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第3話 岩の巨人

新アイテムとかについてネタバレしない程度に紹介します。


魔法のスクロール・・・魔法が込められた巻物で、魔法を使えない物でも単純な魔法なら使える。


詠唱式・・・この世界の魔法は詠唱式を唱えることで魔法を発動します。地域特有のものもあったりする。

赤子の頃、私は期待されていたみたいだ。

なんでも、体に秘めていた魔力量が平均を遥かに上回っていたり、3歳で魔法のスクロールを書いたり魔法使いとして大成することを期待された。

しかし、その期待もふざけた一言によって僅か5歳の時に失われた。


「…あなたの使える魔法は、召喚魔法です。」


私に同情の目を向けながら私の魔法の適正を見た魔法使いの男は言った。

召喚魔法、それは先の大戦によって滅びた東の帝国が用いていた魔法だ。魔力を利用して精霊や使い魔を使役する魔法、その詠唱式の殆どは大戦の際に失われた。



━━━━━ そう、私は生まれる時代を間違えた。


使える魔法は火力の出ない魔法や生活に役立つ程度の物ばかり。両親は私の妹の教育に専念し、私は放置。衣食住を提供されるだけの関係だった。


暇な時間、私は本に時間を費やした。華やかな勇者たちの英雄譚、神秘に満ちた世界の始まりの物語、血みどろで狂気に満ちた大戦の記録。どれも私の興味を引き、飽きなかった。

自分もその物語に参加できたら、どれ程幸せだろう。何度もそう思っては自分が主人公の本を書いたりした。


そして転機は15歳の誕生日に訪れた。


「あなた、近いうちに出てってくれない?

ウチもいろいろ大変なのよ。」


私はどうやら家族の一員ですらなかったようだ。悲しいとは思わない。いずれこうなることは分かっていた。

次の日、荷物を纏めて出ていった。


家を出て都市に着いた私は、今まで家から出たこともほとんどなかったせいで、右も左も分からくて宿を探すのも困難な状態だった。

そんな時、掲示板に貼られていた『黄金の短刀』のパーティメンバー募集の張り紙を見た。

何でもリーダーが家を持っているという訳で、宿が欲しかった私は面接を受けた。

「私、一応魔法詠唱者(マジックキャスター)なんですが、魔法の適正が召喚魔法で大体の魔法は使えないんです…

でも、スクロールは得意です!ほら見てください、あっという間に5枚もできあがり!」

お人好しな我らがリーダーは


「魔法を使えない魔法使いってどういうことだよ」


と笑いながらも


「まあ、そのスクロール制作の手際の良さは正直イカれていると言っても過言ではない。

だが、俺らのパーティは男だらけだ。

その手際の良さを家事にも活かしてくれるとも約束してくれるなら採用してやるよ。」


と言ってくれ、勿論私は承諾した。

それが丁度1年前のことである。









「どうせそんな事だろうと思ってたわよ…」


眼前に迫る動く死体の群れ。ゾンビとして世間一般に知られるものだ。元が人間のものも、ゴブリンや獣のものも見受けられる。


「にしても臭いわね…さっさと片付けましょう。」


スクロールをバックから取り出し、唱える。


氷雪の槍(フロスト・スピア)!!」


スクロールが光輝き、冷気を帯びた槍が飛び出す。高速で放たれた槍は、ゾンビの群れを貫き、中心ほどで冷気を放ち爆散し、50体ほどいた大軍の半分を削った。


が、しかし━━━━━━━━━━━━━━━


「ふざけないでよ!なんでなの!?」


「ウゥ…アアアァ!!」


ソンビたちが床からはい出てくる。

それも、先程とは比べ物にならないほどの巨体のものだ。


巨人である。基本的には野外で生活しており、知能が低く凶暴とは言え、獲物をおってダンジョンに入ることなどまず有り得ない生物だ。

そしてなにより、


雷撃(ライトニング)!!光の矢(ライトニング・アロー)!!」


スクロールから放たれる雷と光の矢は人型のゾンビを貫いていき、知能がないゾンビは避けもしないのだが


「ガァァァァァァ!!」


巨人の分厚い皮膚を貫くことはできない。

その巨体に20体ほどのゾンビを守りながらどんどん接近してくる。

そもそも、今回はダンジョン攻略後にいきなり転送されて来たためスクロールの持ち数は少なかった。そして私は貴重な緊急事態用のスクロールを取り出す。


「背に腹はかえられないか…もったいないけど…

エスケ━━━━━━ ッ!!」


脱出(エスケープ)の呪文を唱えようとした瞬間に体に激痛が走り、ひどい悪寒に襲われた。あまりの不快感に、地面に私は伏してしまった。


「契約違反です、完全にダンジョンの清掃が終わるまでダンジョン内からの離脱は認められません。」


クソ悪魔の声が頭に響く。このまま私に死ねというのか。体を起こす気力も消え失せた。

残ったスクロールにもう巨人を倒せるような火力をもつものは無い。

私目がけ巨人の腕が振り下ろされる

こんな所でおしまいか…ゾンビに食われて終わりとか、全くろくな人生じゃなかったな…

願いもまだ叶ってないのに━━━━━━━━


空気を震わせる大きな衝撃。しかし、私にまだ意識はあった。驚き目を開ける。眼前、大きな岩が覆い尽くす。

そして、私の願いは成就した。


この世界の始まり。 人間達は弱い肉体に見合った生活を望まず、更なる文明の発展を求めた。傲慢な人類に怒った神は怒り滅ぼそうとしたが、全て一体の巨人によって防がれた。

人々は巨大な岩と人の心を持ったその巨人を"ゴーレム"と呼び、崇めた。ゴーレムの岩の体は神の放った雷を防ぎ、世界を覆うべく降らせた大雨を飲み干した。

しかし、神の落とした星から人間たちを救った後に彼は力尽きた。人々は言葉こそまだ知らなかったが、その骸に寄り添い涙を流したという。彼の骸はその後豊かな山となり、死した後も人々の糧となった。

その力と自己犠牲の精神の原動力は人類への愛、そして一人の女への恋だったと言う。



私を巨人の一撃から防いだのは、岩でできた腕のようなものだった。


その腕とは魔力的な繋がりが感じられた。

私が召喚した、という事だろうか。しかし、岩の腕を召喚したなんて妙な話は聞いたことがない。



頭に声が響く。


「数世紀振りに召喚されたと思ったら、こんな陰気な場所に呼び出されるとは…

俺を何故このような狭い場所に呼び寄せたのか…分からないが、文字通り手なら貸せる。だが、その前に声を聞かせてくれ。」


声を聞かせてくれ?変な事を言ってきたが、私だって聞きたいことはある。


「あなたは誰!?」


私の声を聞いた岩の指先がビクッと震えた。


「そ、その声は!?

全く…死んだ後でもいい事あるもんだな…

いつも通り召喚した奴を殺してさっさと帰ろうかと思ったが、それは止めといてやる。

俺は岩の巨人、ゴーレムだ。

我が生涯で最初で最後の主よ、指示をくれ。」


今まさに、現在進行形で叶えられつつある

私の願い━━━━━━━━━それは神話、物語の再演を私が担うことだ。


「目の前の死徒を滅しなさい!」


「相分かった!行くぞ!ゾンビ共!!

我が主人への最初の土産だ!!

オラァ!!」


岩が振り下ろされ、鈍い音が響く。腕や足を切り落とされても進むゾンビも、脳もろとも潰されれば耐えられない。

知性がないゾンビたちは私に向かって走るだけだ。無機質な岩には興味を示さず私を喰らいに来る。


「眼中に無いってかぁ!?」


ゴーレムが一気に巨人ごとゾンビをなぎ倒すと、やっと強大な敵に気づいたのか腕目掛けて飛びつこうとしたが空中で纏めて握りつぶされた。




全てのゾンビを片付けた彼は誇らしげに言った。


「どうだ?私の剛腕は?圧倒的ではないか。」


「ああ、まさしく神話として語り継がれる『岩の巨人 ゴーレム』そのものね。」


「なに?俺は神話になってるのか。妥当だな。

神の大洪水と星落としを止めたんだからな!」


そして、彼は息を着いて言った。


「…肌に触れてもいいか?」


変なことを言うなとは思ったが、私は頷いた。

そしてふいに彼は指先を私の頭に伸ばす。その動きには、先程までゾンビに向けられていた敵意は一切なかった。

指先が私に触れる。そして、私の頭をそれはそれは愛しそうに優しく撫でた。無機質な指先から、暖かな温もりが感じられる。そしてその後言った。


「本当に、死んだ後でもいいことなんてあるもんなんだな…

これが私の詠唱式だ、俺を呼ぶのがお前ならば俺は何時何処でも参上する。」


ゴーレムの詠唱式が頭に流れ込んできた。私はこれでいつでも彼を呼べるだろう。しかし、


「何故私を今まであなたを呼んだものと同じように潰さなかったの?しかも、詠唱式まで教えてくれるなんて。」


岩の巨人は、少し寂しそうに言った。


「魂は巡るものだ。いくつもの時を超えて肉体は生まれ変わっても、その在り方は変わらない。

それだけだ。俺の五体を召喚した時にでも続きを話してやろう。」


そんなの無理だ!全身を呼ぶなんて事をしたら、大事になってしまう。


「そんなこと出来るわけないじゃない!

あなたってデカい図体の割にい頭はお粗末なのね。」


ゴーレムの腕がまた震えた。そして少し笑いながら言った。


「クク…本当に愉快だ。まあ、いつか来るさ。」


少しイラッときたが、許してやることにする。


「はあ…まあいいわ、ありがとう。私の命を救い、私の願いを叶えてくれて。」


彼も言った。


「奇遇だな、俺も願いが叶ったところだ」


「結局、それはどういう━━━━━━━━━━」



上を見ると、もう彼は消えていた。




私はきっと、彼をまた呼ぶだろう。

今回は下手くそだった気がする。

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