4-8 リーゼ・ベレッタ
空き地でワゴン車を乗り捨てると、そこからケイたちは、徒歩と電車で移動を始めた。
葉山サトミを名乗る女性に連れられ、都内を移動すること1時間ほどである。辿り着いたのは、東京湾に面した埠頭である。道のりの途中、色とりどりの貨物コンテナが山積みにされているのを眺めていたケイたちだったが、先頭を歩いていた葉山が、唐突に足を止める。目の前に現れたのは、大きな長方形のコンテナの1つだ。
「ここです」
葉山は扉に取り付けられた南京錠を外し、開ける。
コンテナの内部には電気が引かれているようで、扉開けてすぐに、天井の電灯が灯った。照らし出されたのは、作業台やPCデスクである。大量の写真や資料をピン止めした、大きなコルクボードなども見られた。まるで捜査本部と言った雰囲気である。
ケイとイリアを中へ案内し、葉山はコンテナの扉を閉じた。
感心した様子のイリアは、室内を見渡し、感想を口にする。
「センスが良いね。これはちょっとした秘密基地みたいだ」
「コンテナ貨物の中に拠点を構築しました。このままトラックで牽引して運んでもらえば、設置場所も変えられます。移動式の、簡易アジトと言ったところですかね」
「面白いアイディアだ。ただまあ、トイレは無いみたいだけど?」
「そ、それは……!」
指摘された葉山は、ゴニョゴニョと小声で言い訳する。
「うう。鋭いですね。このアジトを作った時は、そこまで考えてませんでした。まあ、その。簡易トイレがあるので……やり方は察してください……」
少し恥ずかしそうに、葉山は答えた。
見た目だけで言えば、サバサバしていそうなクールビューティーだが、性格には抜けているところがある様子だ。ちょっと、おっちょこちょいかもしれない。
イリアは図々しく、手近な椅子を引っ張り出して腰掛けた。
皮肉っぽく肩をすくめ、葉山の顔を窺いながら問う。
「さて。葉山サトミさん、だったかな? ボクの記憶が確かなら、あなたは昨日、ファッションモデル雑誌のフローランス社員として、アデルとの打ち合わせに同席していた。ただのスカウトマン助手と思いきや、その正体は、内閣情報捜査局で働く捜査官だって? コードネームは“コトリ”。たしかそう名乗ったよね?」
「はい。そう言うあなたたちは、私に接触するため、雨宮アデルさんを餌に誘き出そうとしていましたよね? ちょうど私は、フローランスに潜入捜査を仕掛けているところでした。ついでだったので、その誘いに敢えて乗り、顔見せしたんです」
「へえ。こちらの思惑は見破られていたわけか。しかも、ボクや雨宮くんの素性を知っているだけでなく、アデルとの繋がりまで知られているとなると、これはなかなかに事情通と見るべきかな?」
「一応、私は情報戦を職業にしている、公務員ですから」
なぜか誇らしげに「公務員」の部分だけ強調して言う葉山。
その理由は、ちょっとよくわからない。
葉山とイリアの会話を聞いていたケイだったが、あまり聞いたことのない組織名を耳にして、眉を寄せていた。一応、敬語で葉山へ尋ねてみる。
「あの……。内閣情報捜査局と言うのは、どういう組織なんですか?」
「そうですね。簡単に言えば、公安調査庁と、警視庁を足して2で割ったような組織ですよ」
ケイたちにもわかりやすいよう、葉山は言葉を選んで話し始めた。
「諜報と捜査。2つの機能を持った特殊な組織です。発足した当初は、思想警察だー、なんてメディアに叩かれてましたが、そんな乱暴なことはしてません。まあ、ザックリと言えば、政治的理由や外交的理由で、公表できないような凶悪事件を扱い、それを秘密裏に解決する仕事をしています。私たちの仕事は世間に知られないようにされていますから、認知度が低いのは当然でしょうね」
それを聞いたケイは、コルクボードに貼られた写真の数々を横目にして言った。
「なるほど。じゃあ、そこの写真に映っているのは、葉山さんが追っている事件の関係者。世間には公表できないような、凶悪事件を起こしてる容疑者連中ってところですかね?」
「……なかなか鋭いですね」
写真に写っている人物は複数だ。中には昨日、アデルの取材に来ていた、フローランスのスカウトマンの顔も見られる。おそらく、それら写真の人物の多くは、何か大きな事件の“関係者”に過ぎないのだろう。写真の数々に刺さったピン同士は、手芸用の糸で結びつけられており、その糸が集中しているのは、ある1枚の写真だけである。
そこに映っているのは、大人の男だった。
オールバックにした黒髪。整えられた口髭。高価そうなタキシードを着ており、黄金のタイピンや指輪など、数々の宝石を身につけている。洒落た格好をしていた。年齢は中年くらいだろう。美形であり、スラリとした長身のシルエットは、モデルのように決まっていた。いかにも裕福そうで、ダンディーな印象である。
それが重要人物であるのだと、ケイはすでに勘づいている様子だった。
ケイの視線から察した葉山は、険しい顔で、その名を口にする。
「その男こそが――――“淫乱卿”です」
「淫乱卿……?」
ケイは口に出して言ってみる。
それは、何とも不可思議な呼び名だった。
「まずはお互いに、情報交換が必要なようですね」
葉山は真剣な表情になり、本題へ入ることにした。
◇◇◇
「最初に私から質問ですが、教えてください。先ほど、学校にやって来ていた仮面の連中の姿を、あなたたち2人は認識できているようでした。つまり知覚制限が取り払われている状態だと推察しているのですけど、合ってますかね? だとしたら、それはなぜですか?」
尋ねられたケイとイリアは、顔を見合わせてから答えた。
「それはもちろん、佐渡先生のおかげですけど……?」
「変なことを聞いてくるね。葉山さんだって、ボクたちと同じで知覚制限から解放されているんだろう? なら、佐渡先生から“無死の赤花”を譲り受けて、今も毎晩、眠る前に服毒自殺をしているんじゃないのかい?」
ケイたちは偽装フィルタをアトラスから与えられたことで、すでに服毒自殺する手間からは解放されている。だがアトラスに会ったことのないサトミは、いまだにその手順を守っているはずだろう。
しかしケイたちの予想に反して、サトミは怪訝な顔をしていた。
「無死の赤花に、服毒自殺……? いったい何の話しをされてるんでしょうか」
言われていることに、まるで心当たりがない。
サトミは、そんな態度だった。
違和感を感じたケイは、怪訝に尋ねた。
「それを知らないのに……葉山さんは知覚制限が外れてるんですか? なら、これまでずっと、異常存在に命を狙われてますよね? この世界について知りすぎた者は、異常存在の攻撃対象にされてしまう。まさか毎日、刺客を返り討ちにしているとかですか?」
「……何のことですか? 異常存在の存在については知っていますが、知りすぎた者が攻撃されるのだと、そう言ってますか?」
どうにも、話しが噛み合わない。
知覚制限が外れた人間は、眠るたびにEDENのネットワークによって検知され、異常存在に命を狙われるはずなのだ。佐渡もそうであったし、ケイたちもそうであったから、アトラスに出会うため、命懸けで無人都市の攻略に挑んだのである。それなのに、葉山だけは例外だったとでも言うのか。まるでそんな事情を知らない様子である。
3人は不思議そうに、互いの顔を見合わせてしまう。
イリアはふと、佐渡とサトミの通話履歴について思い出していた。お互いに、当たり障りない会話をするだけで、安否確認のやり取りしかしていなかった。あれは盗聴の可能性などを恐れ、真王側に聞かれてはまずい話しを、敢えてお互いに避けていたのだとばかり思っていた。だが、そうではなかったのかもしれない。
真実は、もっと単純な理由だったのではないだろうか。
「もしかしてだが……葉山さんと佐渡先生は、お互いが知覚制限から解放されていたことを、お互いに知らなかったんじゃないのかい?」
イリアに言われた葉山は、驚いた顔をする。
「待ってください! じゃあ、佐渡先生も、あなたたちのように知覚制限が外れていたのですか?!」
イリアの推測通り、葉山は、仲間である佐渡の事情すら、何も知らなかったようだ。佐渡は自分の状況を知らせず、同様に葉山も、自分の状況を相手に教えていなかったのだ。奇妙なすれ違いである。
素直な驚きを見せている葉山の様子を見て、ケイは、佐渡についてのことを説明してやった。
無死の赤花のこと。毎晩の服毒自殺のこと。無人都市へ行ったことや、アトラスのこと。
一通りの話しを聞いていたサトミは、しきりに感心して、驚いている様子だった。そして最後に意気消沈し、悲しそうに俯いてしまう。
「……そうでしたか。佐渡先生は、5年も前から……。私よりもずっと以前から、この世界の真相に気が付いていたんですね。そして独自に、生き延びる方法まで編み出していた。やはり、非常に頭が良い方です。もうお亡くなりになってしまったことが、残念でなりませんよ」
「ええ……。最期は、異常存在に襲われて殺されました。死体は、診療所の傍に、オレたちで埋めたんです」
「どうりで最近は、連絡が取れなくなっていたわけです。あなたたちも、大変でしたね……」
佐渡の死を初めて聞かされ、ショックが大きかったのだろう。
葉山は肩を落とし、僅かに涙ぐんでいる。
その気持ちに寄り添っている暇はなく、イリアは話しの続きを促した。
「それで? ボクたちのことは話した。今度はそちらの番だろう?」
「そうですね…………」
葉山は悲しみを噛み殺すように、唇を固く引き結んだ。
そうして気を取り直し、ケイとイリアを見やる。
「ご存じの通り。私は過去、佐渡先生たちと一緒に、CICADA3301暗号の解読に挑んだチームの一員です。佐渡先生と、雨宮くんのお父さん。お2人と一緒に富士の樹海へ行き、赤い花を見つけたメンバーの1人でもあります」
ケイの父親が、樹海でアデルを発見した時。
一緒に、その場で立ち会ったメンバーということになる。
「3人とも、樹海へ行った目的は様々でした。佐渡先生は、知的好奇心の探究。雨宮さんは、特ダネ目的。そして私の場合は――“捜査目的”でした」
「捜査目的、ですか?」
葉山は席を立ち上がり、コルクボードの前をウロウロと歩き始めて話す。
「事の発端は、うちの組織の同僚が、暇つぶしでCICADA3301暗号の解読に挑戦したことがきっかけでした。あの暗号は、解き方を間違えると、正解とは全く別の“偽の答え”が出てくるようになっていて、佐渡先生以外の人たちは、だいたいがこのフェイクの方に引っかかっていました。私の同僚もフェイクの方に引っかかっていたのですが……出てきた偽の答えの中に、ちょっと見過ごせない情報が現れたんです」
「ほう。見過ごせない情報と言うのは?」
「世界各地で起きた、子供の失踪事件。その“失踪者名簿”です」
葉山は立ち止まり、再びケイとイリアに向き直って言った。
「ただの名簿じゃありません。新聞やテレビで公開されていない、未公表の失踪者の名前もありました。失踪者として登録されていない人物の名前も数多くあり、とても不気味でした……。その情報を得てからと言うもの、内閣情報捜査局の捜査が始まったんです。CICADA3301暗号を発信している何者かは、これらの失踪事件について関わっている可能性があると考えられました。私は暗号発信者の正体を突き止めるために、佐渡先生たちの協力を得て、公務で暗号解読に挑んでいたんですよ」
「なるほど。じゃあ、葉山さんは、仕事で親父たちに付き合ってたんですね」
「はい。公務員ですから!」
「さっきから何で公務員を強調するんだい……あまり関係ない気がするんだけど」
「公務員は常に、仕事をサボっていないことをアピールしなければならないのです」
「……」
葉山の拘りは、よくわからなかった。
とりあえず、公務員アピールは、葉山の発作か何かなのだと思うことにした。
「佐渡先生たちと樹海に行った日から、しばらくしてのことでした。急に副局長に呼び出されて、CICADA3301暗号の捜査打ち切りが通達されたんです。理由は“機密情報”ということで、教えてもらえませんでした。のっぴきならない理由で、説明無しに上層部が捜査を打ち切ることは、それなりにあることです。けれど私は気になって、ちょっと個人的にその理由を調べたんです。どうやら、捜査を打ち切るように内閣情報捜査局へ圧力をかけてきた、組織外の“有力者”がいることを突き止めたんですよ」
「フム。有力者とは?」
「四条院コウスケ――――」
その名を聞いたイリアは、途端に驚愕する。
ケイには、誰のことなのかよくわからなかった。
「誰ですか、それは?」
「……“四条院財閥”の主さ」
答えたのは葉山ではなく、イリアの方だった。
珍しく、イリアの顔色が悪い。苦々しい口調で、ケイに教えてくれた。
「この世界には、70億人に近い人間が生きていると言われている。そのうちの40億人分の財産。つまり地球上の富の半分以上を、たった66人の大金持ちが所有しているのが、今の社会の現実だと言われているんだ。それは事実だ。彼等の1人1人が、小さな国家をまるごと買い取ることも容易いほどの、莫大な財産を有している。常識を外れた大金持ちたちだ。四条院コウスケは、その内の1人。四条院財閥を実質的に所有している、四条院一族の長だよ」
「そんな巨大財閥があるのか」
「ああ。四条院財閥の名を、一般人が見聞きする機会は少ないだろうね。なにせ、基本的には投資家たちを操り、彼等の“投機”によって富を得ている財閥だ。マネーゲームで金を増やすのが仕事であって、何かを生産したりするような実業など行っていない。だがその財力は、各国の政治や経済に多大な影響を及ぼすほどの力を有している。その主である四条院コウスケの名は、社交界に通じる者なら誰でも知っていて、そして同時に、誰も知らない男なんだ」
「誰でも知っていて、誰も知らない……?」
「誰も会ったことがないのさ。顔写真もなく、メディアの前には一切、姿を見せていない。実際に会ったことがあると言う者も少なくてね。実在しない、架空の人物なんじゃないかって噂があるくらいさ」
ケイは、イリアの話を感心して聞いていた。
やたら事情に詳しいイリアを、葉山は、傍から冷ややかに見ていた。
「さすがイリアさん。“エレンディア”の系譜に連なる者として、当然、ご存じのようですね」
「エレンディア?」
「……」
その言葉を口にした葉山を、イリアは無言で睨み付けた。
怒りを露わにした表情である。
イリアがそんな態度を取るところを、ケイは初めて見た。
葉山はイリアの視線を気にせず、話しを戻した。
「なぜ四条院財閥が、内閣情報捜査局に対して圧力をかけてきたのか。なぜ、多くの子供の失踪事件に関わっているかもしれない、CICADA3301暗号の捜査を打ち切るように働きかけるのか。つじつまを合わせようとするなら、こう考えられませんか? “四条院財閥が失踪事件に関与している”のだと」
「まあ……そうかもしれないですね」
「雨宮くんたちが、私とフローランスの関係を知っていて接触してきたということは、代々木公園の集団怪死が“殺人事件”であるということも、すでにご存じなのですよね?」
「ええ。最初に気付いたのはイリアでしたけど」
「ボクは警察資料を集めただけさ。雨宮くんも、見てすぐに気付いただろ?」
「……お2人とも高校生なのに、すごいですね。話しが早くて助かります」
葉山は感心した後に、話しを続ける。
「四条院財閥と、子供たちの失踪事件に関連性がないのかを調べていた私は、失踪した少女たちが、ファッション雑誌社にスカウトされていたという法則性に気付きました。一見して、彼女たちのスカウトに訪れた雑誌社はバラバラでしたので、最初は関連性なんてないと思っていたのですが……その中の1社、フローランスは少し怪しかったんです。私は、失踪前にフローランスのスカウトを受けていた少女たちの、ご家族に接触しました。いずれの親御さんたちも、世間が関心を持たない失踪事件を調べようとしていた私を歓迎してくれました。そして、それが悲劇の元になってしまいました」
葉山は悲しそうに、目を伏せて言った。
「いなくなった家族と再会したい一心で……皆さん、心を痛めて日々を暮らしていました。だから私へ、頻繁に情報提供をしてくれていたのですが……私の動きが四条院側に気付かれたようで、その結果、おそらく口封じと見せしめのため、彼等は公園で“処刑”されました。善良な人々だったのに……私のせいで殺されたようなものですよ」
「あの集団怪死事件は、四条院財閥の仕業だってことですか……」
言いながら、葉山はコルクボードに貼られた男の写真を手に取った。
それは先ほど、ケイが見ていた男の写真である。
「彼等の、命を賭けた情報提供のおかげです。苦労して、私はこの写真を入手することに成功しました。この写真に写っている紳士こそが、四条院コウスケで間違いありません」
それを聞いたケイは、疑問を口にした。
「誰も会ったことがないと言われる人物なんでしょう? ならどうして、それが四条院コウスケだと言えるんですか?」
「この写真を手に入れた途端、私は殺されかけたからです」
「……!?」
葉山は腕時計を見下ろした。
時刻を確認すると、コンテナの出入り口の方を見やった。
「そろそろですね。合流予定の時間です」
タイミング良く、コンテナの扉が開かれる。
外から差し込む眩い陽光。ケイとイリアは、思わず目を細める。
白光を背にして現れたのは、フードマントを目深にかぶった人物である。
「お前は……!」
その背に背負われているのは、大弓。
イリアの浴室と、ケイの乗った車へ、矢を撃ち込んできた人物だろう。
無言のままコンテナ内に歩み入り、静かに扉を閉める。
それを見ていて、葉山は微笑んだ。
「四条院財閥の闇を暴こうとし、命を狙われた私を、彼女が助けてくれました。佐渡先生とは違って、私は彼女の協力によって、自分の知覚制限を外すことに成功したんです」
少女は、頭部を覆っていたフードをどかした。
その容姿を見たケイとイリアは、唖然としてしまう。
おそらく――――人間ではない。
セミロングの青い髪。金色の虹彩の双眸。人間なら耳がある場所から、モノリス形状のアンテナが突き出ている。それは、尖った耳のようにも見えた。ところどころに工学的な要素を含んだ顔立ちではあるが、人間に近い容姿であり、とても美しい少女に見えた。
「彼女の名前は、リーゼ・ベレッタ。“機人”なのだそうです」
「エルフだって?!」
「アトラスと同じなのか……? 一見して人間に見えるけれど、その耳は……」
大きな金色の眼差しをクリクリと動かし、リーゼと呼ばれた機人は、ニコリと微笑む。片手を高らかに持ち上げ、元気な声で挨拶をした。
「――――おっぽご!」
「!!」
「!?」
リーゼの第一声は、意味不明な言葉だった。
もしかしてエルフ語だろうか。
ケイとイリアは、なんと返して良いものかわからず、喉を詰まらせる。
少し困ったような顔で苦笑いを浮かべ、葉山がリーゼに代わり、説明した。
「すいません。機人族同士は、耳のアンテナで無線会話する種族らしいので、普段はあんまり口を動かさないそうです。彼女、口を動かして喋るのが、あまり得意じゃないみたいなんですよ」
「何なんだ、コイツは……」
そうとしか、言い様がなかった。