56.改修祝いのBBQ
動力源の魔法石の大きさは、こちらの世界の総エンジン体積の⅓程度だ。エンジンルームの分、かなり広く船を使えるようになっている。ファンタジー最高。
※総エンジンと書いたのは、クルーザーは一般的にエンジンを二基積んでいるため。
「よし、それじゃ今日は天気もいいし、改修記念にBBQをしよう。」
「「バーベキュー?(ですか?)」」
「そう、バーベキュー。材料を直火であぶり焼いて食べる料理だよ。シンプルだけどおいしい、野外料理や宴の定番だね。」
「龍族の唯一の得意料理に近いですね!」
ち、近いのかな…?思うにそちらは丸焼きではないだろうか?
「へー。火はどうするの?船内で直火は嫌だって言っていなかったかしら?」
「そのために、これがあるのです。」
そう言いながら、修一はキャビン入り口前にある台の蓋を上げ、BBQコンロを披露する。
「えーっと、この網の上で焼くということですか?」
「そういうこと。シーオーガを焼いて食べてみようと思って。」
「高級品ですので私は食べたことはありませんが、とても美味しいという評判は聞いたことがあります。」
「それは、楽しみだ。」
修一は、BBQコンロに火をつけ、シーオーガの切り身を並べていく。BBQコンロはスイッチ一つで火が付くガス式もあったが、炭火焼きの物にした。日本人なら絶対炭だ。
ジュジュゥゥウウ。
肉の焼ける良い音がする。最初は、所謂カルビからだ。今日は、他にロースとバラを用意している。因みに解体は一切していない。食べられるところを残してダンジョンに吸収してもらったのだ。流石にヒト型モンスターを捌くのは精神的にきついと思っていたのでありがたい。ダンジョン、最高に便利です。
「…ジュゥゥウゥウ。」
分析魔法に相談しながら、焼き加減をみる。間もなくして辺りに芳ばしい香りが漂いはじめた。
「音と匂いでお腹が~。」
リリシアもこのダブルパンチにやられているようだった。もう少しだからね。
「―――よし!もう食べられるかな。」
「やった!」
「待ちくたびれちゃったわよ。」
「塩かタレをかけると良いよ。おすすめは塩からだね。」
「はい!それじゃあ塩にします。イヴさんも塩でいいですか?」
「ええ、ありがとう。さて、食べましょうか。」
「待て待て、一応記念日だからね。乾杯するよ。」
「はい、かんぱ~い。」
「乾杯です!」
「えっ!?」
「「…もぐもぐもぐもぐ。うんまぁ~い!(美味しいです!)」」
(えー…。…俺も食べよう。)
修一も塩をかけ、肉にかぶりつく。そして慄く。
(――こんな旨い肉がこの世界にはあるのか。)
噛んだ瞬間に、甘い肉汁と野性的な旨味が口内を一気に襲ったのだ。
しっかりとした歯ごたえと蕩けていく脂身、そして噛めば噛むほど染み出てくる新たな旨味、今まで食べたどの肉よりも、野性的であり同時に繊細な味がする肉だった。加えて、力が漲るのが分かった。
(これが、魔力を持つ者の肉か。新鮮な肉の旨味に熟成されたような奥深さ、相反するはずの概念が見事一つにまとまった味だ。旨い。ただただ旨い。)
「「「あ。」」」
網の上の肉たちは一瞬で消え去っていた。
その後も三人の勢いは落ちることなく、次々に焼いては食べ、ぺろりとすべての肉を平らげてしまったのだった。
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