24.水龍の治療
グロリアス=グロストン号より5倍は大きい水龍にぶつかりました。
黒光りしたセダンと事故ったのと同義です。
「―――。」
修一は目の前の光景に言葉を失う。
相手の顔は見えないが、分析魔法で覗いてみたところ、
【名前】リヴィア=リリシア=ファルジール
【種族/クラス】龍族/ 水龍
【称号】神龍リヴィアタンの縁者
【レベル/総合ランク】26/SS
【体力】不明
【魔力】不明
【筋力】不明
【耐力】不明
【俊敏性】不明
【器用】不明
【運】不明
【魔法】不明
【スキル】不明
(俺死んだかも。ステータスが全然見えねぇ。)
鑑定魔法は、格上の相手に対する情報に制限がかかるらしい。つまりこの場合、修一と水龍のステータスに大きな開きがあるため、不明となっているようだった。
「ごめんなさい。全速力で船を走らせたら舵を失ってしまって…。申し訳ございませんでした。」
修一は、デッキに出て、素直に謝った。ぶつかった衝撃で船の推力はなくなっているため、最大船速にするまでに数分は要する。龍を相手にここから逃げるのは危険だと判断したのだった。言葉を解するのか分からないが、【スキル】言語理解頼みだ。
「…ぃいえ、大丈夫です。私こそ道をふさいでしまったみたいで、すみません…。」
(良かった、話しが通じるようだ。それにかなり穏やかな性格なようだ。龍のイメージは超攻撃的か超温和なイメージがあるが、後者で本当に良かった。)
「かなりの速度でぶつかりましたが、お怪我はありませんか?」
「私は大丈夫です。…ぅ。」
「どうしました?やはり、どこか痛めたのでは?」
「いえ、そうではないのです。ただ、この矢が抜けなくて…。」
そう言いながら、水龍が顔をこちらに向ける。
それは、凛々しくもありながらとても優しさのある美しい目をもった龍だった。
しかし、その首元には、バリスタのような大きな矢が痛々しく突き刺さっている。
「それは一体…?」
「…滅族の呪矢です。…刺さったものの魔力を吸い尽くし、周囲の者にも悪影響を及ぼす危険な矢です。」
「そんな凶悪なものが…。抜けないのですか?」
「はい、ここに呪詛が刻まれていて、そのせいで魔法が使えないのです。」
そう言いながら水龍は大矢の呪詛が見えるよう、修一に近づく。傷口から流れる血が、透明度の高いエメラルド色の美しい鱗を赤く染めていく。
それがとても口惜しく、
「それ、俺が抜きます。」
修一は思わず呟いた。そして、大矢に手を伸ばす。
「え?待ってくだs――。」
「っつ!?」
しかし、大矢に手を触れた刹那、激しい痛みを覚え、修一は思わず手をひいた。
「ダメです。この矢は、抜こうとしたものにも呪いがかかるのです。私のことはいいので早く手の治療を。」
「…いいえ、絶対に抜きます。」
こんなにも美しいものを平気で汚し、蹂躙するような矢に修一は、激しい憤りを感じた。
(こうなったらとことんやってやる。)
「私は大丈夫でs――。」
「いいからじっとして!?」
「は、はいっ。」
修一は、ズキズキと痛む左手を見やる。
(これは…やけどか?しかし、矢本体や手が燃えているわけではないし……熱か。だとすれば……。
…熱が高いというのは粒子の振動が激しいということだ。そしてこの矢は『対象の魔力を吸いつくす』という。つまり、吸い取った魔力を矢柄部分で激しく流動させて熱を発生させているのではないだろうか。周囲に及ぼすという悪影響は、吸い取った魔力を抽出し、高密度の魔力を放出しているのではないか。
呼吸に不可欠な酸素も検圧が高すぎると人間にとって有毒になるように、魔力も同様なことが言えるのではないだろうか。
…確証はないが、時間がないし、やるしかない。)
「それじゃ、行きます。」
「は、はい。」
修一は、矢に左手をかける。
ジュゥウウウ―――。
比喩ではなく文字通り、手が焼けていく。
「!?…あ、あの!?」
水龍が心配そうに修一を見る。
修一は、歯を食いしばって痛みに耐え、魔力操作を実行。大矢に溜まった魔力を抜き取っていく。抽出が進んだ密度高いの魔力を吸ったためか、激しい眩暈と頭痛に見舞われた。
遠のく意識の中、修一はイヴに声を掛ける。
「イヴ!俺の魔力を吸収してくれ。」
「――!わかったわ。」
自分の魔力が吸われ、ごりごりとすり減っていくのがわかる。すると次の瞬間には、激しい倦怠感に襲われた。
修一は、それらに堪え、右手でも矢を持つ。熱は下がり微かに熱を持つ程度になっていた。そのまま、右手に力をいれ、矢を抜いていく。
「痛むけど、耐えてくれ。」
「はい!――――!?!?!?!!」
水龍がのたうち回り、波がうねる。
そして揺れる船に耐えながら、闘うこと約20分、遂に矢を抜くことに成功した。矢から解放された水龍は魔法を使用したのだろう。見る見るうちに傷が回復していった。
その様子を見て気が緩んだ修一は気を失い、船から落ち、海に沈んだ。
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