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ハチロクと少女  作者: 咲舞佳
13/20

13話 ハチロク初運転4

「よし、じゃあ行くね!」


「はい、がんばって!」


やっとバックで駐車場を出ることができた仁美がやる気を出し遥を見る。

遥は両手を握りしめてが応援する。


Nニュートラルに入れていたシフトレバーを1速へ入れる。


入りはしたがかなり抵抗があった。

バックギヤだけでなく、他のギヤのシンクロもへたっているのだった。


慎重に半クラッチを踏みながらアクセルをそーっと踏む。

バックするときとは違い、1速につないだらそのまま加速すればいいので、アクセルは断続的に踏まない。


しかし、ウォーン!というエンジン音とともにハチロクは進みだしたが、思った以上に回転数を上げすぎたため音に驚いた仁美はクラッチをそのままつないでしまう。


どこん!という音とともにがくん!というショックが二人に伝わる。

それでもなんとかエンストはせずにハチロクは発進する。


「あわわ」


「仁美、落ち着いて。大丈夫、他に車来てないから」


「う、うん」


慌てる仁美を落ち着かせる遥。


仁美と遥の住む住宅地は元別荘地であり、車で利用するのは住民ぐらいで車どおりは少ない。

練習するには問題ない立地だった。


そのままとろとろとゆっくり走っていたが、少し加速してクラッチを踏み2速に入れる。


今度はスッと入った。

半クラッチでつなぐもそれほどショックもなくシフトチェンジできた。


「やった!」


「ちゃんと2速に上げれたね!」


ただ2速に入れただけで二人して大喜びだ。

教習車では当たり前だった動作がハチロクではすべて大変な作業となる。


実はこのハチロクには3速クロスミッションが入っており、低回転数では回転差が少なくシフトチェンジがわりとしやすい。


クロスミッションとはギヤ比がクロスしている、言い換えるとそれぞれのギヤ比を近づけているものだ。

決して交差しているわけではない。

crossではなくcloseだ。


このメリットは簡単に言うと各ギヤの一番加速するところを使いやすいようにしたことだ。

ラリーなどの加減速が多い競技では必須のアイテムと言える。


ランエボやインプレッサがクロスミッションを採用しているのは有名な話だ。

しかし、デメリットもあり加速側に振っているので最高速が犠牲になることだ。


このため、ノーマルミッションをクロスミッションにする場合、1速から3速までをクロスにし、4,5速をノーマルのままにすることが多い。

なので、仁美の乗るハチロクも3速クロスミッションだ。


2速でT字路まで時速20Km程度で走る。

一時停止し、二人して左右確認をしっかりと行い再度1速で発進し左折する。


動き出しながらステアリングを切るので止まっているときほど重くはない。

バックの時いやというほどその重さを思い知らされたので、力いっぱいステアリングを切って曲がった。


うんしょ、うんしょとステアリングを切る仁美をじっと見る遥。

内心では必死な仁美可愛い、とか考えているのだが顔には出さない。


今度はさきほどよりはがくがくせずに発進できた。


「よし!」


「いいよ、その調子!」


ひとつできるごとに喜ぶ仁美に、その一つ一つを褒める遥。

競技選手とコーチみたいな二人だった。


そして住宅街のメイン通りである対向1車線の道路に出た。

この住宅地は500世帯入る大型住宅地でメイン通りを通る車もほぼ住民のみで通る車も限られている。

練習するには最適の道路といえる。

制限時速は40Kmだ。


3速に入れるためゆっくりと加速する。

そしてギヤを上げるためクラッチを踏み3速にギヤを入れようとしたが、全く入らない。

それこそ引っかかるとかはじかれるではなく、力を込めても全く入らないのだ。


「あれ?あれっ?」


仁美が何度か試していると後ろから車が来ていた。


「は、入らない!?」


3速のシンクロが1,2速よりもへたっていたのだ。

より慌てだす仁美にまたもや遥がフォローする。

仁美を落ち着かすためにわざとのんびりとした口調で話す。


「取り合えず4速に入れたらいいんじゃない?慌てなくても大丈夫だよ。後ろの車も同じ住宅地の人だし」


「う、うん、わかった」


Hパターンシフトなので3速の下は4速だ。

仁美がそのままシフトを4速に入れる。


3速に入らず回転数が落ちてしまっていたため、4速に入れて半クラでつなぐときタイヤとエンジンの回転数差でウォーン!と変速ショックが起き、二人とも前につんのめる。


(うーん、これはまた・・・)


仁美の手前口には出さないが、あまりの乗り心地の悪さに遥は胸の内でつぶやく。

足回りは固く小さな路面のギャップを拾い、軽量化のため防音材であるウレタンコートを剥いであるのでロードノイズも大きい。


そして、ギヤチェンジでこれほどがっくんがっくんしていれば、乗り物に弱い人は確実に酔ってしまうだろう。


しかし、思ってることとは違うことを遥は口にした。


「うーん、なんで3速入らなかったんだろうね?」


「たぶん、シンクロって部品が摩耗してるからってパパが言ってたと思う」


シンクロの説明をする仁美。

なるほど、とうなづく遥。


「とりあえず、またやってだめなら3速飛ばして4速使うしかないんじゃない?」


「うーん、そうだよねー」


遥の考えに仕方ないかー、と仁美がうなずく。


住宅地のメイン道路の突き当りに来て一時停止する。

後ろから来ていた車は先に右折しており、後ろに車はいない。


仁美が左右を確認して発進する。

仁美が発進に集中できるよう、遥もしっかりと左右確認する。


先ほど同様がくがくしながらもハチロクは左折した。

この大きな住宅街は道路が9の字になっており、このままぐるっと回ってメイン道路に再び出るようになっている。


しかも、元別荘地で丘の上につくられておりメイン道路突き当りから左折すると下っている。

逆に合流するときには上りになるのだ。


2速は他と比べスムーズにギヤチェンジできるのに、やっぱり3速にはギヤを入れることはできず、今度は先ほどよりはまだスムーズに4速に入れる。


4速で40Km程度しか出していないので、トルクはすっかすっかだ。

要はアクセル踏んでもなかなか加速しない。


まあ、制限時速以上出す気のない仁美だったのだが。

住宅街をぐるっと回り上りに差し掛かるハチロク。


4速では失速し始めたので、入らない3速を飛ばして仕方なく2速に入れる仁美。

ギヤは入りはしたのだが、4速から2速のため回転数が変わりすぎて半クラするもまたもやウォーン!と変速ショックでつんのめる二人。


そのまま上ってメイン道路のT字路に出た。

もちろん一時停止し、これから坂道発進となる。


幸いにも後ろに車はいない。

ギヤを1速に力を込めて入れる。


ゴっ!という音を立てて1速に入れる仁美。

うーん、という顔で見ている遥。


仁美はサイドブレーキをかけた。

それこそ、教習車ではサイドブレーキなしでも坂道発進ができた仁美だったが、ハチロクでは1速で発進するのもまともにできていないのでサイドブレーキを使って坂道発進をすることにしたのだ。


仁美は慎重に半クラッチを踏みながらアクセルをちょっとずつ踏み込んでいく。

ウォーー!と回転数を上げすぎ、慌ててクラッチを踏みアクセルを離す。


教習所ではできていた車が前に動き出すのを感じ取る余裕もない。

アクセルのコントロールが難しすぎるのだ。


今回遥は余計な口を出さず仁美を見守る。

こればかりはハチロクを知る仁美にしかわからない。


仁美は再度同じ動作にて発進を試みる。

すぐに回転数が上がってしまうので、上がりすぎないうちに発進してしまおうと半クラを踏みながらサイドブレーキを降ろす。


途端に、がくん!とエンストしてしまった。


「ドンマイだよ。次々いこう」


遥が励ます。


「うん。分かった」


仁美は全く気落ちしてなかった。

いろいろ慌てはしたがやる気には満ちている仁美だった。


周りに車もおらず、しっかり落ちついてクラッチとアクセルに集中する。

今度はアクセルを先に踏み、ウォー!と回転数が高くなるのを気にせずにそのまま半クラッチにするため慎重に踏みつけているクラッチを緩め始める。


今度はハチロクが前に動き出しそうになるのを感じ取ることができた。

これでどう!?っとサイドブレーキを降ろす仁美。


ハチロクはジャジャジャっ!と音を立てながら発進し、仁美は音に驚き慌ててステアリングを切って右折した。

回転数が高すぎ、砂利でリヤがホイールスピンを起こしてしまったようだ。


「わわわっ!」


今まで落ち着いていた遥もさすがに慌てた。

仁美は心臓がバクバクしている。


メイン道路だったので道幅が広く、車も来ていなかったので何事もなかったが道幅が狭かったら曲がり切れていなかっただろう。


「と、とりあえず、家まで戻るね」


「う、うん」


二人してあわあわしながら家に戻るのであった。



Appendix



うーん、自分で書いておいてなんですが散々な初運転でしたね。苦笑


昔のことを思い出しながら書いているんですが、そういえば半クラッチの感覚ってどんなだったけ?と思い、ハチロクに乗って十年以上ぶりに半クラでギヤを変えてみました。


今では回転数を合わすことが当たり前になっていて、半クラッチは全くと言っていいほど使ってないんですよね。


それこそ、信号待ちで止まるときにはフォン、フォン、フォーンとずごずごシフトを落としていきますので。


マシンガンシフトっていうんですかね?

マシンガンっていうほど速くはないんですけどね?


まあ、半クラしてたら無理なんですよ。

サーキットで速く走るための当たり前の技術ですからね。


ヒールアンドトゥですね。

これも作中で詳しく書きます。


あと、これも作中で書きましたようにやろうと思えばクラッチ踏まずにシフトチェンジもできます。

なので、久しぶりに半クラッチしてみたわけですよ。


そうしたら、意外に変速ショックが少なくて。

作中にも書きました通り、ああ、クロスミッションでギヤ比が近いからだ、と改めて認識して文章にした次第です。


まあ、サーキットで高回転でぶん回しているときに半クラすると違うと思うんですが、サーキットでそんなことはしないですしね。


長いこと乗っていてもまだ新たな発見がある、それがハチロクなわけですよ。

深いですねー、面白いですねー。


某映画評論家風ですかね?自分で言っててなんですけど。

すいません、若い人にはわかりませんよね。(苦笑)


ちなみにエアコンない車に真夏日に乗るものじゃありませんね。

熱射病まっしぐらです。


車の作業も朝と夕にしています。

先日はブレーキパッド交換しました。


おっと、詳しく書くと作中のネタがなくなってしまうので大事にとっておきますね。

楽しみにお待ちください。


次回はだめだめな運転だった内容を考察します。

さすが大学生の主人公たちですよね。


楽しみにお待ちください。


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