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89.手巻き寿司

 サプラァァアイズ!


 鯛の塩釜焼きを食べ終えると、酢飯もいい頃合いになっていた。

 ということそのまま手巻き寿司に突入する。


 掛けていた濡れタオルを外し、酢飯をボウルから皿に移した後、ネタを盛った皿も取り出していく。ネタは、海鮮系(マグロ・サーモン・ハマチ・タコ・イカ・アジのなめろう・とびっこ・甘エビ)と、野菜系(アボカド・きゅうり・大葉)そして、その他(牛肉炒め・ミニハンバーグ・玉子・マヨコーン)の三種用意した。

 「…綺麗ね。」

 「はい。宝石のようです。」

 美しい刺身の数々に皆、目をキラキラさせていた。

 「これは、手巻き寿司っていう料理だよ。」

 「手巻き…寿司。」

 「そう。寿司は寿司でも、自分で——自分の手で各々作って食べるものだよ。ここにあるネタを好きに組み合わせてね。」

 そう告げると、バッと顔を向けてくる。表情に興味と興奮が溢れ出ていた。

 「な、なるほど…。それは楽しそうね。」

 「ワクワクしますっ。…でもきちんと出来るでしょうか。」

 「不格好でも、結局は自分で食べるから問題ないよ。まぁ、まずはお手本を見せるよ。」

 そう言って、長方形の海苔を一枚手に取る。

 「まずは、海苔を一枚とってシャリ…ご飯を載せる。最後に海苔を巻くから、海苔の左半分に薄く広げるイメージで――こんな感じかな。後は、好きなネタをのっけて――じゃあ、サーモンとアボカドを載せてっと…。海苔の左下の角を、海苔の中央上に、向かってひっぱって、くるくると回して、残った右部分で包んでいけば――ほら、完成。」

 「見事ね。」

 「ブーケみたいで可愛いです!」

 「(こくこく。)」

 「ありがとう。刺身は、醤油とワサビを少しつけると良いよ。ワサビは香辛料だからちょびっとね。よし、それじゃ食べよう!何事もトライ&エラーだ!」

 「ええ!」「はい!」「はい。」


 最初は、皆の様子を見守る。

 リリシアは修一と同じ、サーモンとアボカド、サーラは牛肉炒めを選んだようだ。そしてイヴは――。

 「おい、イヴ、それは多すぎだ。巻けないだろ…。」

 海鮮全種盛りに挑戦していた。

 「大丈夫よ…ここを…こうやって…ほらっ巻けたわ!」

 「あぁっ、イヴさん、下からどんどん落ちてます!」

 「あぁ!」

 「大人しく諦めて、二つに分けなさい。」

 「…はぁい。」


 こうして、和気藹々と次は何が良いか、どのセットが美味しかったかなど談笑しながら楽しく食べ進めた。


 途中からは、サーラも刺身に挑戦し、感動していた。

 先日天ぷらを美味しそうに食べていたし、和食は彼女の好みに合うのだろう。

 「マグロの力強くパンチの効いた旨味…サーモンの甘み…ハマチのまったり感…どれも美味しいです…。」

 ただ、時たまワサビの猛攻に苦しんでいた。量を間違えたのだろうか、いや、あの様子から察するに付けたことを忘れて再度付け直したのだろう…。ワサビ2倍盛…そりゃ辛いわな。クール美人の涙目、ぐうかわでした。


 「はい、修一さん、巻けましたよ。マグロとエビと大葉です。」

 「お、ありがとう。」

 リリシアが作ってくれた寿司を受け取る。彼女の甲斐甲斐しさはいつものことなのだが、今日は——。

 「マスター、これも美味しいわよ。なめろうとタコととびっこ。」

 イヴが加わり。

 「ご主人様のお世話は、私の仕事です。これ、どうぞ。」

 サーラが謎の対抗心を燃やしたおかげで、次々と寿司が作られていった。そして——。

 「「「はい、あーん。」」」

 …究極の選択に迫られた。


 「えっと、そのこれは――。」

 「あーんよ。あーん。ほら食べなさい。」

 「修一さん、どうぞ。あーん、です。」

 「ご主人様、口をお開けください。」

 有無も言わせない迫力があった。冷汗がたらりと流れる。


 救いの手を差し伸べたのは――やはりリリシア。

 「ふふ、なんちゃって…今日は、イヴさんが、主役ですから。イヴさん一番にどうぞ。私は最後で大丈夫です。」

 「あら、いいの?」

 「はい♪でも今日だけですからね。」

 「ふふ。ありがと。サーラもごめんなさいね。」

 「いえ。大丈夫です。」

 「それじゃあ、マスター?あーん。」

 「リリシア、ありがとね。あーん…もぐもぐ…うん、美味しい。」

 「ふふ、そう?良かった。」

 「次は私です。どうぞ…。」

 何とか修羅場を潜り抜けた?修一だった。


 笑い声の絶えないとても楽しい時間は、あっという間に過ぎていき、夜は更けていく。

 修一は、イヴも含めたみんなで笑いあえることの幸せを噛みしめるのだった。

ご閲読ありがとうございます。


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