23.衝突事故
イヴと語らうことができ、精神的に一歩踏みよることができた気がする。
嵐が過ぎ、先日までの時化が信じられないような良い天気となった。
エンクロージャーを取り払い、修一も久しぶりに甲板に出ている。
嵐のおかげ?でイヴと語らうこともできたし、時化も悪くはなかったが、やはり晴れると気持ちが良い。
「ここのところずっと停船していたし、天気も良くて波も穏やかだし、バーっと海を走りたいね。」
「いいわね。是非やりましょう。」
ということで、グロリアス=グロストン号で海を突っ走ることにした。
スロットルが上がるにつれ船速もあがる。
今、修一らは巡航速度の30ノットで走行していた。肌を撫でる風が気持ちよい。数字的には大したものではないが、船でこの速度は相当に早く感じる。
「ね、マスター。この船の最高速度を出してみたいわ。」
コアによる自動操縦で運転をしていたイヴが言い出す。
「んー、分かった。でも気を付けてね。」
確かにこれまで最高速度を出したことがなかったし、試運転として行うのはありだろう。
修一が承認すると、イヴが船速をぐんぐんと上げていった。
やがて最高速度の48ノットに到達した。もはや、ジェットコースターだ。甲板では立っているのもやっとであったため修一はキャビンに戻ったほどだ。
この速度になると、波を乗り間違えると舵を一気に失う。海に叩きつけられる衝撃もかなりのものになるため、集中しないといけない。
しかし――。
「あはははは!気持ちぃいい!」
イヴが壊れた。
逃走時のために、イヴにも最高速度での操船の練習をさせてみたところ、こうなった。この世界では出ない速度だからなのか、すごいはしゃぎようだ。
こんな姿は初めて見た。
(彼女が、速度狂だったとは予想外だった。)
「イヴ!気をつけろよ!?。操船ミスったら―――!?!?」
ドガガガーン!!!!
けたたましい音と共に、何かにぶつかったような物凄い衝撃が修一を襲った。
*****
「…いってぇ…。」
修一がうめき声をあげる。
フロントガラスに黒く大きな影が映るのを見て、ぶつかる寸前にソファにダイブしたのが功を奏したようで、怪我をせずに済んだようだった。いや、時速90kmでぶつかっておいて無事でいられるわけがないので、物理障壁の賜物だろう。
(いやぁ…こんなに早く障壁の恩恵にあずかれるとは思わなんだ。でも買っといてよかったなぁ。)
「ごめんなさい。楽しくてつい我を失ってしまったわ。」
イヴが謝罪する。なんとなく声に恥じらいが含まれており、先ほどのことは本人にとっても恥ずかしいらしい。触れるのは怖いのでスルーするのがベストだな。
「…ほどほどにしようね。それで、船の損傷状態は?」
「今後は気を付けるわ。船については多少へこんだみたいだけど、問題ないわ。少しダンジョンポイントがかかるけどすぐに治せるわ。」
「それは良かった。それじゃ修理を始めてくれ。」
「了解。終わったら知らせるわね。…それで、あれはどうするの?」
「あれ?」
「ぶつかった相手。」
イヴにそう言われ、ぶつかった相手を見る。
そこには、巨大な海蛇?が横たわっていた。
「…あれは何?」
「…水龍ね。逃げる?」
…はい?水…龍?
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