45.カレーライス(前編)
相変わらず、イヴは勝負に弱い。
こちらの世界に来て約2週間、どうしても食べたくなったものがある―――カレーライスだ。
日本人のソウルフード。強烈にカレーが食べたくなる衝動は日本人なら誰でも身に覚えがあるだろう。なので、今日の夕飯はカレーにすることにした。否応なくテンションが上がる。
そしてカレーと言えば、小中学校の野外活動で、みんなでつくるもの。折角なので、リリシアも料理に挑戦することになった。
「ふふふ。修一さんったらすごく嬉しそう。カレーとはそんなに美味しいものなのですか?」
「味はもちろん美味しいけれど、時たま無性に食べたくなる味なんだよね。向こうの世界の船乗りは1週間に一度必ずカレーの日があったくらいだよ。」
「そんなに?」
「いやまあ、曜日感覚を失わないようにとか、寄港する際に冷蔵庫を空にしやすいとかが主な理由だけど。」
「ふふふ。まぁ楽しみにしているわ。リリシアも頑張ってね。」
「はい!頑張りますっ。」
「よし、それじゃあまず野菜を洗って、皮をむいて食べやすい大きさに切っていくよ。」
「は、はい。『クリエイト・ウォーター』」
魔法をつかって、ジャガイモと人参を洗う。
「よし、じゃあ次は皮むきだね。皮に小さな穴を開けて、皮と身の間に魔力を集めれば、簡単に剥けるよ。道具を使ってもいいけどどうする?」
説明しながら実際にやって見せる。人参の薄皮がはらりと落ちた。
「…まだ私には出来そうにないので道具を使います。」
「了解。じゃあこれ、手を切らないように気を付けて。」
「は、はい。」
「―――よいしょ…と。こんな感じでしょうか?」
「うん、きれいに出来てる。ばっちりだよ。」
「やった。ありがとうございます♪」
時間は多少かかったが、丁寧に剥かれていた。
皮むきが終わったので、次はカットだ。
「それぞれ食べやすい大きさに切っていこう。」
リリシアにジャガイモや人参、鶏肉を切ってもらい、様子を見ながら修一はお米を磨いでおく。ここまでは滞りなくできた。しかし、問題は玉ねぎだ。
「目が、目が痛いですぅ~。」
「あははは。そういうものなんだよ、玉ねぎは。」
「なんなんですかこれ~。魔物ですっ。悪魔ですっ。」
「あははは。」
「ぅう~、意地悪です。」
やっとの思いで玉ねぎを切り終えたリリシアが修一の胸をポカポカと叩きながら抗議する。
「よしよし。ごめんね。カレーって向こうでも料理デビューの定番だったんだけど、玉ねぎは通過儀礼なんだよね。」
修一が頭を撫でながら謝る。
「ぐす…。」
「そんな切るだけで涙が出るもの、食べて大丈夫なの?」
「全然問題ないよ。というか、イヴ食べたことあるよ。」
「ええ?嘘よぉ。」
「ホントホント。牛丼に入ってたんだよ。」
「こ、これが、あれに、入っていたのね…。」
「まぁ安全だし、美味しいから安心して。」
「…期待しないで待ってるわ。」
一悶着あったが、準備が終わったので、料理に入る。
まずは、鶏肉に下味をつけ炒め、表面が焼きあがったら別皿に取り出し、次に玉ねぎを炒める。炒めてから数十分玉ねぎが飴色になるころ、船内には玉ねぎの甘い匂いが漂い始める。
「わぁ、いい匂いです!」
「リリシアが頑張った甲斐がありそうね。」
そして、人参やジャガイモ、先ほどの肉を加え軽く炒めた後、水を入れて蓋をした。
「よし、これで一煮立ちするまで待つよ。」
「はい!」
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