68.天ぷら
紫雲――アジサシの仲間のキョクアジサシという種は、その名の通り北極圏と南極圏を往来するため18万kmを無着陸で飛行するそうだ。紫雲の具体的な種は分からないが、それなりの身体能力を持っているのだろう。
紫雲の様子を確かめた後は、夕食にした。
メニューは、天ぷらだ。様々な食材を、小麦粉と鶏卵で作った衣をつけて、天ぷら鍋などを使用して、食用油で揚げるというシンプルなものだが、サクサクに作るのにはコツがいくつもあり意外と技術を要する食べ物だ。
今回は、野菜、魚、キノコなどを順にあげていきながら、食べていくスタイルにした。サーラやリリシアにも手伝ってもらいながら、食材のカットを済ませ、しっかりと水分を抜いておく。『たね(食材)七分に腕三分』と言われるほど、素材とその下処理が天ぷらの決め手とされているため、エビの尻尾を切り開いたり隠し包丁や飾り包丁を入れたりなど、しっかりと行う。
次は衣液だ。近頃ではベーキングパウダー等を用いた簡易的な天ぷら粉も販売されているが、今回は鶏卵・冷水・小麦粉で作ることにした。水3:卵1+粉4の比率で合わせるが、混ぜすぎて温くなるとグルテンが生成され、天ぷらの揚げ上がりの食感が悪くなるため、冷やした水や小麦粉を用い、さらには氷魔法でボウルを囲った後、軽く数回サッと混ぜる程度に留める。
油には太白油を用い、揚げる順番の『火の通りづらい野菜→火の通りやすい野菜→魚→かき上げ』に合わせ、170度まで熱する。
「よし、準備完了かな。」
「どんな料理なのか楽しみね。」
「こんなに油を消費する料理ですからね…。どんな料理なのでしょう。」
「…こくり…。」
「それじゃまずは、蓮根、カボチャ、サツマイモからだね。」
まずは温度を確かめるために、衣液を数滴垂らして様子を見る。
――底について直ぐ、浮かび上がった。少し高めだが食材を入れれば油の温度は下がるためこのくらいでいいだろう。
打ち粉をして食材を落としていく。
―――ジュワァァアアアアアア。
「「「!?」」」
女性群の驚く様子を傍目に、天ぷら粉を箸にまとわせ振り落とすようにして食材を少し叩いて、華を咲かせる。それをしばらく繰り返す。
―――シュゥゥゥ…パチパチパチパチ。
音が変わり、表面が程よく硬くなった頃がいい具合だ。
浮き上がったそれらを箸で素早く掬い、油をしっかりと切る。そして、余分な油を吸うための天紙を敷いた皿の上に盛り付ければ完成である。
「はい、まずはカボチャ。揚げたてが一番美味しいから、出来たらどんどん食べちゃって。合わせるなら、塩かめんつゆ、ソースをかけて食べてね。」
そう言って、修一も自分の分を口に放る。
――サクッ!…はふはふ………ごくん。
うん、美味しい。サクサクの衣にホクホクのカボチャ。ふりかけた塩のしょっぱさがカボチャの甘みを強調して、その豊潤な旨味が口の中に溢れる。
「「美味しいわ(です)!」」
「…こくこく。…素材の美味しさのすべてを引き出してます。―――究極の味です。」
続けて揚がったレンコンを食べながらサーラが評する。気に入ってくれたようで良かった。
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