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7-2 東京生存戦略会議



 無人都市――――。

 かつてケイたちが、命懸けの潜入を果たした、知覚不可領域(デッドゾーン)である。


 廃棄処分された東京都から、とっくに帝国騎士たちは去っている。無人都市には、置き去りにされた異常存在(ヘテロ)だけが彷徨っていたが、それらも自衛隊の駆除作戦によって一掃され、今は都民たちの避難場所として利用されていた。


 東京都内は、どこもかしこも死体の山であるからだ――――。


 四条院キョウヤによって操られていた死者たちは、その制御を失った今、また物言わぬただの死体に成り下がった。その結果、路上にはおびただしい数の人間の死体が転がり、放置され、腐敗を始めている。強烈な死臭が立ちこめる市街地で、人々が生活できるはずがない。死者たちに襲撃された場所は軒並み、放棄せざるをえない状況であり、腐臭のない場所と言えば、帝国が建造した無人都市だけであったのだ。生き残った人々は、追いやられるようにして、そこへ押しやられている。


 東京都で起きた、大きな戦い。

 その傷跡は、戦いに勝利したからと言って、簡単に癒えるわけではなさそうである。


 ケイが入院していた病院は、そんな無人都市の中に存在していた。早々に退院を許可されたケイは、病院の玄関口で、財団が寄越した迎えの車に乗り込む。アデルとリーゼも同乗し、そうしてどこかへ連れて行かれることになった。


 後部座席の車窓から、無人都市の風景を眺めていた。


 かつて、正体不明の怪物たちが(うごめ)き、溢れていた暗黒の街路。そこに今は、一般人たちがいる光景は、見ていてなんとも不思議な気持ちになってしまう。自衛隊の装甲車が巡回している道路脇には、抱き合って生存を喜び合う人々や、悲惨な現実に立ち直れずに泣き崩れている人々の姿が散見された。泣いている子供たちを励ます老人の姿もある。街は、どこもかしこも、悲しみに満ちていた。


 ふと通りすぎる、ショッピングモール。

 その広い駐車場の敷地内で、食料配給が行われていた。

 配給待ちの人の列を見かけて、ケイは寂しげに目を細めた。


 そこは、CICADA3301暗号が発信されていた場所。

 イリアやトウゴたちと一緒に、アトラスに出会った、忘れられない地でもある。


 あの時はまだ佐渡も。

 サキも……この世に生きていたのだ。 


「……」


「雨宮さん、着きました」


 運転手が、ケイへ告げる。


 車が駐まったのは、ショッピングモールから少し離れた位置にある高層ビルディングだった。いつか来た時には、その建物の前を通りすぎただけで、上層階にだけ明かりが灯っているのを見上げ、誰かがいるのかと不気味に思ったものだ。車から降りて、それを改めて見上げながら、感慨深く呟いた。


「こんな形で、ここへ戻って来るなんてな……」


 今ではすっかり、この無人都市は、生存者たちの生活圏(コロニー)だ。

 財団の職員に案内され、ケイはビルの中へ足を踏み入れる。

 その背に、アデルとリーゼも続いた。




 ◇◇◇




 無人都市内で、最も高いビルの最上階。

 高速エレベータを使えば、程なくして到着できた。


 下りてすぐの場所は、広々とした執務室のようだ。


 1フロアがまるまる全て部屋となっており、そこに書斎机が1つ。その手前に、大きな円卓のソファテーブルが置かれていた。すでに多くの人々がテーブルを囲んでおり、一斉にケイへ視線を向けてくる。いずれもテレビで見たことのある、日本政府の閣僚たちだ。


 書斎机に腰掛けていた老人が、ケイへ声をかけてきた。


「本当に3日で退院してくるとは……若さの成せるわざと言うには、少々無理があるかな。ずいぶんと人間離れした回復能力なものだな、雨宮ケイくん」


「仙崎総理……!」


 総理大臣に声を掛けられ、ケイは緊張してしまう。死者たちとの開戦前に、何度か会って話しはしているものの、やはり大物相手となると気を遣うのだ。こわばっている様子のケイを見て、仙崎総理は苦笑して見せた。


「緊張することはない。もはや我々は、日本という国の政府を担う者ではなくなっている。それどころか、多くの都民を守ることができなかった、失政者と(そし)りを免れない立場だろう。今はただ、生き残った都民の1人として、若者たちの未来を(うれ)えている。そんな年寄りたちの集まりでしかないよ。それに……」


 仙崎総理は、静かにその場で立ち上がる。

 それと共に、ソファに着座していた、他の閣僚たちも一斉に起立した。

 全員が、深々とケイへ頭を下げて言う。


「ここにいる我々だけではない。全ての人々が、君の力によって救われた者だ。改めてだが、礼を言わせて欲しい。命を救ってくれて、ありがとう」


 口々に感謝の言葉を告げられて、ケイは戸惑いつつも、照れくさい心境だった。誰かから感謝されることには慣れておらず、なんと返事をして良いものか迷ってしまう。適切な返事に事欠いている様子のケイを見て、愉快そうに微笑んでいる金髪の人物がいた。


 イリアである。


 総理や閣僚たちが再び着座すると、イリアは、ケイを連れてきた職員を下がらせる。そうしてから、いつもの不遜な態度でソファにふんぞり返り、口を開いた。


「やれやれ。機人(エルフ)族のクスリで治療されたところで、陰キャの雨宮くんが、コミュ障を治せるわけでもなかったか。残念だったね」


「余計なお世話だ」


「なんと。リーゼの持ってきたクスリには、ケイのコミュ障を治す効能があったのですか。その割には、今までのケイと大して変わった様子はありませんが」


「え? いや、機人(エルフ)のクスリに、性格を矯正(きょうせい)するような効能はないよ?」


「リーゼ、アデル。あれは、イリアの冗談だ。真に受けるなよ……」


 背後で、真剣に語らっている様子の天然な2人組に、ケイは釘を刺しておく。


 よく見れば、レイヴンとクラーク姉妹も、円卓のテーブルの一角に腰掛けていた。包帯まみれの怪我人レイヴンは、退屈そうにアクビをしている。一方で、すぐ近くの席に座っていたジェシカは、立ち上がってケイに駆け寄ってきた。嬉しそうに、ケイに抱きついてくる。


「ケイ、復活したのね! 本当に良かったわ!」


「いてて。まだ完治してないんだ。あんまり強く抱きつくなよ、ジェシカ」


「むっ……」


 いつものムッツリ顔のままではあったが、アデルは、ケイに抱きつくジェシカから“何か”を感じ取った。具体的にそれが何なのかは、アデル自身にもわからなかった。だが、放置しておくのは良くないという、確信めいた予感があった。なんとなくアデルは、ジェシカに負けじと、ケイの服の(すそ)を掴んで(わず)かに引っ張った。


「? なんだ、アデル」


「いえ、何となく……」


「お姉ちゃん、ダメだよ。勝手に騒いじゃ……皆さんにご迷惑だよ……」


 妹のエマに(たしな)められて、ジェシカは我に返る。

 そうしてケイから離れ、少しだけ頬を赤らめてしまう。


 イリアは妖しい笑みを浮かべ、ケイたちに席を勧めてくる。


「さてと。退院後の挨拶は終わったかな。君たちも空いている席にかけたまえよ。雨宮くんが目覚めたと知らせを受けたから、こうして、君たちが来るまで会議の開始を待っていたんだから」


「会議って……これはいったい、何の会議だ?」


「生き残った東京都民たち。その“生存戦略会議”さ」


「……」


 席を(すす)められたケイたちは、空いているソファに腰を下ろす。

 全員がテーブルを囲んだことを確認すると、口火を切ったのは仙崎総理だった。


「――――この3日間、東京都が(こうむ)った被害状況を自衛隊に調査してもらっていた」


 仙崎総理は重々しい口調で、話しを続ける。


「最初にこの数字を出しておこう。東京都の総人口は、およそ1400万人だった。けれど、先の東京解放戦において生き残った都民の数は、推定で170万人くらいしかいない。そのうち、自衛隊の残存勢力が約5000人だ」


「……!」


 ケイとアデルが、驚いた顔をする。

 その隣でリーゼが、痛ましそうに表情を(しか)めて言った。


「……思っていたよりも酷いのね。この白石塔(タワー)の、9割近いのヒトが死んだなんて」


「逆に言えば、だ。四条院家を相手に、170万人も生き残ったんだぜ? ある意味じゃ奇跡とも言えるんじゃないか? 普通なら全滅。そうならなかっただけ、遙かにマシな被害状況だって」


「本当にデリカシーのない言い方をするのね、傭兵は」


「ポジティブ思考で言ったまでだよ。それに生憎と、デリカシーで腹が膨れる人生じゃなかったんでね」


 レイヴンの皮肉めいた言い方に苛立つリーゼ。

 そうしたやり取りを聞きながらも、仙崎総理は話しを続けた。 


「戦いに勝利したからと言って、施政(しせい)に取り組む我々は、無邪気に喜んでばかりもいられない。生き残った人々の人生は、今もまだ続いているんだ。生きていく上で、不可欠な物資やエネルギーを確保しなければならない」


 仙崎総理の後を続けるように、イリアが口を挟む。


「それなのに、だ。財団と自衛隊の調査で、他県への移動ができないことが確認できている。ボクたちが今いる、この東京白石塔(タワー)は、他の白石塔(タワー)との繋がりを絶たれてしまっているんだ。四条院キョウヤの“隔離措置”によって、東京都を取り囲んでいた全ての転移門(ポータルゲート)を閉ざされた影響だろう。今の東京は、巨大な石柱に四方を覆われた牢獄同然だよ」


 嘆息混じりで、仙崎総理はイリアの説明を肯定した。


「イリアくんの言う通りだ……。海外や他県との行き来が物理的にできなくなっている。つまり都外から毎日のように運び込まれていた物資や食糧の供給が、もう得られないことを意味している。肉や魚や野菜。コンビニ弁当だって、都内に残っている在庫分しかない。それらを今、自衛隊が懸命にかき集めているところだ。さらには電力やガスなどのエネルギー供給も絶たれているのだ。治水機能さえ失われた。東京都は、もはや廃墟化するのを待つだけの、不毛の地と化したのだ」


 仙崎総理は険しい顔で、苦境を語る。


「試算結果では、現在の東京のリソース備蓄量が保つのは3週間ほどしかない。それまでに状況を改善できなければ、都民は食料とエネルギーの供給を失うだろう」


「3週間……。それが、東京都の人たちが生き残れるタイムリミットということですか」


 ケイの言葉を、仙崎総理や閣僚たちは沈黙で肯定する。

 すると嘆息混じりに、イリアが肩をすくめて付け足した。


「おまけに、なんだけどね……。路上はいまだ、どこもかしこも死体の山だ。無理もないさ。1000万人以上の死体が、いまだ都内の各所に散らばっていると考えられているんだ。ボクたちが動かせる人員だけで、全ての死体を回収して適切に処理することは、もはや不可能だよ。衛生上の観点からも、長らく都内に留まることは難しい。リソースの問題よりも、先にそっちの方が問題になるかもね」


 イリアの言葉に耳を痛めながらも、仙崎総理は続けた。


「もっと悪い可能性の話しをすれば、だ。そもそも、これだけ甚大な被害をもたらした四条院キョウヤですら、帝国の先兵にすぎなかったのだと、私は考えている。あの男を倒した我々の元へ、同格か、それ以上の力を持った新たなる刺客が、いつ送り込まれてくるともわからない。今後も、アデルくんを狙って、東京は襲撃される可能性が考えられるだろう。だがもう、この東京に、応戦できる戦力はない。それでも我々は、アデルくんを帝国の手に渡すわけにはいかないのだ。アデルくんは、抑圧された人々にとっての希望なのだから。彼女の守りについても、今後の対応策が必要になっている」


「……」


 ケイが横目に見たアデルは、やはり落ち込んだ表情をしていた。自分のせいで人々が犠牲になることについて、アデルは胸を痛め続けているからだ。アデルの思いとは別に、周囲の人々は、アデルを人類の希望と考え、命懸けで守るつもりでいる。人々に、帝国と戦おうという意思がある限り、それはもはや、アデル個人の意思だけでは、やめさせることもできないのが現実なのだろう。


 アデルの存在は徐々に、人々の希望の象徴になりつつあるのだから。


 心配しつつも、ケイはイリアや仙崎総理に提案してみた。


「……白石塔(タワー)転移門(ポータルゲート)を復旧させて、もう一度、白石塔(タワー)内の世界へ、東京都を戻すという手はダメなのか?」


「雨宮少年。そりゃあ、やめておいた方が良いと思うねえ」


 答えたのは、話しを聞いていたレイヴンだった。


「四条院キョウヤも言ってただろ? 廃棄処分が決定された白石塔(タワー)についての情報は、下民たちの記憶から抹消されてしまうんだ。この東京都が隔離措置を受けた段階で、すでに他の白石塔(タワー)の人々は、記憶改竄を受け終えていたはずだ。この都市が地球上にあったことなんて、もうきれいサッパリ忘れてるだろうよ。そこに東京都を戻してみたら、どうなると思う? 得体の知れない謎の都市が、いきなり現れるんだから。宇宙人が襲撃してきたみたいな大騒動になるだろう。救援なんて期待できないね」


「……なるほどな」


 レイヴンの話しに、ケイは納得する。

 するとリーゼが、口を挟んできた。


「なら……もう東京都は“放棄”するしかない。ということで良いのかな」


「残念ながら。それが今のこの苦境で考え得る、最も最良な策だろう。東京都に定住することを諦めて、どこか他の場所へ移住する。ボクたちは、生き残りをかけた旅に出る必要があるんだよ。戦災移民としてね」


 仙崎総理は肯定しながら、喫緊(きっきん)の課題を提示する。


「我々が考えなければならないのは、東京都民を“どこへ向かわせるのか”だ」


「……」


「今の備蓄物資とエネルギーだけでも行ける範囲にあって、170万人近い戦災移民を受けれてくれる。そんな都合が良い国や都市が、近隣にあるのか。なければ、どこかに植民地を造って移住するのか。選択しなければならない。しかも選択できるのは1度きりだろう。失敗すれば、170万人の都民たちが行き詰まり、死ぬことになる」


 事態の重大さに、誰もが口を噤んでしまう。選択によっては、さらに大勢が死ぬことになるのだ。誰も迂闊な提案は差し挟めない議題だった。


 イリアは、テーブルを見渡して告げた。


「そこでだよ。アークの社会や地理に詳しい、リーゼやレイヴン、それにクラーク姉妹の意見を聞きたいわけさ。だから君たちを、この会議に招待させてもらった。もしも知っているのなら、ぜひとも教えて欲しい。この近くに、ボクたちを受け入れてくれるような、都合の良い場所に心当たりはないのかな?」


 閣僚たちの注目が、アークの有識者メンバーに集まる。

 最初に応えたのは、ジェシカだった。


「……率直に言って“無い”わね」


「お姉ちゃん……」


「ここで気を遣って誤魔化しても仕方ないわよ、エマ。アンタたちも、もう知っての通り。アークの社会は、帝国貴族たちの“支配権限(しはいけんげん)”という仕組みによって成り立っているわ。上流社会の人間の命令に、下流社会を生きている市民や下民は、絶対に逆らえないの。ハッキリ言って独裁に近い圧政だけど、抵抗するヤツなんていないわ。反抗的なヤツは、すぐに殺されるもの」


 ジェシカは遠慮無く語った。


「どこの街の一般市民も、帝国の横暴な統治に、反感や恨みを抱いている人間はかなり多いわ。けれど決して反乱は起こり得ない。それが1万年以上続く、伝統ある帝国支配だもの。たぶん市民階級の人たちまでなら、心情的に、帝国に攻撃された東京の人たちに同情的かもしれない。けど……この東京の近隣は、どこも四条院企業国(ユニオン)の領土。親玉である四条院家がアデルや剣を狙っているのに、そんな中で私たちを助けたら利敵行為でしょ。四条院家の意思に逆らうことになるわ。つまりは貴族たちに逆らうことも同義になる。怖くて誰も、力を貸してくれないと思う」


「そのことについてだが。四条院家に従うよりも、東京を助ける方がメリットが大きいのだと、説得できればチャンスはないかな? たとえば支配権限(しはいけんげん)を無力化する、ボクたちが開発したワクチンを交渉材料にできないだろうか」


「ワクチンを交渉材料?」


 イリアの突飛なアイディアに、ジェシカは怪訝な顔を返した。

 対してイリアは、得意気に言う。


「ようするに、ワクチン外交ってヤツさ。帝国に反感を抱いている人たちは、帝国に逆らえない。けれどワクチンさえあれば、支配権限(しはいけんげん)の呪縛から解き放たれることができるわけだ。あわよくばボクたちの反乱軍(レジスタンス)に引き込んで、仲間にできる可能性だってないのかな」


「なるほどな。ようするに、帝国に逆らえるようにしてやるから、オレたちを街に受け入れてくれって取引か。さすが悪知恵がはたらくな、イリア」


「雨宮くんに言われたくないね」


 イリアのアイディアを聞いたジェシカは、眉間にしわを寄せて考え込んでしまう。


「……どうかしら。本腰を入れて、帝国に反旗を翻したいと思ってる人たちが大勢いる都市なら、そう言う説得が通じる可能性はあるかもしれないけど。結局のところ、ワクチンになびいてくれるかどうかって、賭けでしかないんじゃない? 結果がどうなるか保証できないことに、170万人の命運を託すのはどうかと思うわね」


「……一理あるね」


 言われてイリアは、黙り込む。

 イリアがやり込められるのは、珍しかった。

 すると今度は、レイヴンが口を開いた。


「まあ、仮にその取引がうまくいってもですよ、イリアさん。170万人なんて人数は半端じゃない。この周辺はアークの辺境。ど田舎だから、せいぜい100万人くらいの人間たちが住む小都市くらいしかない。自分たちの街の人口より多い移民を容認するなんて、普通ないだろうなあ。かと言って、最寄りの大都市と言っても、ついこの前に俺たちが暴れ回った、白亜(はくあ)の都アグゼリウスくらいしかない。あそこは淫乱卿(いんらんきょう)のお膝元みたいなもんだし。門前払いだろうなあ。けど、それ以外の場所だと、どこもキャパオーバーってところかな」


 レイヴンはニヤけて言った。


「傭兵の考え方で進言するなら、こういう時は“殺して奪い取る”が正解だな。近隣の都市に戦いを仕掛けて、物資を奪い取るんだよ」


 その案には、誰もが不快そうな顔をする。

 ジェシカが釘を刺すように警告した。


「そんな作戦なら、アタシは協力しないわよ」


「私も……です……!」


「綺麗事で全員助かるわけじゃないんだぜ? 東京の連中が死ぬか。他の都市の連中が死ぬか。2つに1つだろ」


自分に嫌悪の注目が集まっていることに気づき、レイヴンは降参するように両手を上げて見せた。


「はいはい。皆さん、お優しいことで。まあ、真面目な話し、都市を攻撃したら帝国騎士団が出張ってくるだろうから。元々お勧めの案ってわけじゃなかったよ。言ってみただけ。悪かったって」


 アイディアが尽きたのか、そこで話し合いが途切れてしまう。

 全員が黙り込んでしまった最中、話しを聞いていたケイは、考えを口にした。


「…………“建国”なんて、どうかな?」








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