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神愛転生  作者: クレーン
第三章
82/210

076話:神気

 雷の月の七日。

 オレたちがアルグランス一周の旅を始めて、二日目の朝がきた。

 今はまだ午前五時で、起きるにはまだ早い。

 しかしオレは、今日から早朝に少しやらないといけないことがあるので起床した次第だ。

 そう思って体を起こそうとするのだが…………。


「うふふふ~ もう食べれないですよ旦那様ぁ~♪」


 隣の布団で寝ているはずのソルムがオレの布団にまで侵入し、オレを抱き枕のように抱き締めながら、そんなベタな寝言を言っていた……。

 案外寝相は悪い子なのね……。


 オレはゆっくりとソルムの手をほどき、掛け布団を被せてやってからテントを出る。


「みんなおはよう」

「「「おはようございます、主様」」」


 見張り役をしてくれていたマークたちに挨拶をした。

 マークたち神獣は普通の生き物と違い、一日一時間ほどの睡眠で十分な体質らしい。

 全員ローテーションでキチンと寝た事を確認したので、マークだけを連れ、野営地から少し離れた場所へ移動する。

 今から行う修行をダイルやソルムに見られると厄介だからね。

 マークがいるから大丈夫だろうが、一応地図レーダーで警戒網も張っておく。




 無限収納から取り出した丸太椅子の上に小石を置くと、それに手をかざして力の意識を集中させる。


 魔力でもなく、理力でもない。

 この世界の理には存在せず、オレやフラメン姉さんにしかない力。

 その力の名は「神力」。


 神力とは神が持つ力……と言えばそのまんまだが、その力は地球やフォーランドのような普通の地上世界、所謂「下界」で行使するには些か危険な力でもある。

 どれほどの力かというと、偶像神レベルの神力で天変地異を起こせる程度。

 上神ともなれば、数刻の時間さえも止めてしまうほどの力だ。


 例のお披露目パーティーの時、フラメン姉さんがオレを発見した嬉しさのあまり、ついうっかり神力を漏らしてしまった程度でも時間の流れが一瞬止まってしまったくらいだ。


 それゆえに五大神様たちは、上神が下界で神力を行使するのを認めていない。

 上神による下界での神力の行使は、因果律を大きく歪める危険性もあるからだ。


 上神たちは如何にして下界で力や術を行使するのか?

 それはやはり、神は神らしく神力を使うのだ。

 だが神力を直接放出しての使用は下界では許されない。

 では如何にして力や術を行使するのか?


 そこで出てくるのが神力を下界用に変換した力「神気」だ。


 解り易く例を挙げるならば錬金術だ。

 錬金術は精神力から理力という力に変換して行使する術。

 それと同じように、神気は神力を原料に、精神力、魔力、理力すべてを駆使し、下界で行使しても因果律に影響の出ない洗練した力へと変換した力なのだ。


 そしてその効果は多種多様。

 練り上げた神気を対象の精神に干渉させれば、フラメン姉さんが使った催眠術のような使い方もできるし、念動力のような、手も触れずに物を動かすことなんかもできる。

 更には火魔法のように、体の一部を硬質化させたり、筋力を強化させたりなんかも可能らしい。

 しかも魔法と違って詠唱を必要とせず、明確なイメージさえあれば大抵のことはできてしまうという、正に神業とも言えるチート能力だ。


 だけどこの神気を練り上げるのがなかなかに難しい。

 魔法は系列の適正があって、その魔法の言語文字を理解して詠唱さえできれば、あとは魔力の続く限りいくらでも行使することが可能だ。

 他にも色々あるのだが、今ここでは割愛しよう。


 だが、神気はさっきも言った通り、神力を精神力、魔力、理力の三つの力のフィルターを通して練成するので、その制御が今のオレでは凄く難しいのだ。


 フラメン姉さん曰く「神力を心臓から頭の中で回し、それを手足などから放出する感じ」らしいが、抽象的過ぎていまいち理解できない。

 しかも神力そのものがどんな力なのかもイメージできてないので、練成以前の問題だ。


 一応オレの体の半分は人間で、もう半分は神様と同じ聖神体というものらしいので神力そのものは備わっているらしいが、どうにもこうにも解らん。

 さっきから小石を動かそうと集中はしてるんだけど、ピクリとも動かない。




 少し整理しよう。

 まず魔法。


「▲▲……(ファイヤー)


 指先から赤い炎が上がる。

 魔法は魔力を媒体として行使する技術。

 この魔力はどこから沸いている?

 目を閉じ、全身隅々まで意識を集中させる…………心臓だ!




 次に錬金術。


「@@……変形(ディフォメーション)


 取り出した鉄塊を様々な形に変形させる。

 この力の源、精神力と理力はどこからきてる?

 ………………精神力は頭で、理力は四肢……厳密には上腕と太腿辺りか?

 脳裏から沸いた力が四肢をかけ抜けてから手先などから放出し、手に持った鉄塊を変形させている力の流れのイメージが明確に解る。


 やはりそれぞれの力には、明確に発生する場所が決まっている。

 じゃあ神力の発生する場所さえ判れば……。


 オレはまた目を閉じて全身に意識を集中させる。

 どこだ? どこに神力は存在する?

 ん? なんだ? この少し温かみと安らぎを感じる力は?

 どこだ? どこにある?


 …………………………あった! 腹だ!

 これが神力か………… 今までの力とは全く違う異質の力を感じる……。


 できるか?


 オレは腹と腰に少し力を入れ、お腹に感じる力を心臓、頭、四肢の順に巡らせるイメージを持ちながら、もう一度小石に意識を集中する。


 焦らず、少しづつ腹の力を取り出しながら心臓を通過させるように……胸が熱い……。

 その熱さを頭に向けると、次は温かくも、心を落ち着かせるような優しい力に変化する。

 そしてその力を手足に巡らせ、その先から放出するように……。


「おお! 小石が浮かび上がりましたぞ!」


 マークの声と同時にハッと目を開くと、小石は見事に一〇センチほどの高さを浮いていた。

 やった! 成功だ!


 小石を向けている右手を上下させれば小石も上下に、左右に振れば同じように動く。

 そしてもう少し腹に力を込めて、神気を左手にも巡らせる。

 よし! イメージ通り、丸太椅子を手元まで引き寄せることができた!

 なるほど……見えない手を伸ばしたり縮めたりするイメージだな……。

 よぉ~しよし…… 大体解ってきたぞ……。


 オレはまた更に腹筋を締めるように神力を汲み出し、心臓、頭、手足にその膨大な力を循環させる。


 左手には丸太椅子を。

 右手には足元にある小石複数に向けて、それらを全て宙に浮かせると、まず丸太椅子を前方斜め上に弾きだすように射出する!

 大砲の弾のように飛ばされた丸太椅子を追うように、浮かべた小石すべてを、更に早いスピードで全て射出!

 放物線を描く丸太椅子に対し、一直線に迫る小石が全弾命中し、それを木っ端微塵に吹き飛ばした。


「お見事です! 主様!」

「ぃよしっ!!」


 マークの賛辞の言葉と同時に、大きくガッツポーズをとる。

 子供の頃から憧れだった念動力を使えて少しテンション上がるね。

 しかしこれはかなり制御が難しいし、今までの神気の扱いで少し疲労も感じる。

 この体で疲労を感じるなんて、相当なエネルギーじゃないかな?


 だけど神気の威力ってのは、当然こんなものじゃない。

 フラメン姉さん曰く、今のオレなら巨大な岩を自在に操る程度は造作もないとか言ってたけど……ほんとかな?。

 まぁその辺りは追々追及していくとしよう。

 フラメン姉さんからは、今回の旅の間に神気の制御ができるようにとの課題を課せられていたりもするので、当面の間は今回の念動力を主軸とし、徐々に重い物を動かせるようにやってみよう。


 小石数個と切り株程度をやっとの思いで動かせた身からすれば、本当にそんなことができるのかと半信半疑だが、怠けて怒られるのも嫌なので、出来る限りは頑張っていこうと思う。

 まぁ今回は、修行初日という点では十分満足できる内容だろう。


 そんなことを思っていたら、いつの間にか時間も七時を回って二人が起き出す頃合いだ。

 さっさとテントに戻って朝食にしよう。

 なんか凄くお腹が空いたよ。


 ………………まさか神力を使うとお腹が減るなんてことは……ないよね?

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