47.修一、ドライヤーになる
はじめてのホームシックはカレーだった。
「ふ~、腹いっぱい。ごちそうさま。」
腹をさすりながら言う修一に。
「私もお腹いっぱいです。本当に美味しかったです。」
手を合わせてリリシアが続く。
「気に入ってくれたようで良かったよ。」
「またよろしくね。」
イヴも気に入ってくれたようだ。
「今度はリリシア一人で作ってもらおうかな?」
「それはいいわね。楽しみにしているわ。」
「ええ!?自信ないですぅ。せめてもう少し練習させてくださいっ。」
「あはは。そうだね。」
その後、修一がシャワーを浴び、酒を手に室内キャビンでくつろいでいると、修一の後にシャワーを浴びていたリリシアが出てきた。
「リリシアも何か飲む?」
「ありがとうございます。いただきます。」
最近彼女がはまっている梅酒(お湯割り)を渡す。受け取ったリリシアはそのまま修一の隣に座った。
「――ぷは。美味しいです。」
「いい飲みっぷりだね。でもまずは髪を乾かしたら?」
「そうですね。そういえば、修一さん。」
「ん?どうした?」
「イヴさんからお聞きしたんですが、昔女の子の髪を乾かしてあげていたそうですね?」
リリシアが脈絡なくそんなことを聞く。
「女の子って言っても、妹だぞ?」
「…その…私にもお願いしてもいいですか?細かい魔法が苦手なので、なかなかきれいに出来ないんです。」
確かにリリシアは龍族故なのか、その莫大な魔力量のせいなのか、緻密な魔力操作を苦手としており、髪を乾かす微風の調整に苦労しているようだ。
(おそらくそれをイヴに相談したら俺にやってもらえばと言われたんだろうな。)
「まぁ、全然問題ないよ。向こうじゃ毎日のようにやっていたしね。」
まぁ、ドライヤーは持ってないから魔法ですることになるけど。
「ありがとうございます!」
嬉しそうにニコニコしながら背を向けた。
「それじゃ始めるよ。」
まずは、余分な水分を抜くためにタオルでリリシアの頭を覆う。濡れた髪は想像以上に痛みやすいので、こすらないよう揉みこむように優しく拭き取る。今度、洗い流さないトリートメントを買ってあげようかな。ほどよく水分が抜けたら、櫛を使って毛の絡みをほどいていく。毛先、中間、根元の順に優しく梳かした。
そして、風魔法を使って乾かしていく。自然乾燥すると分け目が割れてしまうため、最初は前髪だ。前髪が乾いたら、キューティクルを傷つけないよう髪の流れに沿うように根元から風を当て、乾かしていく。髪を梳かすように手で風の道を作り、根元にしっかりと風を当てる。ここで軽く擦りながら乾かすとふんわりとした仕上がりになる。一度パサついてしまうと変な癖がついてしまうのでオーバードライにならないように注意しながら、頭頂部、中間部、毛先と順に乾かしていく。全体的に9割ほど乾いたら冷風にして切り替えて髪を冷まし、最後に櫛で梳いてあげれば完成だ。
「よいしょっと。こんなもんかな。」
「ありがとうございます!いつもと違ってすっごくさらさらです♪」
「うん。すごく綺麗だよ。」
「あ…ありがとうございます//あの…良かったらまたお願いしても良いですか?」
「もちろん。」
背を向けたリリシアがそのまま修一にもたれかかった。
「ん?どうした?」
「いえ、何でもありません。ただ。イヴさんがおっしゃっていた女性というのが妹さんで良かったなと思っただけです。」
どうやらやきもちを焼いていたようだ。こんな美人に妬いて貰えるとは、なんと幸せなことだろうか。そしてそれ以上に、彼女が素直に感情をぶつけてくることが嬉しかった。
修一は彼女の肩から腕を回し、そっと抱きしめた。
「あっ…♡。ありがとうございます。」
そして、振り向き見上げる彼女にキスをした。
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