69.日本酒
天ぷら美味しい。
「それじゃ、どんどん揚げていくからね。」
「はい、お願いしますっ。」
最初は揚げるのも手伝うと言っていたリリシアだったが、油が跳ねるのを見て大人しく退いた。彼女の柔肌を傷つけるわけにはいかないので許す。龍族を傷つけられるとは思えないけどね。
「折角だし、お酒も出そうか。天ぷらには――やっぱり日本酒かな。」
そう言って、修一は一升瓶を取り出した。
「あら、また新しいお酒?」
「そうだね。お米で作ったお酒だよ。俺の母国のお酒で、温めても冷やしても美味しいよ。天ぷらに合うこと間違いなし。」
「へ~、マスターの…。それは楽しみね。」
――初孫、峰の雪渓、特別本醸造。すっきりとしたのど越しと、程よいお米の甘み、ふわっと鼻に抜ける香りが天ぷらに合うに違いない。まずは冷酒としてグラスに注いだ。
「とても綺麗な色ね。」
「お水のようでが…香りがすごくいいです。いただきます♪」
「…いただきます。」
透き通ったお酒が光を反射する。さてお味は…。
「うん、美味しいわ。」「はい…美味しいです。」「…美味しい。」
日本酒はカッとくる酒精とその上品な味わいのために、三人のようにふぅっと息つくように美味しいという言葉が零れるのはよくわかる。天ぷらの油の重さにもばっちりで、我ながら良いチョイスだったようだ。
そうして、お酒を呷りながら、サツマイモ・オクラ・シイタケ・茄子・しし唐・オクラと野菜を揚げ、車エビ・キスといった魚に移っていった。
ホクホクの芋類、ジューシーなキノコ、辛味と苦みが最高のしし唐や独特な触感が面白いオクラ…そして、香り高いプリプリのエビと、淡白ながらも旨味が深いキス――それらの油を洗い流す冷酒。うん、最高でした。
大分お酒も進み、気に入ったものを揚げていく二巡目にはいったころ。
「…美味しい。…もぐもぐ…これ大好きです。…ぷは。…お酒も美味しいです。天ぷらにぴったり…。冷酒も美味しかったですけれど、この熱燗もまた違った味わいで美味しぃです。」
サーラがしし唐の天ぷらを食べながら上機嫌で言う。美味しい物と酔いのダブルパンチでか大分饒舌になってきたようだ。説明以外で数行に渡るセリフを初めて聞いた気がする。
「ホント、温度でここまで変わるのね。面白いわ。」
「はい、でもどっちも天ぷらに合います!」
イヴとリリシアにも熱燗は好評だった。
「…ご主人様、おかわり…次はお魚、です。」
「はいはい、キスね。」
「…キスじゃありません。お魚です。…ご主人様、私とキスしたいのですか?」
「えっ?」
「サーラさん?このお魚、キスっていう名前なんですよ?」
「…え?……すみません、忘れてください//」
サーラが顔を微かに赤らめ照れた表情を見せる。いい表情いただきました。
「リリシア達は?おかわりいる?」
「もちろん。私はエビで。」
「では、私はシイタケをお願いします。」
「はい、了解。」
サーラの可愛らしい誤解に癒されながら、和気藹々夜を過ごした。
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