4.異世界ご飯
雇われた会社はひどい金欠だった。同情するなら、ダンジョンポイントをくれ!あ、飯でもいいです!
とりあえず、ご飯を食べよう。
死活問題であるダンジョンポイント不足にさらなるダメージを与えることになるが、仕方がない。腹が減っては戦は出来ぬのだ。
(それに、はじめての異世界ご飯、楽しみじゃないといえば嘘になる。)
「イヴ、お腹が空いたしご飯にしようかと思うんだけど、どうすれば注文できる?操作盤みたいなものはないか?」
「操作盤?食べたいものを言ってくれれば、私が出すわよ?」
ダンジョン運営をするためのデバイスがあり、食事の注文もそれで行うものかと思ったが、そうではないらしい。
「そう?じゃあ、ダンジョンポイント500程度で食べられる肉料理はある?」
この世界の適性価格が分からないが、日本のワンコイン定食をイメージして尋ねた。
「500ね。…500じゃ、ゴブリンしかないわね。あっマッドスネークとかスモークスパイダーなんかもあるわよ?」
……ゴブ、リン?マッドスネーク?
…は?なにそれ?おいしいの?いや、美味いわけがない。反語。
「…どうかしたの?マスター?」
「いや、大丈夫。何でもない。」
色々と衝撃的で思わず、現実逃避をしてしまった。
「どれも食べたことないんだけど、おいしいの?」
嫌な予感を多分に感じながらも修一はイヴに聞く。
「私は食事を摂る必要がないから食べたことないけれど、説明文にはどちらも不味いって書いてあるわ。」
「そっか。やめておくわ。」
やっぱり不味いんかいっ。
(まぁ、ゴブリンがイメージ通りの姿なら美味しいわけがないし、スネークとスパイダーって名前からすると蛇と蜘蛛だよね。美味しいとは思えないな…。)
結局、ダンジョンポイント500で買える且つ食べられそうなものはパンとスープしかなかった。
イヴにお願いして出してもらう。
彼女の了承と共に、ぽわぽわっと淡く発光し、床にパン1つと小さい器に入ったスープが現れた。
物理法則が気にはなるがそれよりも腹が限界を迎えたようだ。食べることにしよう。
「いただきます。」
修一は、手を合わせて呟き、パンを手に取りかぶりついた。
パンはライ麦パンのようだ。硬くそして重い。スープも、味が薄い上に芋がドロドロに溶けており、正直美味しくはなかった。
カチカチのパンを、ドロドロのスープで流し込むことになったが、空腹という最高の調味料も相まって、修一はそれらをぺろりと完食した。
(ゴブリンよりはマシだ。ありがたく頂戴します。)
そして食後、一息ついていると――。
「ふふふ、お味はいかがだったかしら?」
イヴが楽し気に聞いてくる。
「……。」
「次は、ゴブリンにする?」
…楽しんでやがる。間違いない、確信犯だ。
こうして、はじめての異世界ご飯は何となくひもじく終わったのだった。
(いつかは美味しい異世界料理を食べたいものだ。)
修一は心の中でぼやいた。
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