48.リリシアと箸
リリシアの髪を乾かした。
ちなみに魔法を使って一瞬で水分を抜き取り、髪を乾かすことも可能だ。ただ、ものすごく髪が痛む。10万本ある髪の水分を1本1本調整するのは不可能なのだ。
朝、頬の違和感で目が覚める。先に起きたリリシアがつついてきていたようだ。
「…おはよう。」
「おはようございます。起こしちゃいましたか?」
「大丈夫。…おいで。」
「えへへ…ぎゅぅ。」
ベッドで少しいちゃついて二人で部屋を出る。
カレーライスを二人で作ってから2日が経ったが、この間でリリシアは随分と甘えん坊になった。と言うのも、毎晩必ず修一を訪れ、髪を乾かすようねだるのだ。また、以前は何かと遠慮する癖があったが、最近は素直に受け取るようになった。思い切り甘える経験の少なさから、ぎこちないところもあるが、できる限りのことはしてあげたいと思う。なぜだか、イヴからもお願いされたし。
「おはよう。」
そのイヴが挨拶する。
「「おはよう(ございます)。」」
「朝ご飯、何か食べたいものある?」
「「(お)魚がいいわ(です)。」」
仲良く揃った答えが返る。
「了解。」
ご飯とみそ汁、焼き魚を用意する。魚はアジの干物だ。ザ日本の朝ごはん、気に入ってくれるといいのだが。
「美味しいです。焼いたお魚は食べたことがありますが、こんなに美味しくはありませんでした。」
「それは、よかった。干物を――乾燥させて旨味を凝縮した魚を焼いたからかな。」
「…食べ物を乾燥させてしまうなんて、すごいこと考えるのね。」
「熟成されて美味しくなるんだよ。保存も利くようになるしまさに一石二鳥だね。魔法のない世界では保存方法は死活問題だったんだよ。」
「この世界でも保存魔法や氷魔法が使えるのは裕福な人達に限られますから、その重要性は分かります。」
魚の骨と格闘しながらリリシアが言う。
「リリシア、骨大丈夫?箸慣れてないんだし、俺が取ろうか?」
「えっと、お願いしてもいいですか?」
「もちろん。」
最近リリシアは箸に挑戦し始めた。苦戦しているようだが、貴族の教養が利いているのか、筋がいい。すぐに習得できるだろう。上手に掴めず、ワタワタしているリリシアはとても可愛かった。動画に保存出来たらよかったのに。カメラか…。高いだろうけど買っておこうかな。
うまくなったら、玉こんにゃくで豆運びでもさせれば、またワチャワチャやってくれるだろうし良い画が撮r――。
「マスター?変なこと考えてるでしょ。」
ぎくり。な、何のことかな~。
「すごくわかりやすい顔していたわよ。リリシアに変な事したら許さないわよ。」
「は、はい。肝に銘じておきます。」
「ふふっ。イヴさんありがとうございます。」
「ふふふ。良いのよ。マスターに何かされたらすぐ私に言いなさいね?」
「はい♪」
二人が仲睦まじく何よりだが、最近修一の立場がどんどん下がっているのは気のせいではないだろう。
「――はい、とれたよ。」
「ありがとうございます。うん、美味しいです。このお醤油?…もすごく魚に合っていて美味しいですね。」
「我らが日本人の発明した万能調味料だよ。いつかは、この世界の調味料で料理してみたいんだけどね。」
「楽しみにしているわ。」
へーい。
こうして、箸と格闘するリリシアに癒されながら朝を過ごした。
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