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なぁ、シャン。
うちな、シャンが今怒ってくれてることが、めちゃくちゃ嬉しいんよ。
みんなからも憤りを感じて、ホンマにめちゃくちゃ救われた気分やねん。
うちが1人でいる時間なんて寝てる間くらいやから、疑う要素はないんやろうけど、それでも知らん間に泣いてたほど嬉しいんよ。
何か起こったら無条件でうちが怪しまれたし、何も起こってなくても品定めするように見られてたんよ。
ちょっとでも誰かの当たり前から外れたら「ほら、やっぱり」って。
しかも、堂々と言ってこんと、遠目に聞こえる程度のヒソヒソ話で。
「あー、はいはい」って流すようにしてたけど、ホンマはずっと辛かったんよ。
誰かに信用してほしかったんよ。
気持ちの整理の付け方が分からん頃の、布団に潜って泣きながら少女漫画読んでたうちに教えてあげたいな。
王子様ちゃうけど、将来、異世界で素敵な王様に会えるよって。
その人と周りの人たちが幸せにしてくれるよって。
霧島にも言いたいなぁ。「信じてくれる人ができたよ」って。
霧島は家族みたいなもんやったから、信用してほしい他人ちゃうかったから「誰か」には入らんかったけど、側にいてくれてたんは嬉しかったよって。
うちが布団に潜ってたら、元気づけるように少女漫画を買ってきてくれたんは霧島やからね。
側におれてた間に、もっともっと「ありがとう」って伝えとくべきやったわ。
「シャン、ありがとう。怒ってくれてありがとう」
「ああ」
「キアノティス様にもお礼言わなね」
「いらねぇよ」
小さく笑うと、怒っていたのが嘘みたいに優艶な微笑みを浮かべられた。
心を満たしていく安心感が、今まで溜まっていたやり切れない想いを涙として追い出してくれているのだろう。
止めようと思っても涙は止まってくれず、鼻水さえ出てきてしまいそうになる。
「シャン、あのな、少し離してほしいねん」
「ダメだ。俺が全部拭ってやる」
「気持ちは嬉しいけどな。ちょっと離そう」
あああああ! 鼻水がー!
嫌や! こんなにも完璧な顔の前で鼻水垂らしたくない!
「ああ、そうか。息がしにくいんだな」
嫌やー! バレへんわけないけど、鼻水顔見られた!
恥ずかしくてお嫁に行かれへん。
いや、うん、シャンに嫁ぐからいいっちゃいいんやろうけど……
いやいや、嫁ぐからこそ、シャンには見られん方が……
いやいやいや、ずっと一緒におるんやったら鼻水顔くらい見られても……
あかん。訳分からんくなってきた。
それに、シャンの手によって鼻をかんだから、もう何もかもよくなったわ。
ハンカチでかむのも小さい頃以来やわ。
はぁ。
恥ずかしさって天井超えたら消えるもんなんやね。
同時に、涙も止まってきたわ。
「話を戻すけど、トックリランはうちをどうしたいんやろ?」
「俺にもさっぱりだ。捕まえて薬を作らせたいのか、人知れず殺したいのか。とりあえず、ムカつくから殺そうと思ってる」
「うん、シャン。それは止めよう。戦争になるよ。あかん」
「ならねぇよ。キアノティスは許す。それにアユを泣かせたんだぞ」
「うちが泣いたんは、みんなが怒ってくれたんが嬉しかったからやよ。嬉し泣きやから、ちょっと落ち着こう」
「可愛い理由で泣くな」
ちょっ! この人、今、うちの鼻にキスした!
信じられへん!
さっき鼻かんだとこ!!
鼻水残ってないやろうけど、それでも今キスしたらあかんとこ!
って、そんなところに驚いてる場合ちゃうよな。
どうにかしてうちを犯人にしたいわけやから、明日の会議で捏造された証拠とか出てきそうやわ。
自白剤は作れてるんやけど、魔法で操ってるって言われたら嫌やしなぁ。
世に出していい薬ちゃうしなぁ。自白剤は最終手段よな。
まぁ、どれだけ周りから疑われようと、無実を信じてくれてる人がたくさん側におるからな。何とも思わん。もう傷ついたりもせーへん。
それに、きっとシャンもキアノティス様も既に動いてくれてそうやしな。
今、牢屋やなくて部屋におれてるんも2人のおかげやろうし。
うちは行き当たりばったりでいける。大きく構えとこ。
アユカが通常運転になった頃、シャンツァイの機嫌が最悪からちょい悪くらいになっただろう雰囲気に、クレソンたちが安堵していたのだった。
事前に告知もなく、今日の投稿が遅くなりすみませんでした。
明日はお昼時に投稿できると思います。
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