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死闘の試練(終)・力の差とは残酷なもの、決して届かない高み

「団長!!準備、整いました!!」

「ご苦労さまです、では…勇者を、皆を…殺しなさい」

「はっ!!団長の命が下った!!全部隊!!突撃!!!」


全部隊が一斉に拠点に向けて走り出した。


「あとは…勇者祐樹を待つだけ」


最も今、警戒すべきは勇者祐樹のみ、問題は彼がどう動くか。

この数の中、彼の行動が勝敗を分ける。


「ベルフ、いますか」

「はっ!!ここに」

「あなた達も戦いに加わりなさい」


「なっ!?しかしそれでは団長がお一人に…」


「私に護衛は必要ありません…行きなさい」

「う…わかりました」


ベルフは残った団員を集め、勇者グループの拠点に向かった。


「これで…やっとあなたと戦えますね…」


後ろから微かに漂う気配。


「やっぱり、バレていましたか」


木の影から現れたのは勇者グループのリーダー勇者祐樹だった。


「あなたが勇者祐樹ですね、改めて…初めまして、私はティアナ騎士団、団長ティアナ」

「知っていますよ、見ていたから…だからこそ…」


僕は精霊剣と魔剣を握る。


「それが精霊剣と魔剣ですか…」

「へぇ、知ってるんだ」

「ええ、私も数々の修羅場をくぐってきましたから……」

「なるほどね」

「だからこそ、私は確信して言えます、勇者祐樹、あなたは私には勝てない…」


「それはやってみないとわからないんじゃないかな…」

「わかりますよ」


冷たい瞳が僕の恐怖心を奮い立たせる。

わかっている、敵わないことは、わかっている、圧倒的な力の差があることは……だからこそ戦う。

圧倒的に不利な状態の中でも諦めずに戦う、それが勇者だ。


「ふん、いいでしょう…ならその身をもって知りなさい、勇者」

「調子に乗ってろ、ティアナ団長」


僕はすぐに仕掛けた。

槍は距離が離れていても攻撃できるという最大のメリットがある。

それによって攻撃の手段、つまり幅が広がるということ、まずは相手の攻撃手段を狭める。


二振の剣をうまく使いながら、相手に攻撃し、なるべく攻撃する隙を与えない。

そしてできる限り、ティアナ団長を狙うのではなく槍を狙う。

勝てないとわかっている以上、望みは低いが武器破壊だ。


「この程度ですか?」

「平然と……」


僕の猛攻は確実に相手の攻撃手段を狭めている、だがそれ以前に全ての攻撃が弾かれている。


戦っていてわかる、力の差、経験の差を……。


なんなくと槍でいなされ、そして…隙をつき、後方に吹き飛ばされる。


「その程度?」


明らかな煽り口調、不自然だ。

何かしらの意図があると考えていいと思うが……。


はぁ、イライラするよ、本当に。


けどこう遊んでくれているおかげで時間が稼ぎやすい。

立ち上がるとティアナ団長が仕掛けてきた。

槍による猛攻…その一撃一撃が重い。

やばい、手が痺れる。



「炎よ!!!!」



僕は魔剣を地面に突き立てる。

すると地面から炎が溢れ出し、ティアナ団長を襲う。


「これは……」


魔剣が生み出した炎、その特性は燃焼、それは酸素をと魔力を燃やす。

いくら強いティアナ団長でも酸素も魔力もない空間に長くいることはできないはず。

さらに、僕は追い討ちをかける。


「『精霊よ、光あれ』」


精霊剣を掲げると神々しく輝き、ティアナ団長を中心に光の壁が覆われた。


「なるほど、よく考えましたね」


よく燃える炎に…光の壁、これで完全な密室の完成、普通の団員ならこの時点で詰んでいるでしょう。

しかもあの精霊剣と魔剣はかなり厄介なのはこの現状を客観的に見てわかる。

しかも、まだまだ何かしらの力があると見ていいと私は思った。

とはいえ、所詮は勇者……。


「しかし、本当に、力の差とは残酷なものですね…」


彼女が持つ槍が蒼く輝いた。



「これは神の奇跡、神の恩恵……」



ゆっくりと槍先を勇者祐樹に向ける。

嫌な予感がした、背筋が冷える…悪寒が止まらない、汗が滴る。

僕は無意識に一歩…下がった。


「はぁはぁはぁははぁ…なんだこれ」


心臓の鼓動が高鳴っている、今までにないほどに。

これはやばい、早く逃げないと…だが無意識に下がった一歩以降、足が動く気配がない。


「足が…うご、か…ない」

「目に焼き付けなさい、これぞ、私の一槍……」


そして槍は放たれ、光の壁に直撃する。

光の壁は徐々にひび割れ、崩れ落ち、貫いた。

その衝撃でティアナ団長を囲っていた炎もかき消されていた。


「ははは…化け物が」

「皆、私のことを化け物と言いますが、私からすれば、勇者祐樹…あなたも相当な化け物ですよ」

「褒め言葉として受け取っておくよ」


汗が止まらない、体が小刻みに震える。

ダメだ、怖い……死が身近に感じる。



「まだ、諦めていないのですね……本当にどうして勇者はここまで愚かなのか、理解しかねます……もういいです、終わりにしましょう…いくらあなたが頑張ったとしても、決して届かない高み……それをその目に焼き付けなさい」



ティアナの瞳から完全に光が消えた。

悍ましいティアナの瞳が、僕を萎縮させ、さらなる恐怖へと突き落とした。


そして槍がより輝いた。


さっきに輝きとは比較にならないほど、神々しく蒼く輝く。

その光は勇者達、そしてティアナ騎士団の団員すらも魅了する。

その一瞬は時が止まったかのようだった。



「『神槍・階梯』」



ティアナの声はよく響いた、それはまるで神の声かのように……。


動けない、逃げるべきなのに、足がびくともしない。



「この一槍をもって、この死闘の試練の幕を閉じましょう……我が名はティアナ、王国を守る槍なり!!」



蒼き槍がより大きく輝く。

ティアナの意志が心が高鳴るたびに大きく…大きく…大きく……。



「『これこそ、全てを貫く神槍・第一封印解放……穿て……』」



その言葉と共に槍に集まる光が優しく纏わりつく。

二度目の神槍、あまり使わないと誓っておきながら、感情に揺さぶられ、ついつい使ってしまう。

でも、示さなければならない、それが私の役目……。



「『グングニル!!!!』」



穿たれる神槍は勇者祐樹を捉えた。

そして有山祐樹が咄嗟に思ってしまった。


あ…終わった……と。


そもそもティアナ団長と真っ向から挑むのが間違いだった。


はぁ、けどいい経験だった……。


神槍グングニルが勇者祐樹を貫くとした瞬間、空から黒い靄を覆う者が天から降り掛かる。

そしてその者は神槍グングニルの一撃を片手で持つ一振りの剣で受け止める。


「なっ!?何者!!!!!」

「おいおい、困るよ…」


そこに立つのは黒いマントを羽織り、顔を隠す謎の人物。


「本当に、君たちはわかっちゃいない、勇者の価値を、存在する意味を…全く困ったねぇ」

「……まさか!!あなたは!!」

「おっ!やっと気づいたか、遅いよもう、俺、泣いちゃうぞ」

「なぜ、あなたがここにいる!!黒騎士!!!!!」

「なぜと言われれば……勇者を助けに、かな…やっと強い勇者が現れたんだ、その希少価値、ティアナがわからないなんて言わせないぜ」


禍々しい、ただただ禍々しい、そこにいるだけで人に恐怖を植え付ける、化け物がそこに立っていた。


「お、君が祐樹くんだね、あまり会うことはないと思うけど、魔王退治、頑張ってね」

「あ、はい…」


何が起きたのか理解できなかった。

唯一、理解できるのはこの場に化け物が二人いること、ただそれだけ。


「わかったかな、ティアナ…これ以上勇者を殺すのはやめるように…」

「別に殺すつもりはありませんでした、それに殺したとしても、わが王国には生命の葉があります」

「わかってないな、勇者は一度も死んでいないことに価値があるんだよ、特に強者はね…まぁ、今回はただ助けに来ただけだから、ここでお暇させていただくよ…じゃあね、ティアナ、次は戦場で……かな」


そう言って、黒いマントを羽織る謎の人物は闇の中へ姿を消した。


「はぁぁ、まさか介入してくるなんて…まぁいいでしょう、全部隊に告げます!!死闘の試練を終了します!!早急に撤退せよ!!」


彼女の叫びと共に死闘の試練の終わりが告げられた。


「一つ、あなた達に秘密にしていたことがあります…私たちには人を生き返らせる手段があります、今回、死亡した勇者方々はこの後、蘇生を行うので、そのことを頭に入れておくように……では」


僕は腰が抜けたのか立ち上がることができなかった。


「ははは、なんだよそれ……」


その後、勇者達は最初に集まった場所に集まり、そこには殺されたはずの勇者達が群がっていた。


「どうしたんだよ、祐樹!!そんな険しい顔をして」

「いや、なんでもないよ」


どうやら、彼女はいないみたいだ、少し気がかりではあるが、これでやっと僕の物語が始まる。

こうして死闘の試練は三日で終わり、勇者達とティアナ騎士団は王国に帰還した。




「なんともまぁ呆気ない最後だ……だがまぁ面白かったよ、勇者祐樹、君が勇敢な勇者になること心の底から応援している」




勇者が行った試練、死闘の試練が終わった。

勇者ひなの以外の全員が試練を乗り越えたのだ。

これで勇者は大きな皮を破り、大きく成長するだろう。




その頃、勇者ひなのは……。



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