10.太刀『舞鶴』
ボス戦。
残りの体力を振り絞って修一は駆けた。
間合いに入ったため、カーズアーマーが大剣を振り下ろす。
――刹那、修一の目にあるものが留まる。
さきほど防御で剣を合わせたためにできたのであろう、大剣の綻びだ。
修一はニヤリと不敵に笑い、剣先を下げ下段の構えを取った。
みるみると修一の頭に近づく振り下ろされた大剣。
急速に振り下ろされるそれが修一の頭を叩き割る――と思われたその瞬間、修一は大剣に沿わせるように剣をあげ、手首を左にくっと回転させて、大剣の軌道を逸らした。
そして先ほど目に留まった綻びに、自らの剣先をひっかけるとグイッと身をひねって大剣を引き寄せた。
当初の軌道を大きく反れ、引き寄せられた大剣は、敵の体とともに引き込まれる。
そして即座に修一は剣の柄頭で掌底を敵の胴に打ち込んだ。
自身の体の捻りと、引き込んだことで重心を傾けた相手の勢いを利用して、放たれた振動波は、鎧を貫通し、カーズアーマー本体にダメージを与え、遂に跪く。
そして――。
「終わりっだぁあああ!」
敵の下がった頭部甲冑の隙間――首元に修一は剣を突き入れた。
『グオォオオァァァアアアアア!!』
カーズアーマーは断末魔と共に倒れ込み、再び動くことはなかった。
*****
カーズアーマーがダンジョンに吸収され光に還ったあと、そこにはトレジャーボックスが出現していた。
「これは、討伐報酬か?」
イヴは遠くにいるため確認はできないが、間違いはないだろう。そう判断を下し修一はその箱を開ける。
まばゆい光が漏れ、辺りが暗いのも助長し修一は思わず目を細める。
光が収まり、目を開けると、そこには一振りの刀があった。
「これは…刀?」
手に取り、鞘から抜いて確認する。それは紛れもなく日本刀――反りがあり片刃の剣。刀身は、70cm程度だろうか、直刃の刃文が美しく、華美ではないが洗練された美しさを湛えていた。
それには不思議なことに銘はなく、号のみが切られていた――太刀『舞鶴』。
「”舞う鶴”か…うん、良い名だ。よろしくな、舞鶴。」
応えるように刀身がキラリと反射した。
「はぁ、終わったぁ…。」
刀を納め、イヴの元へ戻って息を吐く。
「ふふふ、おめでとう。無駄口をたたく余裕もあったみたいだし、楽勝だったわね。」
イヴのいう無駄口はおそらく『船に穴』云々のことだろうが…。
「あれは虚勢!冗談のひとつやふたつ言わないとやっていられないくらい切羽詰まってたんだよ。全く余裕はなかったわ!一歩間違えれば即お陀仏だったんだぞ。」
「それは絶対ないわよ。致死のダメージは弾かれる仕様になってるわ。」
「いや、殴られて死にかけたけど…。」
「死んでないじゃない。」
「…いや、それは違うじゃん。あれを受けて生きてられたのは奇跡じゃん。普通、人間はああいうのに耐えることは出来ません。確実に死にます。」
「え、なら尚更問題はなかったわね。」
「え?」
「だってマスター、人間じゃないもの。」
…は?
人間じゃない?
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