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神愛転生  作者: クレーン
第三章
88/210

082話:クレイト帝国の使者

 雷の月の一〇日。

 オレは柔らかい感触と共に目が覚めた……。

 ……うん……案の定、オレはソルムの抱き枕状態であった。


 客室には大きめのベッドが一つだけだったので、それにはソルムを寝かせ、オレは手持ちの布団でも敷いて寝ようと思ったのだが、またもやソルムに泣きそうな顔をされたので、しぶしぶ一緒に寝た次第だ。

 無論、手は一切出していない。

 にしても、相変わらず寝相の悪い娘だ。


「こらぁ~~……私のプリンを食べちゃだめだよアニル~~」


 そんな寝言を言いながら後ろからオレを抱きしめるソルムの手を解いて体を起こすと、ベッドの傍らで既に起きていたマークたちに挨拶をする。


「おはよう、みんな。ちゃんと寝れたかい?」

「おはようございます、主様」

「お気遣いに心よりの感謝を」

「順番にグッスリ寝たから大丈夫で~す♪」


 うん、みんな元気そうだな。

 そんな感じでマークたちと今後の予定などについてそのまま少し話をしていたら、ソルムも眠気眼で目を覚ましたようだ。


「おはようございます旦那様ぁ~~ふわぁ~~」

「おはようソルム。プリンは食べれたかい?」

「ハイ……旦那様が新しく作ってくれました…………アレ?」


 うん、頭が覚めるのはもうちょっとだけ時間かかりそうだね。







 シャルク侯爵たちとの朝食を終えると、昨日侯爵と大立ち回りをした謁見部屋に場所を移し、最近のクレイトとの小競り合いなどの話題も含めてアルグランス全体の近況などについて色々と話をしていた。

 情報収集は大事だからね。


 一番注意すべきは、やはりクレイト帝国の動きだそうだ。

 特にここデオンフォード侯爵領に国境を隔てて位置しているペルマン伯爵の軍、約五〇〇〇が先日国境ギリギリまで接近していたらしい。

 無論国境を越えてはいないので、単なる挑発か嫌がらせとシャルク侯爵は言っているが……。


「どうにもうっとおしい連中であるわ……」

「しかし閣下、先日の大軍での進行は見過ごせません。近々戦を仕掛けてくる可能性は十分に考えられます」

「クレイトと戦争っスか……」


 シャルク侯爵、グラス氏、ダイルの三人が実に渋い表情をしながらそんな話をしている。


 シャルク侯爵の話では、クレイトは一〇〇〇年前の戦争での大敗以降、五〇年ほど前の先々代の皇帝の代までは比較的大人しくしていたらしいが、先代の皇帝がかなりの人間至上主義だったらしく、東大陸制覇を掲げて軍備を急激に増強しはじめたそうだ。

 そして一〇年前にその先代皇帝が死去すると、当時若干一〇歳だった現皇帝が亡き父の意思を継ぐと言わんばかりに、たびたびこうした小競り合いが頻発するようになったらしい。


「まったく……親が親なら子も子というわけか……。これだから生の短い人間というものは…………おっと!これは失言。ソーマ殿よ、どうか許されよ」


 この場にいる唯一の人間であるオレを気遣って、シャルク侯爵が謝罪する。


「気にしなくていいよ。オレも話を聞いている限りでも、クレイトの連中は好きになれそうにないしさ……」

「すまぬ…… 最近のクレイトとの小競り合いで、ワシも人間そのものに対して先入観による敵対意識が芽生えておったのかも知れぬな……。これでは奴らと同じではないか。戒めねばならん……」

「そう考えれる余裕があれば大丈夫だよ。シャルクさん」


 そう、直ぐに自分の過ちを認めれる考えがあれば大丈夫だ。

 少なくともオレはそう思っている。


 と、そんなことを思っていたら、急にドワーフの衛兵が部屋に飛び込んできた。


「侯爵閣下! 申し上げます! 只今クレイト帝国から使者を名乗る一団がこの都市にやって来ております! 如何なさいましょうか?」

「使者であると?」

「その使者とは何者だ?」


 訝し気な表情のシャルク侯爵と、険しい表情のグラス氏が使者の名を確認する。


「ハッ! クレイト帝国ペルマン伯爵領領主! ハルゲン・ペルマン伯爵以下、護衛四名であります!」

「フンっ! 例のペルマン自らのお越しということか!」

「閣下、如何なさいますか?」

「無論会う! 文句の一言でも言ってやらねばワシの気も治まらんでの!」

「かしこまりました……。おい! 使者団を通せ!」

「ハハッ! 直ちに!」


 グラス氏の指示のもと、衛兵はすぐさま部屋を出る。


「マクモーガン卿にソーマ殿と神獣様方、それにソルムとやらも立ち会うが良かろう。今の腐ったクレイトをこの目で見て損はないと思うでな」


 一応シャルク侯爵とペルマン伯爵の交渉には口を挟まないことを条件に、オレたちはその使者団たちとの交渉の場に立ち会うことにした。


 それから数分が経つと、その使者団一行がズカズカと足音を立てながら謁見室にやってきた。


 両端がカールのかかった口髭を蓄え、髪型は金髪のオールバック。

 その表情はニヤニヤと薄ら笑いを含め、見るからに嫌らしそうで感じの悪い中年の男を筆頭に、白銀の甲冑に身を纏う騎士四名が後方に控える。

 無論、シャルク侯爵に対して頭を下げる素振りの一つも見せようとはしない。

 かなり感じの悪いオッサンだ…… どれ、少しステータスを覗いてやろう。


>名前 :ハルゲン・ペルマン

>レベル:34

>種族 :人族

>年齢 :42歳

>職業 :クレイト帝国貴族・「神人の光」幹部

>称号 :クレイト帝国伯爵

>スキル:剣術・火魔法・光魔法・指揮・鑑定(人物・中級)


 ふむ……全体的な能力自体は脅威ではないけど、鑑定スキルを持っているのか……。

 人物と中級ってのはどういうことだ?


>鑑定スキルは多種多様なジャンルで分かれています

>「人物」はその名の通り、人族や亜人種・獣人・魔族などにしか適用されません

>各鑑定スキルは初級・中級・上級にランク分けされており、「人物」の「初級」は名前・レベル・種族まで

>「中級」はそれらに加えて年齢・職業・称号まで

>「上級」は更にそこからスキルまで閲覧が可能


 なるほどね……理解した。

 オレの鑑定能力はそこから更にパラメーターまで見れるから、やはり凄い能力なんだな。


>えっへん


 …………AR表示さんも誇らしげだ。




「貴様がペルマン伯爵とやらか? して、なに用でここへ参った?」

「これはお初にお目にかかりますな、デオンフォード侯爵殿。その勇猛な武勇伝の数々、お噂はかねがね――」

「フン! 心にもないことを! さっさと要件を言え! それとここ数日の国境付近での挑発まがいの軍の動き、東大陸協定の観点から見ても到底見過ごすことはできぬぞ!」

「やれやれ……これだから喧嘩早いドワーフ族は好きになれませんな……」


 ペルマン伯爵はシャルク侯爵の言葉に聞く耳を持たぬといった感じで、この部屋にいる人物たちを舐めまわすような視線で見渡す。

 多分鑑定スキルでオレらのステータスを覗き見してるな……。

 そういや今のオレってフォーランドに来た時からステータス変えてなかったな……一応確認。


>名前 :瀧蒼馬 (ソーマ)

>レベル:763(3)

>種族 :地球の人間(人族)

>年齢 :40歳没(15歳)

>職業 :フリーター(無職)

>称号 :特異点(――)


 うん、ペルマン伯爵の表情からして、ちゃんとカッコ内の偽情報しか見られていないみたいだな。よしよし。

 とりあえず今は静観に徹しておこう。


 でも流石に無職は我ながら問題だな~。

 今度ちゃんとした仕事探そう……。




「ふむ…………やはりあの話はデマであったか……安心したわ」

「ナンの話だ?」


 何かを確認したかと思うと、更にニヤついた表情となるペルマン伯爵にグラス氏が問いただす。


「最近貴国から流れてきた「神獣を従えた少年」の噂話のことですよ。まさかそれがそこにいる何処の馬の骨とも判らぬ小童と獣臭い犬とは仰いますまいな?」


 ペルマン伯爵がそう言うと、伯爵の後ろに控える護衛騎士からも嘲笑うような笑い声があがった。

 そしてこの侮辱とも取れる伯爵の発言に対し、この部屋にいるアルグランス側の人たちは凄まじい殺気を放つ。

 グラス氏やマークたちは今にも襲いかかりそうな雰囲気だ。

 手を出さないよう、皆に黙ったままで視線を送ってなんとか諌め、マークたちにも念話で指示を出す。


『マーク、キャスト、ガドラ。オレが良いというまで絶対に手出しするなよ? 形態も今の犬の状態を保て。許可を出すまで神獣の姿に戻ることも、言葉を発することも許さないからな!』

『『『ぎょ、御意……』』』


 さて……どう出る? ニヤけ面のペルマン伯爵さん?

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