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6-3 斗鉤兄妹



 リミックスのBGMが大音量で流れるダンスホールには、洒落た服を着こなしたノリノリの若者たちが集まっている。ホール照明から放射された色とりどりのレーザーライトが、会場内をせわしなく照らし、光と音の演出に酔いしれた人々は、ダンスと熱狂を繰り広げている。会場のテンションに持ち上げられ、曲をかけているDJも、すでにトランス状態である。


 ダンスホールから漂う人々の熱気はすさまじい。冬なのに冷房がかかっている理由は、そのせいだろう。フロアの隅には、ソファーテーブル席がいくつも設置されており、そこで優雅にカ、クテルグラスを手にして談笑している者たちもいる。


 タバコと酒。そして香水。

 様々な匂いが充満しているそこは、完全に大人の世界だった。


「こりゃあ……すげえな」


 制服から着替え、私服姿に着替えてきたトウゴとサキは、フロアの盛り上がりに圧倒されてしまっている。


 そんな2人の背後から、がたいの良い、筋肉質の男が近づいてきた。刈り上げの黒髪。真紅のシャツを着た青年である。馴れ馴れしく、トウゴとサキの肩に手をおいて話しかけてきた。そうでもしないと、周りがうるさすぎて声が聞こえなかっただろう。


「どうよ! これで君らも、大人社会へ堂々デビューを決めたわけだ!」


「わりぃな、兄貴。こんなこと頼んじまってよ」


「良いってことよ、マイブラザー!」


 峰御(みねお)トウゴの兄、峰御(みねお)ユウトは、得意気に胸を張って答えた。


「この店の受付マンは、高校時代の俺の同級だ。昔は一緒に悪さしてた仲間でな。お前たち高校生を、2人くらいこっそり入店させてもらう交渉なんざ、わけないってね!」


 言いながらユウトは、トウゴの肩をバンバンと叩いてくる。力の加減を知らない兄のスキンシップに、トウゴは思わず咳き込んでしまう。そんなトウゴの反応など気にした様子もなく、ユウトは腕を組んで、しみじみと感動しているようだった。


「それよりも弟よ。俺は嬉しく思ってるんだぞー。なんせ、酒もタバコもやらない真面目くんの弟が、いきなり“ナイトクラブに潜入したい”なんて言い出してきたんだからなー。まったく、俺のコネがある店でラッキーだったじゃないかよ。夜の帝王である、このお兄様に感謝するんだぞー。がははは」


 トウゴはユウトの手を振り払って言った。


「調子にのんなよ、不良兄貴! 酒もタバコも、俺はまだやって良い歳じゃねえんだよ! 兄貴みたいに、中学からアルコール中毒みたいになりたかねーっつの!」


「はっは。文字通りの()()()だったからなー。でもお前も、そういうのに興味あったから、今夜この店へ入りたかったんだろ?」


「ちっげーよ! 兄貴と一緒にすんなって!」


「ん? ならなんで、こんな店に来たがったんだよ?」


「そ、それは……!」


 トウゴは、思わず語尾を濁してしまう。


 行方不明の友人の行方を探し、廃墟ホテルで見かけた、何か知っていそうな怪しい女を追跡していると、正直には言えない。世界の真実や、アトラスのことを知らないユウトに説明したところで、理解できないし、意味不明な状況でしかないからだ。


 ユウトは肩をすくめ、やれやれと首を左右へ振った。


「まったく、弟よ。欲望と好奇心に素直になれって。お前の真意など、この兄にはわかっているんだぞ。そもそもお前は、せっかく女にモテる顔したスポーツマンとして生まれたくせに、頭の中がそんなに硬派なんじゃ、本来ならヤレるはずのものも、ヤレんぞ。その調子じゃ、お前、まだ童貞だろ?」


「う、うっせー! 関係あんのかよ、ほっとけ!」


 図星を突かれ、たじろいでいる弟を見ながら、ユウトはニヤける。


「まあまあ。そんな弟くんも、今日は彼女が同伴(どうはん)みたいだし。チャンス到来(とうらい)かー?」


「か、彼女じゃねえし!」 「彼女じゃありません!」


 トウゴとサキの声がかぶった。

 2人は顔を見合わせ、思わず顔を赤くしてしまう。


「まあ、何でもいいや。お兄様は適当にその辺で酒飲んでるから、若い2人は、よろしく楽しくやっててくれよ。んじゃあなー」


 ユウトは2人の相手をするのに飽きたのか、早々に手を振り、その場を退散していく。バーカウンターの方へ吸い寄せられるように歩いて行き、そこにいたスタイル抜群の美女に声をかけ始めている様子だった。


「ったく。ナンパしに行きたいだけじゃねえかよ」


 しょうもない兄の背を見送った後、トウゴは気まずそうに、サキの方をチラ見した。

 唇を尖らせながら、念のために言っておいた。


「そ、その……兄貴の言ってたことは気にしなくて良いからな……!」


「べべ、別に、気にしてなんかないわ……!」


 赤面しているサキも、気まずそうに答えた。

 お互い、変に沈黙してしまうのが嫌で、サキは無理にでも話題を変える。


「え、えっと……ユウトさんって、トウゴの兄弟とは思えない、フランクな感じの人よね」


「おお。血が繋がってると思えねえ。腹違いだって言われたら信じるレベルだぜ」


 トウゴは苦笑した。


「俺が言うのも何だが、兄貴は頭がクソ悪いくせに、何でも前向きに(とら)えちまうポジティブモンスターでよ。メンタルが強いし、見ての通りマッチョで力が強いから、特殊部隊選抜候補に入るくらいには優秀な自衛官らしい。まあ、酒と女には、とんでもなくだらしない、素行不良(そこうふりょう)な兄貴だけどよ。まさか、こうして役に立つ日が来るとは思ってなかったぜ……」


「たしかに未成年の私たちじゃ、この店に入るのなんて、まず無理だったわよね。ユウトさん、池袋の夜の店は常連(じょうれん)だって言うし、運が良かったとは、このことね」


「それよか、早くあの女を探さねえと。たぶんもう、ここへ来てんだろ」


 池袋のラムレッド。

 インターネットで検索してヒットしたのは、このナイトクラブしかなかった。

 廃墟ホテルに来た和服の女が、電話で話していたのは、おそらくこの店の名前である。


「あの子が言ってた21時まで、あと10分。集合って言ってたし、たぶん仲間がいて、今頃はもう、ここに集まってるんじゃないかしら」


「だろうな。こうやって、無理して年齢入場制限のある店へ潜り込んでんだ。アデルやイリア、それに雨宮の行方について、何かわかりゃあ良いんだが……」


「うーん。あの子、見た印象で言うと、なんかダンスホールで踊りまくる陽キャって感じには見えなかったし。そうすると、フロア(すみ)の、どっかテーブル席にいるんじゃないかしら」


「まあ、廃墟ホテルに比べりゃ、歩いて見て回れる広さだ。(はし)からローラー作戦で探してみるか」


「そうね」


 サキとトウゴは、フロア内を(すみ)から見て回ることにした。


 カラフルなネオン管の光で(いろど)られたバーカウンター。見たこともない色の液体が注がれたカクテルグラスを手に、それを美味しそうに飲み干す若い男女。ダンスバトルを繰り広げている様子の、ノリノリな外人の男たち。普段の高校生活では、まったく見かけることのない異質な景色である。サキとトウゴは、博物館の興味深い展示を見るような心境で、フロア内をキョロキョロとしてしまう。


 トウゴが、行き先にあった、テーブル席の1つを指さして言った。


「いたぞ! あれ、あの和服女じゃねえか!?」


 そこは3人の少年少女が、向かい合って腰掛けているテーブルである。


 1人はたしかに、あの和服姿の少女である。七三分けの謎の男と廃墟ホテルに現れ、アデルの行方について、何やら話をしていた。あの時とは異なり、少女は白布に包んだ長尺(ちょうじゃく)の棒を、ソファの横に立てかけて置いている。その包みの中が何なのかは、よくわからない。愛想笑いも浮かべていない、無表情である。


 そんな少女と向かい合う席、新顔の2人の少年少女が座っている。


 2人の顔立ちは、よく似ていた。双子だろうか。両者共に、染め上げた金髪で、両耳はピアスだらけである。少年も、少女も、性格の悪さが目付きに出ていた。ロングレザーコートを着込んだ少年と、派手なゴールドジャケットを羽織った少女である。相対している和服の少女とは異なり、2人共、ニヤニヤと微笑んでいた。


 サキとトウゴは、3人の様子が観察できるテーブル席に腰を下ろす。

 遠巻きに様子を見ながら、トウゴが怪訝な顔で言った。


「何なんだ、アイツら……? 辛気くさそうな日本人形みたいな女と、いかにも不良っぽい双子ってところか? 普通の友達って感じには見えねえが……いったいどういう関係なんだ?」


「ホント何なのかしらね。もっと言うと、私たちと同じ歳くらいなのに、どうやってこの店へ入ってきたのかしら?」


「そりゃあ、俺たちみたいに、コネでもあったんじゃねえのか? 未成年なのに入店できねえだろ、普通。あのガラの悪い2人組は見た目で、もしかしたら成人なのかもしれねえが、あの和服の子が成人って言い張るのは、ちょっと無理あんだろ」


「でも見た感じ、周囲に同伴者の大人はいないみたいね」


「まあ、俺たちだって今は、兄貴が一緒にいるわけじゃねえけどな……」


 3人組の席は、トウゴたちの席から3席分くらい離れた位置である。ダンスホールの激しいBGMが騒々しいこのフロアでは、至近距離でなければ会話をすることも難しい。これだけ距離があっては、会話を盗み聞くことは不可能である。


「ったく! 情報得るために来たってのに、周りの音楽がうるさすぎて、こんなんじゃ隣の席にでもいかないと、アイツらの話し声すら聞こえねえぞ!」


「フフフ。そんなの、ここへ来る前から予想済み。そして想定済みの状況ね」


「おお! なんか作戦があんのか、吉見!」


「こんな時のために、秘密のアイテムを持ってきてるのよ」


「秘密のアイテムだあ?」


 サキはポシェットの中から、豆粒のように小さい、小型の黒い機械を取り出した。

 それを()まみ、トウゴへ見せつけるようにかざした。


「ててててん! イリアから(もら)った盗聴器(とうちょうき)ー!」


「ドラえもんが道具出すみたいなノリかよ!」


「ふふーん。無人都市へ潜入する時に、イリアが筋者(すじもの)の人たちから、色々と違法なものを買い付けてきたでしょ? その中にあったのよ。あなたたちは銃器にばかり目がいってたけど、ガジェット好きな私的には、こういうのの方が興味あったのよね」


 サキはそれを、トウゴに手渡してきた。


「というわけで! トウゴ、早速これをアイツらの席へ仕掛けてきて!」


「はあ?! 俺が仕掛けてくんの?!」


「私は頭脳担当! あなたは体を張る担当でしょ! 私はここで撮影準備してるから、トウゴが盗聴器しかけてきてよ。さりげなく近づいて、サクッとアイツらのテーブル近くに、これを転がしてくれば良いだけだから。簡単よね!」


「撮影すんのかよ……! そして相変わらず理不尽、パワハラ部長か……!」


 受け取った盗聴器を握りしめ、トウゴは歯を食いしばった。

 ハンディカムを取り出して、周囲の明るさに合わせて露出調整を始めるサキ。こうなるともう、トウゴの話しなど耳に入ってないだろう。諦めてトウゴは、怪しい3人組が座っているテーブルへ歩み寄って行った。


「テーブルの近くに転がすって言っても、この盗聴器、見た感じマイクの向きとかあるぞ。適当に放り投げて置いたら、マイクの向きによっては音拾えないかもしれねえよな……。ああもう! 仕掛けるって、どうすりゃ良いんだよ……!」


 トウゴは頭を掻きむしる。

 言ってる傍から、3人組のテーブルはすぐ近くまで迫ってきていた。

 思いついたのは、コケたふりをして、そのどさくさでテーブルの下に置く作戦だ。


「おおーーーっとー。足がからみついて、コケちまったみたいだーー!」


 トウゴは腰をくねらせ、わざとらしいナレーションと共に3人組のテーブル横で転げた。

 いきなり転がり込んできたトウゴに、3人組は不快そうな顔をしている。


「さすがトウゴ! とんでもなく、わざとらしい上に、ナレーションの日本語もメチャクチャ! やっぱりバカなのね……!」


 サキは一部始終をハンディカムで撮影しながら、険しい顔で固唾(かたず)を呑む。


 3人の注目を浴びながらも、トウゴはテーブル下の死角へ腕を伸ばし、さりげなく盗聴器を設置する。わざとらしく起き上がり、「すいませんでした」と謝罪してからその場を後にする。


『……何なんだ、今の野郎は?』


『さあ。酔っ払いか何かでしょ。別に、気にしなくて良いんじゃない?』


 サキが耳に付けたイヤフォンから、双子の会話が聞こえてきた。

 どうやら盗聴器の設置には成功したようである。


「でかしたわ、トウゴ……!」


 怪しまれないよう、遠回りをしてテーブルへ戻ってくるトウゴ。

 サキは親指を立てて、笑顔を見せた。




 ◇◇◇




 ロングのレザーコートを羽織った少年は、先ほどから電話をしていた。

 そのこめかみには、青筋を浮かべて苛立っている。


「あー、くだらねえなあ」


 スマートフォンの受話口に向ける声が、露骨(ろこつ)(あら)げられた。


「社会の底辺が1人死んだだけだろ? んなことで、いちいち俺様に電話してくんじゃねえよ、カス護士!」


 通話相手の男は、少年の横柄(おうへい)な態度に困って応答する。


『そ、そうは言われましても。検察から刑事裁判と、被害者遺族から民事裁判を起こされている状況でして。こちらも対応を協議しなければならないので、是非とも面談に来ていただきたいのです。斗鉤(とかぎ)家の専属弁護士として、お父上から、坊ちゃんの弁護を任されている身としてはですね――』


「うっせーなあ。そもそも、あの小学生のガキが、俺様の運転する車の前にいたのが悪いんだろ? 野良犬みたいに()かれやがって。車が汚れただろうが。こっちが文句を言いてえくらいだっつの。そのくせ勝手に死んで、遺族が裁判だあ? ガキの方が悪いに決まってんじゃねえかよ」


『しかしこちら側にも、無免許で飲酒運転をしていたという、否定するのは難しい証拠が挙げられていまして……苦境なのです』


「なら、検察にも遺族にも、どっちにも大金を積んでやりゃ良いだろが。うちは“帝国”の後援を得てる天下の“斗鉤(とかぎ)家”だ。どうしてもってんなら、貴族様に頼んで、連中の“支配権限(しはいけんげん)”で遺族を黙らせることだってできんだろが。財力とコネを使えば、こんな小さい事故なんざ、楽勝でもみ消せるってのに、何を手間取ってやがんだあ? あ? 無能かよ、てめえ」


 少年はソファの背もたれによりかかり、ふんぞり返る。

 そうして続けた。


「たしか前にもあったろー? こういう事故。雑魚メンタルの同級生を、ちょーっとからかってやった時だ。ゴキブリ食わせてやったくらいで、すーぐに自殺しちまいやがってよ。底辺生まれは根性がなくて情けねえよな。けど所詮(しょせん)は底辺の家系。クズガキが1人死んだところで、家族に金渡せば解決だったろうが? あん時と同じ、全員が口を閉じたくなるくらいに金をやれば良いんだよ」


 弁護士は、まだ何かを言おうとしていたが、少年は構わず電話を切る。

 スマートフォンをテーブルの上に投げ出すと、ニヤニヤと笑んで肩をすくめた。


「まったく良い時代に生まれたもんだぜ。法律だのルールだの、世の中の大半の連中は、そういうのを、小鳥みたいにピーチクパーチクと小煩(こうるさ)くさえずるが、何のことはない。金さえ持っていりゃあ、ルールなんてもんは無視できるじゃねえか。どんなに悲惨な暴力の被害者だろうが、どんなに不幸な事故の遺族だろうが、大金さえ積んでやれば、たちまち、どいつもダンマリ。以後は死んだヤツのことなんて、誰も口にしてこなくなるんだから、笑えるぜ。金もらえるなら、死んでくれてラッキーくらいに思ってんじゃねえのか? 結局、人の命は“金と釣り合う”ってことだろ、なあ?」


 和服の少女は、無表情で話しを聞いていた。

 だが少年の意見に何か言うことはなく、簡潔に尋ねるだけである。


「それで、電話の用件は済んだ?」


「チッ。感想無しかよ。まったく、相変わらず面白くもねえ女だな、ユエ」


 少年は、和服の少女のことを“ユエ”と呼んだ。

 呼ばれた少女は変わらぬ無表情で、相対する席の少年少女へ語りかける。


斗鉤(とかぎ)ダイキさん、斗鉤(とかぎ)ミホシさん。今夜は来てくれてありがとう」


 斗鉤(とかぎ)兄妹。

 2人共、性格と素行(そこう)(いちじる)しい問題を持っている未成年だ。

 黙ってネイルの手入れをしていたミホシが、唇を開いた。


「兄さんの話しとか、挨拶とか、別に全部どうでも良いしー。それよか、早く用件言ってくんなーい? あたし、明日は3番目のカレぴっぴとデートだから。暇じゃないんだけどー」


 ネイルの手入れに夢中で、ミホシは2人を見向きもしない。

 ダイキとユエの話しには、心底、興味などなさそうだった。

 そんな妹の態度は気にせず、ダイキは身を乗り出して、ユエに尋ねた。


「今日は四条院さんに会ってきたんだろ、ユエ? 何て言ってた?」


「――――()()()と言われたわ」


 言葉短いユエの返事を聞いて、ネイルを手入れするミホシの手が止まる。

 兄妹はニタリと、不吉な笑みを浮かべてユエに尋ねた。


「良いじゃねえか! やっと“合図”がきたわけか! ようやくだぜ!」


「こっちは準備万端だったのに、待ちくたびれてたーって感じー」


 ダイキはガッツポーズを取り、ユエは足を組んで不敵に笑む。

 待ち()びた瞬間がようやく訪れた。

 2人の態度は、そう言った喜びに溢れているように見える。


「あれやるの、ストレス発散になるのよねー。腕が鳴っちゃうな-」


「んで? 今回はいつ、どこでやるよ?」


 はやる気持ちを抑えきれないのだろう。

 ダイキは上機嫌でそれを尋ねる。

 ユエはまた、言葉短く答えた。


「……()()。今から」


 それを聞いたダイキとミホシは、唖然としてしまった。

 だがダイキは膝を叩き、ゲラゲラと笑い始めた。


「ギャハハハハハ! なるほどね! だから、こんなしけた店へ呼び出したってのかよ!」


 笑い転げるダイキに構わず、ユエは淡々と続けた。


「裏口の方に、すでに必要なものは用意してある。後は始めるだけ。今回は、この子たちに“なりすまして”もらう」


 そう言うと、ユエはスマートフォンを取り出し、そこに人の顔写真を表示させる。

 2人の人物の顔写真を見せた後、テーブル席を立つ。

 ダイキとミホシへ、無表情で告げた。


「ついてきて」


 ニヤけた斗鉤兄妹は、ユエの後に続いて、店の裏口の方へ姿を消した。




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