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30.歓迎の宴

 リリシアを新船員(クルー)に誘った。彼女の選択は、如何に。


 リリシアを誘った日の夕暮れ、夕食の準備に取り掛かろうとした時だった。

 「修一さん。この船でお世話になってもいいですか?」

 リリシアから了承の返事をもらった。


 「ああ、もちろん喜んで。よろしくね、リリシア。」

 「はい、よろしくお願いします。」

 そう言って二人は握手を交わす。


 握った小さな手は柔らかく、この世界に来てから初めての他者との触れ合いは、その温もりが懐かしかった。それは微かなものだったが、確かなる熱を感じ、修一は手をぎゅっと握りしめた。

 リリシアは一瞬驚いた表情を見せたが、その手を握り返し、修一を見上げて微笑んだ。柔和で慈愛に満ちたその笑顔は、修一の心底にストンと収まり、確かなる何かを刻み込んだのだった。


 *****


 新たな船員も加わったことだしその夜は宴をすることになった。とは言っても、修一の手が完治したわけではなく、手の込んだ料理を作れないので、【マーケット】にてお酒と出前ピザを注文し、ピザパーティーをすることにした。

 ついでにリリシア用のベッドや布団なども購入して設置しておく。部屋については、リリシアが固辞したため、オーナールームは今まで通り修一が使うことになった。


 「それでは乾杯!」

 「「乾杯(かんぱい)(です)!」」

 修一はビール、イヴとリリシアはサワーを、グラスに注いだ後、それぞれカチンと当てていく。


 「――ゴクゴクゴク……プハーッ。うまい!」

 「このサワー…でしたっけ?さっぱりとしていて美味しいです!」

 「おかわりもあるから遠慮せずに言ってね。他の種類もいっぱいあるし。」

 「じゃあ、私おかわり。それと、ピザ?それも頂戴。」

 「…はいはい。リリシアも食べな。」

 「はい!―――はむ…ぁっつぃ。でも美味しいですっ。」

 「本当…美味しいわ。お酒との相性もばっちりね。」


 修一もかぶりつく。うん、ピザうまい。

 あつあつとろとろのチーズがもちもちのピザ生地によく絡んで、その濃厚さとサラミの塩味が抜群の相性を醸し出している。野菜の食感もいいアクセントとなっており、少々焦げ付いた耳もその香ばしさとカリカリっとした食感が心地よく最後まで飽きることない美味しさを作り出している。そしてそこに、キンキンに冷えたビールを流し込む。く~~っ、最高です。


 三人でわいわいと騒ぎながらピザを食べ続けた。

 今日は、結局一種類のみで終わってしまったが、シーフードや照り焼き、辛味の強いものなど、色々な種類を試すのもいいかもしれない。


 少し経ち落ち着いたころ、修一はアイテムストレージから、琥珀色のビンを取り出す。

 「何それマスター、随分ときれいな色ね。」

 「ウイスキーっていうお酒だよ。産地は日本、種類はモルト、大麦を原料とする蒸留酒だね。酒精が強いし、香りも癖があるけど美味しいよ。」

 そう言いながら、少し大きめのグラスに氷をいっぱいにいれ、ウイスキーが1、水が2になるように注ぐ。炭酸水で割っても美味しいが、ウイスキーと炭酸の同時デビューは少しもったいないと思い水割りにした。


 「また癖のある飲み物ぉ~?」

 コーヒーの一件からか、イヴが難色を示す。

 「でもコーヒー、美味しかったですよ。お砂糖とミルクがあれば…。」

 リリシアがボリュームを絞りながら言う。後半部分もしっかりと聞こえているよ。


 「飲まないなら別にいいよ。もともと俺が飲みたくて作ったものだし。」

 そう言い、グラスを傾ける。

 スモーキーな香りと深い甘さが熟成された旨味を引き出し、喉を通った後に残るほろ苦さとカッと来るアルコールの余韻がたまらない。あ~美味しい…。


 (リリシアが残ってくれることになって本当に良かった。これで、新しい仲間が増えたし、図らずも金策も執れた。…これからは一層の責任を背負っていかなきゃな。)

 修一は、覚悟を改め、グラスを傾けるのだった。


 因みにその後、二人もウイスキーに挑戦したが、一口でダウンした。

ご閲読ありがとうございます。


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