26.優雅な朝
黒バンから出てきたのは、ヤの人ではなく、麗しきお嬢様でした。
因みにこの世界の名前は、『称号=名=氏=爵位=出身国』となっているそうだ(後ろ2つは貴族が爵位を誇示するときに使う)。
一度の覚醒を経て迎えた次の朝、目を覚ました修一が自室の扉を開けると、
「おはようございます、修一さん。もう立ち上がって大丈夫ですか?」
美女がソファに座っていた。
「おはよう。もう大丈夫。リリシアはよく眠れてる?」
「はい、とっても。いいソファですね。」
修一は、その人とあいさつを交わす。
どうやらこの3日間、彼女はロワーデッキの中央スペースにあるソファで寝ていたらしい。
彼女は上記のように言っているが、そんなことはないだろう。後で、来客用のベッドを購入しよう。いや、俺の寝具を買うべきか。
余っている部屋は、船後部の物置しかないため、小さなベッドしか置けない。客人をあの狭い部屋に押し込めておいて、自分一人で広い部屋を占領は出来ない。
ところで、リリシアと呼び捨てで呼んでいるのは、そうしてほしいと彼女から打診があったためだ。いきなり女性を呼び捨てできるほど、修一は軟派ではない。
「左手はいかがですか?」
「大分良くなってるよ。痛みももうほとんどない。」
「そうですか…本当に良かったです。」
この回復力は魔人族ならではだろうし、人間を卒業してよかった。
修一はほっと胸を撫でおろす彼女を見て笑みをこぼした。
「マスター、朝ごはんにしましょ。ここ3日何も食べてないからお腹がペコペコだわ。」
船内にイヴの声が響く。
君はもう少し心配してくれてもいいのに。
それに、
「お前、食事必要ないだろ…。」
「…ここのところ毎日食べていたから、習慣になっちゃって。」
イヴの言う通り、彼女は毎日3食デザート付きで食べていた。ダンジョンポイント節約のために、この世界の材料でも自炊を始めた修一だが、そのこともあって努力が報われているのかは疑問だ。まぁ、基本的に肉か魚を焼いて、スープと合わせる手抜きの男料理なのだが。
「…まぁいいや、朝食にしようか。」
これ以上言っても意味がないことを知っている修一は、朝食の準備に取り掛かることにした。
「お手伝いします!…何もできませんけど…。」
リリシアはそう言ってくれたが、どうも家事が苦手らしい。まぁ、これで家事も完璧だったら、すぐに求婚してしまいそうなのだが。
一応彼女の名誉のために捕捉をすると、彼女が家事が苦手な理由の一つは龍族であることが関係している。龍族は一般的に龍の姿でいることが常態のため、炊事洗濯などが不要らしい。この3日間ひいては家を出てからの2週間も、龍の姿となって魚などを捕食していたとのことだ。
一方でここに、龍族が人化の魔法を有している理由も帰結する。つまりは、料理をはじめ、家事をするためだということだ。
確かに龍の姿では細かい作業はできないため、料理はろくに作れないだろう。
閑話休題、修一は朝食の準備を進めるためギャレーに向かうのだった。
ご閲読ありがとうございます。
誤字・脱字および誤用等ございましたらご指摘ください。




