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作者: ゆきうさぎ

777文字は思ったより短い。

どこかの家の玄関。身なりを整えた男が大きなカバンを持って家を出ようとしていた。

見送りだろうか家族らしき者がみな悲しそうな表情で男を見ていた。

 そのうち、二人の子供が男の足に抱き着いた。それぞれ片足ずつにしがみつき、行ってほしくない、自分たちと一緒にいて、と懇願する。まだ幼いながらも男が遠くに行ってしまい、帰ってくることが難しいということを十分に理解していたのだった。

 男はすっかり困り果ててしまい、苦笑いを浮かべた。それから荷物を置いて座りこんだ。そうして男は自分にしがみつく子供たちを抱きかかえ、子供たちに優しい声で何かを言う。子供たちはあんなにもまじめで厳しかった男の初めて聞く愛情に満ちた言葉に静かに耳を傾けた。話し終えた後も男は子供たちを抱きとめる。最後にもう一度力強く抱きしめ、ようやく男は手を離し、立ち上がった。子供たちもまだ未練が残っていたようだが、それでもゆっくりと男から離れた。

 そんな二人を優しく見守る女。そんな彼女を見て、男は彼女を抱きしめた。最初は驚く女であったが、徐々にその瞳からは涙がこぼれだす。男はただ一言女に何かを告げると、彼女の頬にキスをし、離れた。女は涙交じりの笑顔を浮かべた。

 男はカバンを持ち、とうとう家族に背を向ける。これ以上はただただ別れがつらくなるだけだ。男自身もそう覚悟を決め、それ以上振り返ることはしなかった。ゆっくり、ゆっくりと進んでいく。

 外は晴れ渡っていた。まるで男の旅立ちを祝福するかのような青空は、しかし今は男にとって別れの悲しさを助長させるものだと疎ましく思えた。

 しかし、どれだけ別れが辛くとも、男は行かねばならなかった。それしか男にはできなかった。自分よりも大切な愛おしい存在を守るために男は自らの命を賭してでも戦わなければならないのだ。

 

 子供の成長を見守れぬのであれば、せめて子供の未来は守らねば。

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