38.居合術
オルカアタックと言うのは、海岸にいるアザラシを捕食するために砂浜に突っ込むシャチの技だ。必殺技と言っても過言のないものだが、勢いあまって乗り上げすぎると海に戻れなくなるため、命がけの技となっている。
修一は走りくる敵を観る。
威嚇なのだろうか、両手広げ迫ってきていた。
手には銛のような得物を持っているが、
(何とも脆そうなものだ。構わずに斬り捨ててしまって良いだろう。)
そう判断した修一は、右手を柄に添え、右足を前に出した。腰を落としすぎず自然体で相手を迎え待つ。
双方の距離が近づき、先に動いたのはサハギン。銛を振り上げる。
修一はまだ動かない。
サハギンはそれを相手が怖気づいたのだと考えたのだろう、ニヤリと笑い、銛を振り下ろす。銛はそのまま修一の頭に当た――ることなく、地面(結界)に当たってはじかれる。その刹那。
「ゥギャッ―――!?!?」
サハギンの首が飛んだ。
「「な(え)!?――。」」
イヴと、早々に魔法弾を飛ばしサハギンを吹き飛ばしたリリシアが修一の戦いに慄く。
なぜなら、彼女らから見て修一はただ一歩進んだだけだったからだ。サハギンが銛を振ったと思えば、次の瞬間首が飛んだのだ。見やれば、修一が抜いた刀を右手に持っており、それで斬ったことは分かるが、一体いつ抜いたのか二人にはさっぱりわからなかった。
「ふぅ。こんなもんかな。…うん、やっぱりこれは良い刀だ。」
修一が刀を納めながらつぶやく。
「マスター、今…何をしたの?」
「何って、刀で斬っただけだよ。」
「刀を抜いたところが、全く見えませんでした。」
「龍族の目でも見えないとは、捨てたもんじゃないね。あれは、居合術って言って高速で刀を抜いて敵を斬り捨てる技だよ。」
「居合…術…ですか。」
「恐ろしい技ね。」
「リリシアに二回目は通じないだろうから、会敵して一度きりの必殺技だね。」
「私、あの一回じゃ見破れる気がしないのですが…。」
(確かに、自分史上最高の抜刀速度が出ていたからな。魔人になったことと、【スキル】朽木流剣術と炯眼が利いたのだろう。
…それに、亜人とは言えはじめて人を切ったのにも関わらず全く罪悪感や嫌悪感が湧かない。訓練していたとはいえ、これも人間を辞めた影響なのだろうか。生きるか死ぬかの世界で甘いことは言っていられないし、女性の前で嘔吐くなどかっこ悪いところは見せなくないので良かったけれど。)
「二人とも強くて安心したわ。どうする?まだ続ける?」
「そうだね。無理しない程度にもうしばらくは続けたいかな。」
「私は全然大丈夫です!」
「キュキュー!」
その後、それぞれ7匹ずつサハギンを狩った後、休憩をとった。
「ねえねえ、マスター。あれ、使ってみてよ。」
「あれ?…ああ、ダ〇ルか。いいね、確かめてみようか。」
次はスナイパーライフルの出番だ。
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