65.Side サーラ①
今回は、サーラ視点のお話です。
傍説が頻発してしまい、すみません(._.)
無口クールのデレの攻撃力、半端ないって。
私が、最初のご主人様――クレイシュ様に出会ったのは、7歳の時だった。当時のことはあまり思い出せないが、生活が苦しかったということだけは覚えている。そして身寄りもなく飢えに飢えた私は遂に盗みに働いた。ターゲットは、裕福そうな人。今思えばなんと浅はかなことかと思うが、当時の私にそんな余裕も知識もなかった。ただ、この飢えを抑えることだけを考えていたのだ。そして、目を付けたのがクレイシュ様、私の――お父様だ。
悪事は容易にバレた。それは当然でクレイシュ様は当時、貴族でありながら冒険者として名を上げていた方だったのだ。悪事がバレ、さらに相手が貴族だと知ったとき、私は自らの最期を悟った。しかし、クレイシュ様はそんな私の頭を撫で、許して下さったのだ。拾い、仕事を与えてくださったのだ。
『子供がそんな目をしてはいかん。世界はもっと希望に満ちている。』
口癖のように私に言い聞かせていた言葉だ。そしてその言葉通り、私の世界は一変した。メイドとしての家事能力はもちろん、表舞台に出ても恥ずかしくない教養と裏社会でも通用する戦闘術、世界の広さを教えていただいた。
だから、もっと素直になっていればと後になってどれほど後悔しただろう。クレイシュ様が亡くなられたと聞いたとき、耳奥で世界が壊れる音がはっきりと聞こえた。
仇を討っても、クレイシュ様は還ってはこない。それだけで全てがどうでもよくなり、私の世界は再び暗闇に閉ざされた。
だから今回、クラウン様の初陣に同行する命を受けたとき、終わらせることを決めた。結局、終わらせることは出来なかったけれど…。
しかし、新しいご主人――修一様はそれを肯定してくださった。なんのつながりもないはずのクレイシュ様が私の御父君であることを認めてくださった。そのことで私はどれだけ救われただろう。感謝しても、し足りない。
また、ご主人様はおっしゃった。
『君は父から世界の広さを教えてもらったそうだね。…じゃあ俺は、君に世界の美しさを見せてあげよう。』
ご主人様の目に映る美しい世界を私も見ることが出来るのならば、同時に、ご主人様の目に映る美しい世界に、私がいても尚美しいと思っていただけるのならば、それはどんなに幸せなことだろうか。
それにここにおられる方々はただものではない。ご主人様は、あらゆる状況を想定した上で隙をあえて作られている。正直、私では寝首を掻くどころか、間合いにさえ入れないだろう。リリシア殿は倒す術がイメージできず、コア殿に至っては敵対する気さえ持ちえない。しかしながら、本来ならばとても恐ろしい環境のはずなのに、なぜかとても温かい。先ほどの3人の様子を思い出し、自然と頬が上がるのを感じた。
(『サーラ、ほらもっと笑いなさい。そんな無表情じゃ折角の美人が台無しだ。新しいご主人に飽きられてしまうぞ。』
…クレイシュ様、うるさいです。表情筋がご臨終した私に無茶を言わないでください。)
…私はきっと大丈夫です。名こそ継げない私ですが、貴方様の意志はしっかりと私が継いでいきます。だから、安心して眠ってください。
今まで、本当にありがとう。お父様。
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