碓氷さんは宇宙人
「今日はこれで終わり!」
関根先生が始業式の終わりを告げる。
「皆、気を付けて帰ってね」
そう言い残し、教室を出ていく。
4限まであるハズなのに、今は3限の途中。早く帰れることに感謝しながら、帰り支度をする。今日、必ず持って帰らなければならないプリントは3枚。どれも明日までの提出期限で、親の印鑑が必要となっている。この親の印鑑が必要なシステムは改善されないのかなぁ・・・面倒くさいんだよなぁ。
肩掛けタイプのカバンを持ち、教室を去る。そのまま階段を下り、校門へと進む。
・・・故意的だよな、これ。
体を半回転させて、オレの後ろをつけてきた影と対峙する。
「・・・・なに?」
「それはオレのセリフだよおおおおお!!!!」
キョトンと首を傾げて、なんでそんな叫んでるの? とでも言いたげな碓氷さん。
咳払いをし、天に召されそうな冷静さを何とか取り戻す。
「なんでオレの後ろにいるの?」
「迷子になるから」
ふむふむ、なるほど。そういう理由が・・・・。
ってなる訳ないだろっ!!!!!
よ、よし。冷静になって、もう一度。
「何でなのかなぁー? 教えてくれないかなぁ?」
「・・・その言い方が気持ち悪いから嫌」
「うるせぇ!」
思わず女子に汚い言葉を使ってしまった、オホホ、ダメですわねオレ。
「・・・が近いから」
「・・・ん?」
脳内お嬢様が働いてたせいで聞き取れなかった。
「家が近いの」
「・・・・そうか」
「そう、だから」
なるほど。碓氷さんとオレは家が近いらしい。これですべての疑問点が解決された・・・・わけではない。
「そうか、ところでオレの家の場所を何で知ってるんだ?」
そう、この碓氷優姫は何でオレの家を知っているんだ? 場合によっては、今朝のうちに消してしまった可能性、碓氷優姫ストーカー説を再び浮上させなければならない。
「お母さんから聞いた」
「・・・・お母さん、怖い人?」
まさか、お母さんの方が危ない方でいらして・・・?
「怖くないと思う。なんで光輝は聞いてないの?」
へ? どういうことだ? それと何気に今気づいたけど、碓氷さんはオレの事を下の名前で呼んでいる。これまで下の名前で異性から呼ばれることなんんて滅多になかったから凄い新鮮・・・。はい、噓をつきました。滅多にではなく、一切の間違いです・・・・。
「なんで?」
新しい感覚に浸っていると、いきなり目の前に碓氷さんの顔が迫っていた。
「・・・近いっす」
思わず後ろにのけぞってしまった。
「それでー、オレが誰に聞けば良かったって?」
「お母さん」
「・・・ごめん、碓氷さんのお母さんとは面識ないと思う」
「違う、光輝のお母さんかお父さん」
思い返しても、一切言われた記憶がございません。そもそも、碓氷っていう苗字を今日初めて聞きました。あと、それ以上のに気になっているのが周りの視線。ずーっと校門の前で話しているから好奇心と嫉妬の目線を沢山頂く。勘弁して欲しい。
「とりあえず、帰りながら話そう」
さりげなく、場所を変える提案をする。
「いいけど」
「・・・けど?」
「どっちだっけ」
校門からどう進めば良いかすら分からないらしい。これはかなりの重症だ。
あ、そうだ。
「スマホって持ってる?」
「持ってない」
「ガラケーは?」
「持ってない」
なるほど、碓氷さんは宇宙人説が濃厚だ。あ、だから窓の外を眺めてたか・・・。