82.夜明け
修一とイヴの二人は、神界へと誘われた。
遂に、朝を迎えた。
空が白み始め、水平線が光り始める。その光景は幻想的で、詩の通り世界が目覚めたようだった。
「やっと朝だ。長かったな。」
「ええ、遊び道具がなかったら、おかしくなってたわ。正解は遊び人だったわね。」
「そういうわけではないと思うぞ(笑)」
そして——太陽が顔を出し、世界を眩く映したとき、それに呼応するかのように視界に光が眩いた。その眩しさに目を閉じ、再び開くと――先ほどとは違う場所――白い空間に誘われていた。
「ここが『宮廷』?…ただの白い空間にしか見えないし、王族らしき人影もないけど。」
「寧ろ、人ひとりいないわよ。とりあえず、先に進んでみない?向こうに何か見えるわ。」
「ああ。」
先に進むと、そこには台座が一つポツンと存在していた。よく見れば、造形は繊細かつ流動的で、素人目にも美しいものだったが、広い空間に唯一の存在はどこか寂しげに見えた。
「これは…?」
「…“神界の秘宝”かしら?」
「これが?」
確かに、台座の上には、三つ足の金属釜があり、そこには白く光る物体が鎮座している。
「まぁ、折角だし貰えるものは貰っておこう。イヴ、取っちゃって。」
「え?私が?」
「うん。船がこの海域から出られない理由に関係するかもしれないし、イヴが取るべきだろ。」
「あぁ、そういえばそうだったわね。でも不老不死はいいの?」
「いらないよ、そんなもの。もともと魔人になったせいで寿命は大分延びたし。それに、不老不死とは関係ないと思うんだよな、それ。まあ、いいから取っちゃって。」
「はいはい。それじゃあ取るわよ。」
そうイヴが告げ、間もなく、白く光った物体が消えてなくなった。
「――――。」
「イヴ、大丈夫か?」
「え、ええ。大、丈夫よ。情報が流れ込んできて…。」
「そっか、無理はするな…よ……。」
イヴの安否を確認しようとした修一だったが、再び意識が遠のいていき――。
――気が付くと、船のソファに臥せていた。
「…修一さん?」
「……あぁ…。大丈夫だ。」
「あぁっ…、良かったです!」
リリシアが抱きつく。
「心配かけてごめん。サーラもありがとな。」
「…はい…。」
二人がソファまで運んでくれたのだろう。目には涙を浮かべていた。修一は、心配をかけ申し訳ないと思う一方で、帰る場所があるありがたみをひしひしと感じた。
「イヴは?イヴもちゃんと帰ってきているか?」
「……。」
「イヴ!イヴー!?」
「……ええ、大丈夫よ。ちゃんと帰ってきてるわ。」
「…っ。…ふぅ、良かった。」
「大丈夫ですか?」
「問題ないわ。心配かけてごめんなさいね。」
「はい。それで、秘宝の方はいかがでしたか?」
「そっちもバッチリよ。結果的に言えば、一定海域外に出られない原因は、コレだったみたい。」
「マジかw」
「…まじ?」
「…いや、何でもない。これで大陸に向かえそうか?」
「ええ。」
「よし、じゃあ、軽く腹ごしらえして、一眠りしたら向かうとしようか。」
「了解。」「はい!」「かしこまりました。」
皆、一晩寝ずにいたため、とても眠そうだ。かくいう、修一も先ほどから瞼が重くて仕方がなかった。
*****
自身の寝る準備を終え、ベッドの端に座ってリリシアの髪を乾かす。
「修一さん、今日は、お疲れさまでした。」
「うん。リリシアもね。俺らがいない間、そっちは大丈夫だった?」
「ええと…はい。修一さんは突然倒れてしまいましたし、イヴさんの反応もなくなってしまい、少しだけ取り乱してしまいましたが、無事に帰ってくるって信じていましたから。」
「そっか…。ありがとな。」
そういって、修一は後ろから、彼女を抱き寄せた。
「っ//はい…。でもとっても不安でした…。今日はこのまま眠りたいです。いいですか?」
「あぁ、もちろんだよ。」
「えへへ…。サーラさんも一緒にどうですか?」
リリシアは、風呂を終え、部屋に入ってきたサーラに声を掛けた。
「いえ、わたくしは…。」
「でも、こうしているととっても安心できますよ。サーラさんも心細かったですよね?」
「…いえ、そのようなことは…。」
「ふふふ。私よりも取り乱していたのにですか?」
「え?そうなの?」
「そ、そんことは――。」
「ふふふ。」
「ね、詳しく教えて――。」
「か、堪忍してください…//」
少しやりすぎたようだ。顔を真っ赤にして俯いてしまった。
リリシアもそう感じたのか、あたふたしている。こういうことを仕掛けるのに慣れてないんだろう、その様子もとてもかわいらしい。
(って今はそうじゃなくて。)
「ごめんごめん。…心配してくれてありがとう。サーラも一緒に寝てくれないか。」
「…わかりました。」
こうして三人一塊となって眠った。
二人は無意識に修一に縋る。
修一は、その力強さに僅かながらの緊張を感じ、改めてその戒めを感じた。
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