53.シーオーガ
夜食はなんだか特別感があって、美味しいよね。次は手打ちに挑戦してみようかな。
昨晩、話し合った甲斐もあり、作りたい船の概要は見えてきた。今回は基礎構造が出来ているので、改築というより増築に当たるため、そこまでのダンジョンポイントは必要ないが、今一つ足りない。もうしばらく時間がかかるかなと思っていると、電探に大きな影が現れた。
「何か、大きなものが近づいているわね。」
「みたいだね。そこまで長く留まっていたわけじゃないんだけどな。」
停船時間が長いと魔物が寄ってくるので、普段から定時的に移動をしている。今は、停船して1時間程度しか経っていないのだが、目をつけられたようだ。
「逃げる?」
「うーん、どうしようかな。ダンジョンポイントも稼ぎたいし、勝てそうなら倒しちゃいたいな。アクティブソナーに魔力を乗せるなりして、情報を読み取れるか試してみて。」
「了解。魔力はマスターのを借りるわよ。」
「相手は、シーオーガみたいね。」
少ししてイヴが告げる。
「シーオーガ?」
「海に住む鬼です。理性を有しますが、非常に好戦的な魔物で、船をよく襲い人を食べるため、これも討伐が推奨されています。しかし、サハギンと桁違いに強く、Cランクに相当していたはずです。」
「逃げた方がいいかな?」
「数が一匹なら問題ないと思います。」
「了解、迎い討っちゃおうか。」
「はい!」
停船し、結界魔法で足場を作り迎撃の準備をする。
『ぐぉぉぉぉおお。』
威嚇をしながらシーオーガが乗り上げてくる。
3mはあるだろう巨躯と、修一の身長は優にありそうな大きく発達した両腕。手には、禍々しいオーラを放つ巨大なこん棒を持っている。容貌は人のそれと大きな差はないが、青黒い肌とぎらついた目、大きな牙がその狂気性を表している。分析魔法によると、レベルは63、リリシアの言う通りCランクだ。
得物を前に興奮が抑えられないのか、けたたましく鼻息を鳴らしながら、突っ込んでくる。
「来たわよ!」
迎い撃つべく修一たちも前へ進み出る。
両者の距離は一瞬で詰まった。
最初に動いたのはリリシア。魔法弾を2発シーオーガの肩を狙い、放つ。しかし、これは体勢を横向きにして躱される。刹那、修一がシーオーガの背面方向に滑り込むように前に出る。対してシーオーガは、懐に入れまいと横殴りにこん棒を振る、が、これは空を切った。修一が間合いをずらしたのだ。
隙が生じ好機と見た修一は、そのまま斬りに踏み込む——すると、突如シーオーガの体が膨らんだ。いやな予感が脳裏をかすめ、修一は反射的に結界魔法でバリアを展開、次の瞬間、衝撃が襲った。
「…隙を魔法で潰すとは中々やる。」
何とか衝撃波を防いだ修一だったが、バリアは霧散し体勢を崩した。
「修一さん、前!?」
衝撃でふらつく修一に止めを刺すべく、シーオーガがこん棒を振り下ろす——が、次の瞬間シーオーガの首が吹き飛んだ。
「…お疲れ様。全部作戦通りに進んだわね。」
「リリシアが、オーガは身体強化と衝撃波の魔法が得意だって教えてくれたからね。」
そう、すべては修一の作戦だった。敵が踏み込んだ瞬間、足場である結界に穴をあけ、片足を沈ませることで体勢を崩し、首を飛ばす。これが、作戦の全容だ。踏み込んだ足が沈んだことで間合いが縮みこん棒が届かなくなる上に、身長差を失くし、首を差し出すような体勢にすることができる、まさに一石二鳥の作戦だったのだ。オーガは何が起こったのか分からぬうちに息絶えただろう。
「正直、想定していたより弱かったね。あれなら、バリアを破壊させ結界が割れるものとミスリードさせ、相手を油断させる必要もなかったな。」
「そもそも、リリシアの魔法弾で十分だったんじゃないかしら。」
「そうだな。オーガの強さが分からないから、万全を期したんだけど無駄だったな。俺でもタイマンで余裕で斬れた。」
「誰も怪我せず終われたので良しとしましょう?」
「お、レベルが6上がってるし、討伐報酬で200万DP入ってる。こんなにもらえるんだね。」
「私も4レベル上がりました。シーオーガはCランクですし、人族ならば本来は複数人が数日かけて討伐するものですからね。それに、海戦になることも考慮すると妥当かと思います。」
「なるほど、確かにね。でもありがたい臨時収入だ。おかげで、船の改修もできそうだ。」
【名前】朽木修一 【レベル/総合ランク】35/A
【名前】リヴィア=リリシア=ファルジール 【レベル/総合ランク】38/SS
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