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第2話 契約

何でも願いごとを1つ、叶えてやろうじゃあないか!





"自称"神を名乗るヤツは続けた。


「君たちが望むもの、どんなモノでも1人1つずつ叶えてあげよう。

どう?凄くいい提案だと思うんだけど。

まあ、尤も君たちに断ることは出来ないと思うけど!」


「なんだと?どうしてそう言い切れる。」


俺が言うと、奴はそれはとても楽しそうに言った。


「君たち、とは語弊があったかな。君が断れるわけないよね?ガレスくん?」


皆の視線がガレスさんに集まる。ガレスさんはしばらく俯いていたが、答えた。


「…俺には大病を患っている娘がいる。打つ手は今まで行ってきたが、医者からは半年も持たないと言われている…」


「そんな…どうしてもっと早く言ってくれなかったんですか!私で良ければ分け前なんていくらでも…」


━━━渡していたのに、と言いかけてエリザは止める。クエストの報酬はリーダーのガレスさんが4割、あとの6割を俺たち3人で当分することにしていた。その取り決めに則り今までたくさんのクエストをこなして来た。ガレスさんとエリザの報酬の合計金額にはとっくに差が開いている。

ガレスさんが今まで稼いできたお金でも無理だったんだ。自分の稼いだ金ごときで何とか出来るわけが無い。

そのことに気づいたエリザはとても悔しそうで、見ていられなかった。

ガレスさんは言う。


「すまないな、エリザ。心配をかけて。だがこれはもう金でどうこうなる問題じゃないんだ。だからこそ、俺はもう縋れるものなら何にでも縋りたい。

そこのクソみたいに笑ってる悪魔との取引でもな。

人の葛藤や苦しみを餌にしやがって…」


ガレスさんが睨みつけると、悪魔は言った。

「それが無ければ、僕達は生きていけないからね。人間が遊ぶのと同じようにボクたちも娯楽がないと♪」


そう言う奴の笑顔を見て、俺は心の底からこいつが悪魔だと言うことを確信した。


「で、乗るのかい?乗らないのかい?」


ガレスさんは、少し話し合う時間が欲しい、と悪魔に言った。






誰もが悪魔と交渉することを拒む者はいなかった。

皆訳があってこのパーティに参加している。ここまで来て、このパーティから離れようと言う者はいなかった。


「お前の提案に乗る。全員な。」


「そうかい!それは良かった!いやー嬉しいよ、初の休暇!!

じゃあ、君たちの願いについてじっくり聞かせてもらおうじゃないか。」


悪魔はそう心底嬉しそうに言い、俺たち全員の願いについて1人ずつ個別に読んで話した。


「さて、契約の儀式だ。全員の血をこの魔法陣に落としてくれ。」


悪魔が地面に触れると、赤い光を放つ魔法陣が床に浮かんだ。悪魔の言う通りに、その場にいる全員が指先から血を落とす。



「我らの魂は血の誓約により結ばれる。契約が果たされぬ時、その者の肉叢は砕け散り、魂は永劫の時を冥界に囚われるであろう。ここに我らの契約は交わされる。

さあ、願いを申せ」


「「私が望むものは━━━━━━━」」


願いを述べた俺たちを光が包む。だが、その光に暖かみは無く、冷たい凍えるような気さえ感じられた。


「…願いは聞き届けられた」


確かにこの瞬間だけは少し、本当に少しだけ悪魔がいっちょ前の神に見えた。

なんて思っていると、意識が遠くなり気がつくと異臭の立ち込めるダンジョンの中に俺は1人で立っていた。


読んでくれてありがとうございます!作者の者です。

長かった…やっと次回は好きなように戦闘が書けます…

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