭を撫でてあげよう。

決して、うちが撫でたいだけちゃう。


「殿下、毎日魔法をかけてもらいましょう。そうしてもらえるのならば、川沿いに迂回する必要はなくなりますので、予定より早くウルティーリ国に戻ることができます」


「そうだね。アユカ様、よろしくお願いします」


「うちが協力したくてすることやから、かしこまらんとって」


朝食を食べ、騎士たちが机やテントを片付けてくれた後、出発になる。


片付けてもらっている間は暇なので、川辺で素材採取をすることにした。


「アユカ様、何してるの?」


「薬になる材料採ってるねん」


「薬?」


「ん? 薬ないん?」


「ううん、薬はあるよ。風邪薬や傷薬があるよ。でも、全部薬草で作っているはずだから、川で何を採るんだろうと不思議なの」


ほーん。薬は普通にあるんやね。

風邪薬とかってことは、ポーションのような回復薬はないってことか。

薬は前世と同じ感覚でいいんかも。


「こういう変哲もない石やったり、水の中に生えてる草やったりかな」


「それで、何ができるの?」


「他にも材料が必要やけど、石は痛み止めの塗り薬になるし、この小さな草は二日酔いに効く薬になるんよ」


「そうなんだ。僕も手伝うよ」


「じゃあ、石は見分けが難しいから草を頼もうかな」


「任せて」


いや、うん、王子様にさせることちゃうんは分かってるよ。

だから、マツリカちゃんよ、睨まんとって。

本人がしたい言うんやもん。

断ったら、悲しそうな顔させてまうやん。


腰が痛いなぁと思いはじめた時、片付けが終わったと声をかけられ、出発することになった。


キャラウェイにお礼を伝えようとしたら、袖口がびっしょりと濡れていて、もう1度『クレネス』をかけた。


汚してしまったと恥ずかしそうにしているキャラウェイは可愛かったが、お前のせいで汚れたんだと言うように睨んでくるマツリカは怒りで顔が歪んでいるように見えた。


馬車の中でキャラウェイとお喋りし、休憩時に食事と素材採取をする日が4日程続いた。




昨日18時過ぎに、今まで投稿した文章を何箇所か編集しました。

前より少し読みやすくなったかと思います。

物語の内容に変更はありませんので、読んでみようと思われた方だけ読んでもらえたらと思います。

念のためのお伝えでした。


ブックマーク登録、読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。嬉しいです!

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