6.とりあえずの目標
未来、スマートフォンが進化したらRPGのメニュー画面みたいなデバイスができるのでしょうか。
「あら、起きたの?おはよう。」
「…おはよう。」
目が覚めてすぐイヴから声がかかる。床で寝たからやはり体が痛む。
早速メニューを使い、昨日と同じパンを買って朝ごはんにした。
残高1000DP。
メニューの【マーケット】を見ていて気が付いたが、元の世界の物が色々と買えるようだ。イヴに確認するとメニューを作ったときにでてきたそうだから、ここら辺のイメージも伝わったのだろう。ありがたい。
これで、牛丼が食べられる――と思ったが、バカ高かった。お値段何と3000DP。さすがに払えない。というよりかは、ダンジョンポイントが圧倒的に足りていない。
異世界とで裁定取引したらこうなるのか…。
いつか食べられるように頑張ろう。
その後も市場を調べていると、価格倍率に多少のばらつきがあるものの、概ねこちらの世界で再現または代替可能なものは価格が安く、そうではないもの高くなる傾向にあるようだった。
また、当たり前だが料理や加工など人の手を加えたものは価格が高くなっている。この世界の技術力がどれほどか分からないが、この世界にない技術や業を用いたものはさらに高くなるのだろうか。
「それじゃ、昨日言っていた断捨離を決行したいと思いまーす。はい、拍手ー。」
「私は手がないから無理よ。」
「…断捨離の目的は、不必要な罠やモンスターをダンジョンに還元することでダンジョンポイントの獲得を狙います。そして同時に、それらの維持にかかっていた費用をなくすことが期待できます。」
【デッキプラン】を見たときに思ったが、このダンジョンは無駄が多い。
まず、大きさ。幽霊船と言われるだけあって、船種はキャラック船。様相はまさにフ〇イング・ダッチマン号といった感じだ。禍々しくも荘厳とした雰囲気は幽霊船としては完璧だが、ダンジョンとしては誰も近づかないんだからマイナスでしかない。
また、強いモンスター群も然りだ。
「だから、可能であればこの船自体の改良もしたいと思うんだけど、イヴ、船種自体を変えることってできる?」
「んー…。船としての機能があればいいんじゃないかしら。幽霊船って船種が決まっているわけではないし、そもそもこの船の場合、幽霊が操船してるわけでもないから。」
確かにこの船、幽霊船の定義に全然あてはまってないな。
*****
船種をも変えられると聞いて、今後目指す指針が決まった。
現状として、ダンジョンポイントが圧倒的に足りないため、要塞のような船を作ることは出来ない。
そのため、ダンジョンポイントがある程度溜まり船を要塞化するまでは、恒常的に且つ安全にダンジョンポイントが手に入るようなシステムを作り、知恵が高いものや戦闘能力が高いものとはなるべく接敵しないようにする。
要するに、火力や継戦能力は捨て、装甲と航行速度に極振りだ。
…ええ、逃げる気満々ですが何か?
わざわざ、敵を船上にあげる方が阿呆なのだ。大砲やらレーザーでヒット&アウェイ。完璧じゃないか。
ちなみにイヴの評価はというと…。
「あはははっ。こんな気弱なダンジョン他にないわぁ。」
先ほどから爆笑している。
「やかましいわ。実戦経験がないただの人間が、魔物に敵うわけがないだろ。」
先日の食事時にゴブリンやらマッドスネークなどを聞いてから分かってはいたが、この世界には魔物が存在する。
生前、向こうの世界で修一は刀を修めてはいたが、こちらの世界でどれほど通用するかは全くの謎である。
「ふふふ、確かに実践経験は大事よね。ならこの船で鍛えてみたら?」
「…ダンジョンで鍛える?」
「そう、本来ならダンジョンモンスターによるコアやマスターへの殺傷行為は禁じられているのだけど、訓練という扱いにすれば一定程度それを無視できるの。」
「なるほど。訓練なら死ぬこともなさそうだし、いいかも。」
「それに探索モードで行えば、ダンジョン探索の気分も味わえるわよ。」
「素晴らしい。すぐにやろう。」
「ふふ、了解。」
ということで、訓練という名のダンジョン探索をすることなった。
断捨離?そんなのはあとあと。
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