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神愛転生  作者: クレーン
第三章
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088話:心の赴くがままに

 フォーランドの偶像神の登場というサプライズもあって、ソルムもようやくオレの話を信じてくれたようだ。

 その後も色々と話をして、オレの眷属になってくれることも了承してくれた。

 少しおっかなびっくり気味だったけど無事に眷属登録も終わり、これで晴れてソルムはオレの大切な仲間になったというわけだ。




「う~ん……」


 ソルムがキョロキョロしながら、自分の体をあちこち見渡している。


「どうしたの?」

「いえ……旦那様の眷属になっても、特に体に変化は感じないな~と思いまして」


 まぁ外見的には特に変化は無いし、ステータスが急激に上昇するワケでもない。

 だけど色々と特典は付くので、その辺りを実感させてあげよう。

 ということで眷属通信オン。


『ソルム、聞こえるかい?』

『うわわ! 頭の中に旦那様の声が⁈』


 アハハハハ♪ 突然の念話にビックリの御様子だ。


『どうやら聞こえたみたいだね。これが眷属通信、念話だよ。どんなに離れていても頭の中でオレと会話ができる機能だ』

『ということは、王都にいる姫様ともお話が?』

『ああ、じゃあみんなと話をしてみようか。ライラ、シルフィー、今いいかい?』

『おお、ソーマ殿かや。さっきの話じゃが――』

『え? なんです姫様? なんのお話で――』

『はわわわ⁈ ほ、本当に姫様とシルフィリア様のお声が⁈』

『うわっと⁈ なんでソルムの声が聞こえるんじゃ⁈』

『ソ、ソーマ殿……まさかソルムを……』

『うん、眷属にしちゃった☆』

『『はいぃいいい~~~⁈』』




 それからライラとシルフィーの二人に今までの経緯を話した。


『つ……つまり要約すると、ソーマ殿がクレイトに宣戦布告返しをし、且つ、ソルムの身柄を守る為に眷属にしたということじゃな……』

『まぁそういうことになる』

『姫様……本当に申し訳ございません。私が出過ぎた真似をしてしまったばかりに…………』

『なに、それは気に病むでない。わらわがその場にいたら、お主より先にわらわがそのペルマンとかいう狼藉者に蹴りの一発でも見舞っておったわ』

『うん。姫様なら確実にやってたから気にしなくていいよ。ソルム』

『むしろ、ようやったと褒めてつかわすのじゃ! な~はっはっはっ!』

『は……はぁ…………』


 ソルムを咎めるどころか、逆に褒めてるライラが実に男前だ。


『でじゃ。ソーマ殿、本気でクレイトに攻め込むつもりなのかの?』

『ああ、オレやみんなを馬鹿にしたどころか、ソルムを傷つけた上にアルグランスへ戦争仕掛けるとまで言いやがった奴らを放ってはおけないからな』

『……あい了解したのじゃ。ソーマ殿、お主の好きにせい』

『私からもお願いします。父上を愚弄するどころか、我がデオンフォードの都市に住む民たちを脅かす輩を許してはおけません!』

『してソーマ殿よ。此度の戦の落としどころは考えておるのだろうな?』


 やはりそこは聞いてくるよな。

 まぁオレが個人的に仕掛ける戦争だ。

 どこまでやってケリをつけて終わりとするか?

 やはり一国の王女ともなれば、その辺りは気になるところだろう。


 しかしそれについては既に決めてある。

 帝国の中枢まで乗り込み、皇帝とやらに一発見舞って完全に降伏させるのと、今後二度とアルグランスに攻め込まないようにさせるこの二点だ。

 そしてそこまでに至るまでに無用な殺生はしないことも盛り込んでいる。

 全滅させるのは簡単だが、それではただの殺戮だ。

 流石にオレも、そんなことまでは望んじゃいない。

 恐らくだがオレの考え通りに事を進めれば、この辺りの項目は容易くクリアできると思う。


 オレは目的達成までのプランをライラに説明する。


『な……なるほど……。斯様な策で突き進むのか……』

『ソーマ殿なら容易くできてしまいそうなところが逆に怖いですね……』

『私……旦那様の敵じゃなくて本当に良かったと思います……』


 オレの作戦内容を聞いて眷属三人娘が少し引き気味だ。

 解せぬ……。


 おっとそうだ! あと一つだけ最終確認をしておこう。

 すまないがこの話は皆に聞かれたくないので、適当に理由を述べて全員の通信を一時遮断する。


『舞踏神様、聞こえてますか?』

『ああ、話は最初から全部聞かせてもらっていたのだよ。なかなか面白いことになっているみたいだねぇ?』

『その面白いって感覚は少し理解に苦しみますが……』

『まぁそれはさて置き、どうしたのだよ?』

『フラメン姉さんとしてではなく、天上界の上神、舞踏神様として一つ確認させて下さい。本当にこの世界をオレの好きにしてもいいんですね?』


 そうだ……この問いの答えを、どうしても上神様の口から直接確認したかった。

 確かに五大神様たちから『好き生きろ』とは言われたが、今回の一件は間違いなくこのフォーランドに大きな影響を与える行為だ。

 そんなことを本当にいち人間であるオレなんかが行ってもよいのか?


 つまるところ、ここにきてオレは少し怖くなったのだ。


 だから後押しが欲しかった。

 その後押しを神様にお願いするなんて卑怯もいいところだけど、普通に地球で平和に暮らしていたオレにとっちゃ、今回の一件を実行に移すのは相当にハードルが高い。

 だからこその確認だ。




『……ああ、キミの思うがままにすれば良いのだよ。この世界に存在する限り、キミの行動は全てが自由なのだよ。戦いたければ戦えばいい。恋をしたければ恋愛してもいい。静かに暮らしたければ人里を離れてもいいし、派手な生き方をしたければ突き進んでもいい。ソーマ、全てはキミの心の赴くがままに……なのだよ』


 心の赴くがままに……か……。

 その言葉を聞いて、ようやく「好きに生きる」という言葉の意味が少し理解できた気がするな……。


 そりゃそうさ…… 喧噪に包まれた地球、しかも日本だよ?

 そんな生き方なんてそうそうにできるものじゃない。

 四〇年の人生で好き勝手に生きれたことなんて、恐らく一度も無い。

 常になにかの(しがらみ)が付きまとい、本能を理性で押し殺すような人生を送ってきたんだ……。

 心の赴くままの生き方なんて、言ってみれば未体験だし、それを行使する力もなかった。


 でも今はそれができる力を与えられた。

 だからこそ、大事なのが心だ。

 本当に好きに生きるには、今まで以上に強い心を持たなくちゃいけない……。

 だけど今のオレは、まだそこまで強くはなりきれてない……。

 だから確認がしたかったのだ。


 独りよがりなことをしているのは十分に承知している。

 でもこのことを、今直接上神様から確認しておかないと、いつかどこかで立ち止まってしまいそうな気がするのだ……。




『ソーマ。キミの前世のことは主神様たちから伺っているのだよ。不安なのだろう? このまま考えもなくこの世界で先に進むのが?』

『お恥ずかしながら……』


 そうさ……前世でも後先考えずに家を飛び出して、気が付けば底辺生活の真っ只中にいた……。

 そして今も、力を与えられても結局のところ、やっていることの本質はなにも変わっちゃいない……。

 いくら新しい体や新しい世界を得ても、心が変わらないと同じことの繰り返しだ。

 だからこそ、今は考えたいんだ……。

 この気持ちを正直に舞踏神様に告げる。


『うん、今はそれでいいのだよ。大いに悩み苦悩するのは生の短い人間の特権だ。だけどこれだけは忘れないでおくれ。今のキミにはこうやって相談できる仲間が沢山いることをね』

『仲間……』

『そうなのだよ。少なくとも今のキミには心から信頼できる仲間がいる。先ずはそのことを念頭に置きながらでいいのだよ』


 今オレの前にはマークたちやソルムがいる。

 王都に帰ればライラやシルフィー、アリオス爺やサタ、そして屋敷のみんながいる……。


 仲間のことを念頭に置きながら…………うん! なんとなくだけど解った気がする! 今はそれだけで十分だ!


『ありがとう! フラメン姉さん!』

『うん、やはりその呼び方の方が私は嬉しいのだよ♪ さあソーマ! 心の赴くがままに!』

『ハイ!』


 オレの迷いは晴れた! これで前に進めそうだ!




「待たせたね、マーク、キャスト、ガドラ」

「…………主様……男の顔になられてますな……」

「そうかい?」

「はい。今の主様はさっきより凄く凛々しいですよ」

「ボクもそう思う!」


 ハハハ……野性の勘は鋭いね。


「ソルムも待たせたね」

「はい旦那様。なんなりとお申し付けを♪」


 うん、ソルムもいい笑顔だ。


 じゃあ出撃準備を始めようか!

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