43.リリシア凸する
リリシアは覚悟を決めた。今度は修一の番。
コンコンコンコン。修一が部屋にいると、戸がノックされた。
これをするのはこの船に一人しかいない。扉を開けてリリシアを中に招く。しかし、うつむいた彼女はその場を動かない。
「…?リリシア、どうしたの?」
「…えっと…その。」
「体調悪いの?さっきも気だるげそうだったし。」
「いえ、大丈夫です。さっきまでそう見えたのは―――だったからですし。」
「ん?」
「…すぅ~は~。―――修一さんは、私がどれだけ感謝しているのかわかってないです。」
「結構謝辞はもらっているしそんなことはな――。」
「それに私がどれだけ修一さんのことが好きかも。」
「えっ?」
そしてリリシアは修一に抱き着いた。ふわっとリリシアの良い香りが修一に届き、すっぽりと腕の中に収まった彼女が、修一を見上げ二人の目が合う。
「えっと――。」
「修一さんは私のことは嫌いですか?」
「全然、そんなことないよ。」
「なら私を貰ってください。私のすべてをあなたに捧げます。」
「そr――。」
思わず出そうになった確認の言葉を寸でのところで留める。賢い彼女がその言葉の意味を違えていることも中途半端な気持ちで訪れることもないだろう。つまり、本気なのだ。それに対しその気持ちを確認することは、彼女を侮辱するのと同義と言えよう。答えは二択、認か否か。それしかない。
ただ感情で決めてしまってはいけない。逸る鼓動を抑え、彼女をそっと引き離す。
「ありがとう。リリシアみたいな美人で優しい子にそう言ってもらえて、すごく嬉しい。正直そうなったら嬉しいって考えたこともあったし、今すごくドキドキしてる。」
「…はい。」
「感情的に言えば、今すぐ抱きしめてしまいたい。ただ、君は俺にとって大事な人だ。無責任に君を傷つけたくない。…俺はこの世界ではまだ幽霊みたいなものだ。何の力もないし、何処に行くのかも不明確だ。色々と不安定なんだよ。」
言葉を選びながら話す。
「――分かっていました。そうおっしゃるのは。でもそんなことはもう、どうでもいいんです。」
「えっ。」
思いがけないリリシアの言葉に驚いていると、次の瞬間修一は布団の上に倒れこんでいた。押し倒したのはもちろんリリシア。
「もういいんです。色々と考えてくださっているのは分かっています。それが私のためなのも。でもいいんです。正直迷惑をかけることの方が多いと思いますが、考えているだけでは修一さんには届きません。なので決めたんです。もう迷わずに進むことにすると。そのせいで苦労することがあっても私は修一さんのために全力を尽くします。私のすべてをかけてあなたを守ることを誓います。なので私を、私のすべてを貰ってください。あなたの力にならせてください。修一さん、私はあなたを愛しています。」
リリシアの整った顔を見つめる。気丈に振舞っているが彼女の瞳は不安で揺れており、その目を見て修一は胸が締め付けられるのを感じた。
(こんな目をさせたかったのではないはずなのに。俺もまだまだだな。)
自嘲する修一はふと思い出す――。
(『おにぃは考えすぎなんだよ。計画的なところは尊敬しているけど、男なんだから動くべき時を逃すのはかっこ悪いよ?何かあっても何とかしてきたのがおにぃじゃん。ドタバタしながらふたりでやってきたこと、私は幸せだったよ。…おにぃ、自分に嘘をつかないで。』
あぁ、咲月はこういうことを言っていたのかもな。俺の気持ち―――それは。)
「俺は…リリシアが好きだ。この世界に来て、イヴが居てくれたから孤独ではなかったけど、温もりで心を満たしてくれたのは君だった。謙虚で優しく、まっすぐに俺を好いてくれる、そんな君が好きだよ。」
リリシアの頬に手を添える。その頬がほのかに赤くなり熱を帯びた。
「そういえば、友人のことはいいのか?好きなんじゃないの?」
「…?好きですよ?」
「え?…え?」
「あ、言ってませんでしたっけ?友人は女性の方ですよ?」
「あ、そうなんだ――。」
「ふふ…すみません。」
「いや、俺も確認していなかったし…。ちょっと不安で確認できなかったところもあるけど…。」
「それって…ありがとうございます//…それで、私を貰ってくださいますか?」
「ありがとう、リリシア。必ず幸せにすると誓うよ。」
そして、彼女を優しく引き寄せ、唇を重ねた。二人の長い夜が始まった。
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