7話 自動車教習所4
本作品はフィクションです。
実際の情報と違う場合が多々ありますのでご注意ください。
仮免学科試験についての文章を加筆しました。
仁美は本日教習所に仮免試験を受けに来ている。
試験課題は、周回コース、直線道路、カーブ、障害物、交差点とその優先判断、坂道発進、踏切通過、S字、クランク、発進・到着時の確認作業、発進方法、停車方法などとなっている。
仁美は技能教習にて教官に褒められるほどで、自信をもって仮免に望んでいた。
すでに試験教官とともに試験車両に乗り込み確認後に発進するところだ。
仁美はサイドブレーキを降ろしながら、父和仁の話を思い出していた。
和仁のハチロクでドライブしていたときのことだ。
免許の話になり、和仁はこう言っていた。
「免許取ったときの話なんだけど、仮免も本免もサイドブレーキかけたまま発進しちゃってさ」
「え、それって駄目じゃないの?」
高校のころの仁美が疑問を口にする。
「もちろん駄目なんだけど、試験は減点方式だからそれ以外問題なくてちゃんと免許とれたよ」
「そうなんだー。そういえばパパ、今でもたまにサイドブレーキ下げるの忘れて発進しようとするの、私が注意してあげてるよね?」
「そうなんだよねー。たまにやっちゃうんだよね」
和仁はあはは、と笑ってごまかす。
「もー、気を付けてよねー」
結構うっかりものな父をフォローするのも娘の役目と考えていた仁美だった。
そうそう、サイドを忘れずにね、と少し笑いそうになるのをこらえてサイドブレーキを下ろし、発進するのだった。
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今日は仁美の仮免試験の結果が分かる日だ。
一緒に教習所に来た遥が仁美に尋ねる。
「結果どうだった?」
仁美は満面の笑みで指をVの字にする。
「ぶい!」
「よかったねー!っていうか、ぶいっていつの時代のリアクションよ」
と、遥は一緒に喜びつつも苦笑いする。
(仁美ってときどきおじさんみたいなリアクションするんだよね)
付き合いの長い遥は仁美のたまに変なリアクションすることも知っていた。
仁美は父和仁と過ごす時間が長く、言動に多くの影響を受けているのだ。
(まあ、そんな仁美も可愛いんだけどね!)
笑顔の仁美を見ながらそんなことを考える遥だった。
仁美は学科試験も全く問題なかった。
日ごろから父和仁のハチロクの助手席に乗り、道路標識やマナーやいろんなルールをほぼ知っていたので、学科の教習は復習しているようなものだった。
学科の試験勉強もさらっと問題集を解いてみただけだった。
それどころか国立大学に受かるような学力があれば、受験勉強と比べて免許の学科試験はちょっとした小テストのようなものだ。
仁美は次から始まる路上教習に胸を高鳴らせるのであった。
その日から仁美の路上教習が始まった。
最初の路上教習の教官は、仁美が初めて技能教習を受けたときの白田だった。
(今日はおじいちゃん先生だ)
仁美は心の内でつぶやく。
今までも何度も白田の教習を受けている。
(おじいちゃん先生の教え方はいつも丁寧でわかりやすいんだよねー)
最初の教習で白田が言った通り、みっちり教えてくれている。
今回から教習所から外に出るので、教習車には仮免許練習中と書かれた札が取り付けられている。
札の上部には急ブレーキ注意と書かれている。
もちろん初心者ですらない教習生が運転する車なので急ブレーキを踏んでしまうこともあるが、
教習車には助手席に教官用のブレーキがついており、緊急時には教官がブレーキを踏むこともあ
る。
あと、教習車にはドアミラーの上に教官用の助手席から見えるミラーもついている。
昔はフェンダーについていたりしたのだが。
さらに、教習車は改造車なので8ナンバーだ。
通常は5ナンバーや3ナンバーである。
ナンバープレートの地名の後についている3桁の番号、例えば品川●●●と書かれた500番台、300番台の番号のことだ。
教習車は800番台である。
通常の車に改造してブレーキやミラーを付けているからだ。
パトカーや覆面パトカーも改造車なので8ナンバーである。
なので、覆面パトカーらしい車を見分けるときにでも有用である。
まあ、普通に走っていて覆面パトカーを気にすることはないと思うのだが。
ちなみに5ナンバーと3ナンバーの違いは車幅だ。
単純に大きな車だと3ナンバーで、それ以外の軽自動車を除く車が5ナンバーと思ってもらえればいい。
ちなみに排気量は関係ない。
2000ccでも車幅が大きければ3ナンバーだし、小さければ5ナンバーだ。
まあ、普通大きな車になればそれだけ大きなエンジンを積んでいるので、3ナンバー車は排気量が大きいことが多いのだが。
教官の白田が仁美に挨拶する。
「はい、今日もよろしくお願いします。路上教習が始まるけど水島さんなら何も問題ないと思うけどね」
白田はこれまでの教習で仁美がとても優秀な生徒であることをよくわかっていた。
「こちらこそよろしくお願いします!」
おじいちゃん先生、と心の中で付け加える仁美。
実際に言葉にしたところで、白田は笑ってうなずいてくれるだろうが。
二人で教習車に乗り込む。
白田の指示に従い、教習所の出口に向かう。
「これから教習所の外にでるけど、路上教習は教習所内と違って周りの車や状況をよく見て運転する必要があるよ。まず、教習所の出口で止まって、車が来ていないのをよく見て道路に出てね」
「はい、わかりました」
仁美はうなずき、教習所出口で左右確認(確認は右左右)し、左から車が来ているのを確認した。
白田は黙って仁美の動作を見ている。
仁美は左から来る車が1台だけなのを確認し、右から車が来ていないのも確認、左から来た車が通過すると同時にもう一度さっと左右確認して、タイムラグなくすっと右折して道路にでた。
「やはり、さすが水島さんだね。初めて路上教習する場合多くの人があの状況だと、車が通り過ぎてからやっと左右確認して、それから道路に出るからもっとタイミング遅くなってしまうものなんだけどね。これもお父さんの車で教えてもらっていたのかい?」
白田には父和仁のハチロクの隣にずっと乗っていたことを話してある。
「そうです。よく父が運転しながら状況を説明してくれてました」
和仁のハチロクの助手席に乗っているときは、自分が運転するときを想像して和仁とともに左右確認を行い、このような場合はどうするこうするといった話を和仁に教えてもらっていたのだ。
仁美はそれぞれの状況に応じた運転というものをよく理解していた。
「これは今回もあまり説明することがないかな?」
「いえ!いつも教えていただいていることは大変勉強になります!」
仁美はお世辞ではなく本気でそう答えた。
和仁に教えてもらっていたといっても、所詮は素人であり本職の教習所の先生ではなかったので、やり方、考え方が違うこともあった。
しかしその根元は同じでいかに安全に運転するかということだった。
そして、仁美は教習所から出て次の信号で右折待ちをしていた。
右折待ちも対向車を見ながら歩行者の有無を確認する。
このとき、横断歩道近辺でなくもっと先から自転車も来ていないかどうか確認する。
自転車の場合、歩行者より速度速いのでいざ曲がろうとしたら横断歩道に進入していたということが多々あるからだ。
よく、右折で事故を起こす人はここの注意が足りてないことが多い。
自分の車の後方から来る自転車は特にだ。
首を振るくらいでは見えず、体ごと振り返って見るほどでないとそこまで確認できない。
運転席ではなく後部座席の窓から見える位置を確認するつもりで確認しないといけない。
これをやっていない人はとても多い。
さらに、右折する方向から走ってくる自転車にも注意が必要だ。
和仁がよく言っていたのだ。
「右折する方向から来る自転車がいきなり斜めに横断歩道を渡ろうとすることあるから気を付けて。右折するとき視覚的に同じところにいるように見えるから認知しにくいんだよ」
人は動いているものには意識が向くが、動いていないものには注意しないと意識が向かない。
車が右折する動きと自転車が向かってくる位置が視覚的に同じ位置になるので、認識しにくいのだ。
和仁はこのことでなんどもヒヤッとしたと言っていた。
対向車の後続車がいないことも確認したらすぐに右折にかかる。
「やはり、水島さんの運転はスムーズだねー。とても免許取りに来た人とは思えないよ」
「あはは。ありがとうございます」
仁美が苦笑いで答える。
何だかインチキをしているような気がしなくもないからだ。
その後も順調に街中を走る。
仮免を取るまでに車の操作方法を全く問題なく身に着けた仁美は、路上教習も初めてとは思えないほどだった。
それだけ、和仁のハチロクの助手席に乗っていた時に自分で運転するときのイメージをもって乗っていたということだ。
要はイメージトレーニングの量が尋常ではなかったのだ。
イメージでは父和仁と同じようにハチロクを運転できる。
それがあくまでイメージであり、ハチロクの運転がたやすくないことは後で思い知らされるのだが。
教習を終え白田が仁美に声をかける。
「水島さんなら何の問題もないと思うけど、この調子で頑張ってね」
「はい!」
好々爺の笑顔で言う白田に満面の笑顔で仁美が答える。
車のことで褒められることが何よりもうれしかった。
きっと、パパも同じようにほめてくれたと仁美は思った。
以降も同様に仁美の路上教習は順調に進んでいくのであった。
Appendix
安全運転について一家言ある筆者です。
作中にいろいろ書いていこうと思います。
あまりこちらにいろいろ書くと作中のネタとかぶってしまうので何を書こうか慎重になる今日この頃です。
私が免許を取ったころは教習車にフェンダーミラーがついていました。
フェンダーミラーとは読んで字のごとく、車のボンネット横、フェンダーについているミラーのことです。
もともとはドライバーからなるべく視点を動かさずに左右確認できるようフェンダーにつけられていたんですね。
しかし、いまや鏡のサイズが大きく電動で動かすことができるドアミラーが主流となっています。
フェンダーミラーはタクシーなどで見るくらいですね。
ドアミラーだと曇っても車内から拭けて便利ですし。
もちろん、今の技術だとフェンダーミラーでも電動化はできるでしょうが、それだと運転席インパネスイッチからの配線も長くなりますし、車を作る上でもデメリットしかありません。
まあ、フェンダーミラーは旧車やヒストリックカーの象徴の一つと言えるでしょう。
アンティークみたいなものだと思えばいいのかもしれませんね。
安全運転からフェンダーミラーまでいろいろ書き連ねるハチロクと少女、次回もよろしくお願い致します。
ハチロクまだ出てきませんね。
困ったものです。




