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113 〜 ユウカ 2 〜

どうして私ばっかり、どこに行っても不幸なんだろう。


元の世界でも、仲がよかった子と少しずつお昼を一緒に食べなくなって、休憩時間も別行動するようになった。


私には希望の高校があったから勉強漬けだったし、スポーツ推薦を狙っているその子と疎遠になるのは自然だと思ってた。

他にも友達がいたから、お互い違う子と遊ぶのは不思議じゃなかったし。

小さい頃から友達が多かった私は、色んなグループに属していたしね。


でもその子は、試験の度に勉強を助けてあげていたのに、それを無理矢理だったみたいに周りに言いふらしていた。


ひどいよね。私は、もっと自分の勉強がしたかったのを我慢して助けてあげてたのに。


深く傷ついたせいで、高校受験は失敗した。

勉強しようとすると、その子の悪意が頭の中をぐるぐる回って気持ち悪くなるようになった。

それでも、死に物狂いで勉強したのに。


ものすごく頑張った私は合格できなかったのに、私を傷つけたその子は推薦合格していた。


それだけでも死にたいほど辛かったのに、人生初めての失敗が本当に苦しくて少しの間塞ぎ込んでた。


でも家族が悲しむと思って、違う高校だとしても頑張ろうって決めた。

心配かけないように笑顔でいなくちゃって頑張った。


なのに、明るく振る舞って家事を手伝う私に家族は冷たかった。


「そんなことしなくていいから」


「ゆっくり過ごしたらどう?」


家族を心配させたくなくて元気な姿を見せるように頑張っているのに、どうして気持ちを分かってくれないんだろうって不思議だった。

そこは「えらいね」や「ありがとう」なんじゃないのって。


少し考えればっていうか、常識があれば分かることなのに分かってくれなかったことに、心を傷つけられていたんだ。


だから、上手に笑うことができなくなったんだと思う。

高校入学をして友達ができなかったのは、気持ちを分かってくれなかった家族のせいだ。


そんな中、優しくしてくれた男の子がいた。

クラス1の秀才だったから、私とも話が合って、彼と過ごす時間は楽しかった。


でも、彼は脅されて、問題児集団の女の子と付き合いはじめた。

そんな彼が可哀想で、勇気を振り絞って彼女に意見をしたら大泣きされた。

泣きたいのは私なのに、なぜか大泣きされた。


その翌日から、私はクラスでいないものとされるようになったんだよね。

あの子は、私に虐められているように見せたかったんだ。


正しいことをした私が非難される幼稚な学校が理解できなくて、学校を辞めた。


頑張りすぎて何もかもに疲れたから、少しだけ休もうと思った。

また頑張るために、今は休むべきだと思ったんだ。


なのに、家族は慰めの言葉1つかけてくれなかった。

「頑張ったね」「辛かったね」という言葉があれば、あんなに長く引きこもらなかったのに。


極め付けは、私が落ちた高校に妹が合格したことを、わざわざ報告してきた。

妹は妹で私に聞こえるように大声で喜んで、私を馬鹿にした。

そんな妹を祝うために外食に行こうって、誘ってきた親が信じられなかった。


その時にはじめて、私の家族は人の心が分からないんだって悟ったの。

そんな家に生まれた私は、これからもずっと不幸なんだろうって。

努力しても不幸しかない人生なら生きる意味はないって、命を絶ったんだ。


もう1度、人生を終わらせたい気分だけど、死ぬのは本当にものすっごく苦しかったからやりたくない。


でも、本当に不幸すぎて辛い。


どうして、何も考えていなさそうなアユカが幸せそうなんだろう。

きっとアユカも家族と同じで、周りのことを考えていないから幸せなんだろうな。

自分のことしか考えてないから暴力を振るえるし、会議をサボったりできるんだよ。


はぁ、わがままな方が幸せになれるって分かっても、私にはできないからなぁ。

どうして、私には頑張ることしかできないんだろ。


治癒魔法も瘴気の浄化も頑張ってる。

ふらふらになるまで頑張っているのに、最近では適当にお礼を言われるだけになった。

はじめの頃はあんなに何度もお礼を言ってくれたのに、当たり前になったのか当然のように思われている。


だから、治せない怪我や病気があったり、瘴気を消せなかったりしたら、残念な顔を向けてくるんだ。

その時の顔がどれだけ私を傷つけているかなんて考えてないんだよ。

またあの顔を向けられると思うと、体が強張って震えるんだから。

治せないことも、浄化できないことも、私のせいじゃないのに。


聖女だって人間なんだって分かってほしい。

どんなに頑張っても、できないことはできないんだって気づいてほしい。


頬を伝って顎から雫としてお湯に落ちる涙が、波紋を広げている。


頑張りすぎて疲れたな。

お母さんが作ってくれるミネストローネが飲みたいな。

あんな親だけど、ミネストローネだけは美味しかったんだよね。


浴室のドアをノックされ、驚きで体が跳ねた。


早く出てこいってノックで言われなくても分かってるから、もう少し優しく叩いてくれたらいいのに。

襲われて怖い想いをした子に、大きな音を出すなんて虐めているのと一緒だよ。


タオルや着替えを持ったメイドが、無言で入ってくる。

ユウカも何も言わずに、静かに支度だけが進んでいく。


お昼からの会議でアユカは来るのかな?

謝ってくれるなら、私は許すのにな。

乱暴だし教養がないみたいだから仲良くはできないだろうけど。


でも、更生するお手伝いはできるよね。

そうしたら、友達になれるかな。




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