7.幽霊船探索
当面の目標を立てたそばから脱線した。断捨離で、『捨てる前に最後にもう一回だけ』ってことあると思います。そして時間がいたずらに過ぎていく。
イヴの提案を受け、ダンジョン探索をすることになった。
ただし、身の安全を確保したうえで。うん、最高だね。
「こっちの準備はOKよ。マスターはどう?」
「うん、こっちも大方OKだ。」
修一は、訓練用に500DPのなまくら剣を買い、訓練に備えた。刀に近いものを探したが見つからず、結局切れ味の悪そうなショートソードになった。
残りDPは500。ひもじい。
「確認なんだけど、モンスターは斬っちゃっていいんだよね?」
「ええ、大丈夫よ。ダンジョンのモンスターは一部を除いて自我を持たないから。」
「きちんと斬っておいた方が訓練になるだろうからありがたいけど、自分の身の安全を確保しながら斬り倒すっていうのは複雑だな。」
「じゃあ、実戦形式にする?」
「…いえ、今回は甘えさせていただきます。」
「ふふ、了解。まぁ実戦形式には出来ないんだけどね。」
どうやらからかわれたみたいだ。
「…切り替えて、訓練しよう。」
「ふふふ。あ、お願いなんだけど、私も連れていって。」
「え?別にいいけど。」
「やった♪よろしくね。」
メニューでマップやモンスターの位置などは確認できるが、イヴの説明が必要な部分があると思い修一は首肯した。
【編成】のモンスター名をみるに、こちらのSAN値をゴリゴリと削ってきそうな感じがしたのだ。
「それじゃ、行こうか。水晶玉を持ち運べば大丈夫かな?」
「ええ、お願い。」
修一はイヴを片手に持ちながら、扉を開けて部屋の外へと足を踏み出す。
その瞬間、ジメッと湿った空気が体を包んだ。
*****
そこは薄暗く、成形された大きな石が散乱している墓地を思わせる場所だった。
「うへぇ…。空気が淀んでる。」
修一はぼやく。
「ここは、墓地のフィールドね。この船で最大規模の広さよ。」
メニュー上で確認すると確かにかなり広い空間であるらしい。暗くてよく見えないが。
修一が目を凝らし辺りを見回す。
すると視界に蠢く影が映った。
「あれは、スケルトン…?」
「ええ、そうね。」
そこにはスケルトン――二本の足で立ち、歩く骸骨がいた。
それは、カラカラと乾いた音を響かせながら、頭には海賊帽をかぶり右手に剣を左手に盾を持ちながら徘徊している。そのままゲームに出てきそうな出で立ちだ。いや、色々とリアルすぎて規制にひっかかるか。
「マスター、どうするの?」
「幸い気付かれてないみたいだし、背後から襲おう。」
「そうね。じゃあ頑張ってね。私のことは置いていっていいわよ。」
「そうさせてもらおうかな。」
イヴをその場に置き、修一は、身をかがめてスケルトンに近づく。
――ドクンッドクンッ…ドクンッドクンッ…。
心拍が急激に増し、自らの緊張に気づく。
その体外にまで響いてるように思える心音は抑えるに能わず、敵に気づかれるのではないかという不安が首をもたげた。
(…落ち着け、大丈夫だ。ここは異世界、やるかやられるかの世界。それに相手はモンスター、斬り捨てて問題はない。…すぅはぁ…よし。相手は骸骨。筋肉がない分防御力は低いだろう。頸椎の間を切断すれば問題ないはず。)
心を決めて、すり足で距離を詰める。
スケルトンはまだこちらに気づいていない。
修一は音を立てず、殺気も漏らさずに近づいているため、隠密能力はかなり高いと言える。
そして――。
「ふっ。」
息を短く吐きながら、修一は水平に剣を振る。
剣は狙い通りの軌道をたどり、スケルトンの首を跳ばした。首がなくなった骸骨はそのまま力なく倒れる。
「…よし。」
修一は集中力を切らすことなく残心を取る。
(剣筋や振りの速度も悪くなかったし、思ったほどの動揺はないな。相手が骸で血が出てないからか、ヒトには見えないからかは分からないけど。それにしても抵抗がほとんどなかったな。)
そのあっけなさに多少の肩透かしを感じながら修一はイヴのもとへ戻った。
「お疲れ様。綺麗に決まったわね。剣の扱いも慣れていたみたいだし、経験があったのね。」
「剣の種類が違うけど、先祖代々細々と剣の流派を継いできた血筋だったからね。」
「なるほどね。それじゃあ先に進みましょうか。」
「了解。」
修一たちは先を目指した。
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