0.プロローグ
はじめての執筆です。
よろしくお願いいたします。
息をする度、咽ぶような熱風がのどに張り付く。
呼吸さえままならなくなってから、どれほど経っただろうか。
朽木修一は、傍らの長椅子に身を預ける。
後方で、炎が弾けた音がした。
*****
今日はめでたい日となるはずだった。
何せ、修一が高校生の時に両親が亡くなってから、一人で面倒を見て来た妹の結婚式だ。
嬉しかった。最初は妹からの感謝のスピーチで胸が熱くなっており、式場まで燃え広がった火の熱さにも気が付かなかったほどに。
だからこそ、式場が火事だと気づいたとき、何よりも妹と新郎を優先した。
主催者としては失格だが、逃げ遅れた者がほぼいなかったのは、招待した人もほんの少しの小さな式だったのが功を奏したのだろうか。
(…とりあえず、死人は出ないはず。自分以外には…。)
火事において、現場に戻ってはいけないというのは真実だったようだ。修一はあっという間に火に囲まれてしまった。
(まあ、後悔はしていない。小さな女の子が泣いていたんだ。無視して逃げられるわけがない。)
妹夫婦と関係者を外に逃がした後、ふと修一の耳に子供の泣き声が届いたのだ。火が爆ぜる中、途切れ途切れに聞こえるその声を辿ると、会場の柱の陰に隠れるように小さな女の子が膝を抱えて座っていた。
しかし、不思議なことに泣き声を辿ってきたつもりだったが、当の本人は気絶しており意識がなかった。
(確かに泣き声を聞いた気がしたんだけどな…?ん?でもあの声は―――妹に似て――。)
ガシャァァァァアアン!!!
すぐそばで建物が崩れた。
「今はそんなこと考えてる場合じゃない。とにかくこの子を助けなきゃ。」
修一は少女を抱えて非常口に向かった。
*****
――ゴホッ…ゴフッゴホゴホッ。
遂に咳が止まらなくなり、修一は悪寒を覚えた。
「最後の最後でツイてないな、俺は。」
思わず苦笑する。
命をかけた甲斐あって件の子は救えたが、不幸なことに修一は逃げられなかった。
避難用滑り台のそばまでは来れたものの、建物が崩れ燃え上がっていたためにその子を押し込めるように滑らした後は修一に使いようはなかったのだ。
(挙式日が兄の命日だなんて、妹には申し訳ないが、誕生日が両親の命日の俺よりはマシだろう。
それに、妹は逞しく育ってくれた。多少は、感傷に浸るだろうが、立ち直る強さを持っている自慢の妹だ。新郎の浩司君、妹をよろしく頼むな。)
修一の意識は、そこで途切れた。
ご閲読ありがとうございます。
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また元々自分用に書いていた小説のため、意図せず脳内補完に依存している場合があるかもしれませんが、ご容赦ください(ご指摘いただければ尽力します)。
よろしくお願いします。




