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思いがけず時間ができたので、デート気分を少しでも味わえるようにと、シャンツァイが庭園散歩に誘ってくれた。

手を繋ぎながら、見事に咲き誇っているバラ園をのんびり歩いている。


「なぁ、シャン。いいこと思い付いたんやけど、今話していい?」


「いいぞ。会議室出た時から盗聴防止の魔道具動かしてるからな」


すごいわー。

いつでもどこでも完璧な彼氏やわー。


「人工魔石作られへんかな?」


「……どうやってだ?」


「モエカが言うには、瘴気は魔力の塊なんやろ。使い終わった魔石でもいいし、石や宝石にでもいいんやけど、そこに瘴気を入れるねん。そしたら、人工魔石にならん? もしくは、瘴気を圧縮させて固まらせるとか」


「……なるほど」


「電気を流通させるんは、現実的に難しいと思うんよ。何十年かかるんやろうって話やろうし。魔法使わへんとか無理やと思うしな。でも、聖女がおらんくなったら祓われへんっていう心配も分かる。やったら、消すんちゃうくって有効活用できへんのかなって思うんよね」


「やってみる価値あるな」


ガゼボを発見したので、少し休憩することにした。

チコリが、すぐにストールを空間収納の鞄から用意してくれる。

歩いてる分にはそこまでだが、座るとパーカー1枚では寒いのだ。


「さっきの会議で、感じたことあるか?」


「んー、なんとなくやけど、フォーンシヴィの人たちも電気に興味ないんちゃうんかな。モエカの欲求を満たすためと、他の聖女の力や知識が欲しいだけちゃうんかなぁ。モエカが神様と話してるなら、他の聖女も神様と話してる。その情報が欲しいんかなって」


「さすがだな。8割当ててると思うぞ」


「後、2割は?」


「あいつらが欲しいのは他の聖女じゃなく、アユの知識だ。薬や瘴気の浄化の速度の秘密だ。来る前は考慮くらいだったが確信に変わったよ」


「ああ、やから、やたら知識云々言うてたんやね。うちにポロッと『薬の知識』って言葉出してほしくて」


「そういうことだ」


「ほーんと、回りくどいこと好きやよなぁ」


「自国の聖女の前で、他国の聖女に強請ることはできないからな」


そう思うんなら、情報交換ってことで手紙でやり取りしたらいいやん。

便利な通信機もあるんやしさ。

聖女おらん前で話し合ったらいいねん。


「あ! そうや! 忘れる前に聞いとかな」


「どうした?」


「トックリランって特記事項ある? ヘミグラフィスと一緒で、注意事項に書いてなかったと思うんよねぇ。覚えてないだけかなぁ」


「そいつが、どうかしたのか?」


「うちを殺したいほど嫌ってるみたいやから、どんな裏の顔を持ってるんやろと思って」


人が良さそうな顔をしてたけど、髑髏やからね。

髑髏が何か分からんから、身を守るために情報は知っとかなね。


「俺の資料にも特に記載はなかったな。けど、記憶が正しければキアノティスと仲は悪かったはずだ。キアノティスがそいつの娘を振ったとかで、散々文句を言われたらしい。蛇みたいな奴だって愚痴ってた覚えがある」


うふふふふ。

やっぱり親友なんやん。

そんな話、友達やないとせーへんで。


微笑ましく思っていただけなのに、顔がニヤついていたようで両頬を引っ張られた。

照れ隠しと分かる行動に、余計にニヤニヤしてしまうし、楽しくなってくる。


戯れるつもりで口を尖らせて抵抗しようとしたら、尖らせた口を噛まれた。

全くもって、ここまでのイチャつきは想定外だった。


「ひゃひゃひゃめてぃひゃー」


「クックック」


手を離してくれたが、久しぶりにツボに入ったらしいシャンツァイは、アユカの頬の赤らみがひくまでずっと笑っていた。


笑い終わった後のシャンツァイはというと、ネペタに城内の情報収集をするよう命令し、不安そうな顔をしながらもネペタは消えていった。


そして、モナルダに連絡をし、会議内容とアユカの発想を伝えている。

モナルダから「魔術機関に連絡します。奇声を上げて喜ぶと思います」と言われた。


首を傾げていると「3度の飯より魔法や魔術が好きな連中が集まっているところだ。魔道具の作成より魔法や魔術の研究が好きな奴らだな」とシャンツァイが教えてくれた。


「異世界らしいところ、まだあった」と喜んだアユカであった。




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