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「なぁ、シャン。今日の会議から、うち参加せんでもいい?」


「……何しようとしてるんだ?」


会議が行われる2日目の朝。

百面相をしながら朝ご飯を食べていたアユカが、今にも踊り出しそうな雰囲気でシャンツァイにおうかがいを立てたのだ。


「昨日、キアノティス様が言うてたやん。騎士団でも苦労する魔物がおるって。もしかせんでも、ウルティーリとは違う魔物が住んでるんちゃうんかなと思って」


「食べたいんだな」


「正解! 倒しに行くついでに、瘴気見かけたら消してあげようとも思ってるけど」


シャンツァイはワクワク顔のアユカから、今回連れてきた騎士たちに視線を移動させた。

騎士たちも楽しみを隠せないようで、口角が上がらないようにしていると丸わかりだった。


ちなみに、ネペタは夜中まで活動し明け方にシャンツァイに報告をしていたので、今はベッドの中だ。昼まで仮眠を取っている。

ネペタがいれば、ネペタだけは青い顔をしていただろう。


「キアノティスが倒しに行かないといけないほどの魔物だぞ」


「そこには行かへんよ。さくっと近くの森に様子見に行くだけ」


悩んでいるような顔をしながら息を吐き出すシャンツァイを、アユカは期待一杯の眼差しで見つめる。


「俺だけ会議で疲れるのか」


「シャンのために美味しい魔物取ってくる」


「俺は魔物より食べたいものがあるんだがな。分かるか?」


「なに? なに? 買って帰ってくるで」


「じゃあ、夜に答え合わせをするか。アユが思うものと俺が食べたいものが一致すれば、1泊旅行デートしてやる」


「ホンマに!?」


「ああ、一致すれば2日間予定を開けよう」


「やった! 絶対当てるから」


シャンツァイが好んで食べている物は何だろうと真剣に考え出すアユカは、周りの白けた顔に気づいていない。

シャンツァイの「夜が楽しみだ」という言葉に大きく頷いたことを、夜に後悔するのだった。


が、アユカが後悔する夜より前、昼食以降のアユカは、護衛の騎士たち全員とチコリと一緒に帰り道とは反対側の森に向かい、魔物を倒しに倒しまくっていた。


王城に居残り、会議に参加したのはシャンツァイとクレソンのみになる。


見たことがない魔物は、ビービビーの変異種ビーベビーくらいだった。

ビーベビーの蜂蜜は薬に不向きだったが、ビービビーの蜂蜜より甘く、ヘアケアに最適だと表示された。

飛び跳ねて喜ぶアユカは、巣蜜をごっそりいただいていた。

ヘアケアはアユカが欲しかった品物なので、王城に戻ったらいち早く錬成するだろう。


ちなみのアユカが作る基礎化粧品は、王宮で働くメイドたちにあげていた。

奥さんがいる騎士や侍従にも欲しがられると渡している。


十分すぎるほどの口コミが広がっているので、モナルダは薬が落ち着いたら化粧品の販売をと企んでいるが、手が回っていない状態なのだ。


森で思う存分体を動かしたアユカは、帰城途中で瘴気の塊を2個消しておいた。

グレコマたちが、瘴気を消した場所を地図に記している。

後で、報告する用だそうだ。


最後に街に寄り、シャンツァイ用にナッツの詰め合わせを購入した。

お酒が好きなシャンツァイは、つまみにナッツを食べていることが多い。

だからこその選択だったのに、この時の周りは「無駄なことを」と思っていたに違いない。

チコリだけが「喜ばれますよ」と言ってくれていた。


滞在先の部屋に帰ると、シャンツァイとクレソンはもう戻ってきていた。


「明日、ホノカという聖女が一緒に行くと言っていたぞ」


「いいん?」


「いいんだろうよ」


話しながらアユカは、今日の戦利品を錬成している。


「夕食は必要ないと伝えてるぞ」


「うん、みんなで魔物肉パーティーしよう」


「それと、そろそろ」


ドアのノック音が聞こえた。


「来たか」


クレソンがドアを開けると、キアノティスとペペロミアを抱いているクテナンテが部屋に入ってきた。

続いて、お酒を大量に乗せたカートを押して執事も入室している。


「夕食への招待、嬉しいぞ。楽しもうな」


「してねぇよ。食べにくるって宣言して消えたんだろ」


「些細なことを気にするな」


アユカは宙を見つめて考えた後、閃いたように手を叩いた。


「キアノティス様たちも魔物肉食べるんでいいん?」


「ああ、食べてみたかったんだ」


「私も少し興味がありまして」


「そうなんや。めっちゃ美味しいから期待していいで」


「らしいな。楽しみだ」


ってことは、シャンに止められてた訳ちゃうけど、錬成も自由にしていいってことか。

ん? それとも、キアノティス様たちやから気にせんでいいんかな?

まぁ、細かいことはいっか。




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