19.時化のブラックジャック
おふくろの味は世界共通。
修一は、釣りをして魚を料理した次の日から数日、だらっと過ごしている。
というのも、天候が悪く、海が時化っているためだ。
この世界に来てから船酔いをしたことがなかった修一だったが、時化り始めて2~3日は、激しい船酔いに悩まされた。最初は、苦しむ修一を見て楽し気に笑っていたイヴも、ぐったりとしていく修一を心配するほどだった。
現在は、【スキル】船舶知識と分析魔法によって、船酔いのメカニズムと対処法を調べたので、船酔いはなくなっている。
船酔いは、揺れによって三半規管が刺激され起こる、自律神経の失調状態である。要は、この自律神経の乱れを正すことが出来れば酔わずに済むのである。そこで、修一は分析魔法と魔力操作を用いて、体内魔力と対外魔力(魔素)をリンクさせることによって、体感的な揺れと実際の揺れの誤差をなくし自律の乱れを抑えることで酔いを防いぐことに成功したのである。
それでも、船は上下左右激しく揺られ、エンクロージャーを閉め個室化したキャビンにも波がバシャバシャと当たるため、波の頂上に乗らないようにしながら停船しているというわけである。
「暇だなぁ。」
クイーンサイズのベッドに横になりながら、修一はつぶやく。
「…そうね。」
「…トランプでもしよっか。」
「トランプ??」
ということで、【マーケット】でトランプを買った。
遊ぶゲームは、ブラックジャックだ。手札の合計が21を超えないようにカードを引き、21により近づけていくということだけなのでルールが簡単だし、二人でも遊べる。ただ、ディーラーは立てられないので、2人ともホールカード(カードを伏せて)でやって21に近い方が勝ちということにした。
*****
早速初期手札となる2枚のトランプを配り、カードを見る。
(ふむ…。19か…。)
「俺はスタンド――このままで行くけど、イヴはどうする?」
「どうしようかしら…。えっと絵札は全部10なのよね?」
「そう。Aは1か11ね。カードの見え方は大丈夫?」
「ええ、問題ないわ。それじゃ1枚頂戴。」
修一は、背中の向こうにカードを1枚表向きにして置く。
背中合わせにしてゲームをやっている感じがして違和感があるが、イヴとゲームをするには一番楽で確実な方法である。
「…はぅ。」
思わず出た、というような声が聞こえる。これは、バーストしたな。
「どうする?もう1枚いる?」
笑いを抑えて聞いてみる。
「…えっと、やめておくことにするわ。」
あははは、見繕ってらぁ(笑)。
「それじゃ、勝負。…って言っても、イヴはバーストしてるから俺の勝ちだね。」
「…え?えぇ??」
今日も可愛い反応いただきました。
その後も、ブラックジャックを繰り返すこと数時間。
勝率は、修一の圧勝だった。ブラックジャックは運によるところが強いので、4戦中1戦は負けてはいたのだが、イヴはチャレンジ精神が豊富なのか、果敢に挑戦して散っていく。それに勝ちを確信すると、態度に出るのである。
前にも述べたが、イヴは、普段は達観的なくせに意外とチョロい。そして、そのことをからかった結果――。
イヴが拗ねた。
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